123 ゲルト村防衛戦 14
俺は精神を集中させて魔力を練り上げていく。
「炎よ、力よ。我が前に顕現せよ……」
俺は
正直数回しか使ったことがない魔法だし、フルパワーで放ったことはないため、最小の魔力集中で放つことにする……恨まれたくないからな……。
「爆炎を我が前に、我が前に破壊を……魔の力で全てを破壊せよ」
俺が詠唱を終えると、手にひらに凄まじい量の魔力が集中していく……。その様子を見て仲間が息を呑んでいるのがわかる。そりゃそうだ、明らかにやばいものをぶっ放そうというのだから。
「アドリア、全面の
俺の言葉にアドリアが頷いて
「いくぞ!
集中した魔力の球体がふわりと俺の手から飛び立つ……ゆっくりと漂うようにその球体が
「な、なんですかこれは!」
アドリアが悲鳴をあげる。そう、
俺だけは違う。俺は今までこの魔法をきちんと使いこなせていなかった。しかしこの瞬間、俺はこの
「……やった、やったぞ。これは過去最高にちゃんと収縮した魔力になった! 魔法をモノにしたんだ!」
笑顔で目の前の爆炎を見て小躍りしている俺を見て、アイヴィーが完全に呆れ顔で頭を抱えている。
「わ、私……好きになるやつ間違えたかしら……」
アドリアの
爆炎の中心に
「……な、なんて魔法だ……」
ロランが消滅していく
ちなみにこの魔法の授業料はエール一樽分……対価に比べて魔法の威力はコストパフォーマンスが高いとも言える。覚えたところで使えるやつはほとんどいない、が口癖だったか。
気がつくと魔法の効果は消滅し、周りの木は完全に吹き飛ばされ、地面は黒く焼け焦げ
それと同時に焦ったようなロスティラフの声が響く。
「く、クリフ殿……村がありませぬ」
みんなが村を見るが、石壁は見事なまでに破壊され、主だった家屋も爆風で薙ぎ倒された廃墟が広がっている。あれ? こんな場所に廃墟なんかあったんだっけ? と考えるが……廃墟に見えるそれは、元ゲルト村の成れの果てであった。
「ちょ、ちょっと! 村の防衛をしに来た私たちが村を破壊してどうするんですか!」
アドリアが、あわあわ、と口を抑えて焦り始める。ロランはうわーという表情で広がった廃墟を見ている。……これはやっちゃった系だろうか。その瞬間に俺は後ろから蹴倒される。
「クリフ! あなた何やっているの!?」
アイヴィーが完全に怒りの表情で俺をゲシゲシと蹴り飛ばす。や、やめてください……アイヴィー様ぁ。
「い、いやでもあのくらいの魔法じゃないと
アイヴィーが怒りのままに思い切り襟元を掴み首が締まってしまい、情けない声を出してしまう俺。そしてそのままぶんぶん振り回わされる。く、苦しい、それ以上はやめて下さいぃぃ。
「これじゃあ私たちの方が極悪人じゃない! なんて事してくれてるの!」
「うぎゃあああ! ……この始末をどうするんですか! この馬鹿エロクリフ!」
パニックになったアドリアも一緒になって俺の首を絞め始める。ロランとロスティラフはやれやれ、という顔でお互い顔を見合わせると、肩をすくめた。
「ほう……古代魔法
ネヴァンは顎に手を当てて記憶を探っていく……
あの使徒の若者はわかっているのだろうか?
「歴史を知っていれば、あのような喜び方はせぬな……中身は子供だの」
「凄まじいな……これが古代魔法か」
クラウディオは感心したように頷いている。彼は比較的新しく
「
ネヴァンは憎々しげに呟くと揉めている
「血がたぎるな……これほどの強敵と戦えるのは喜びでしかない」
クラウディオは笑う。それを見てネヴァンはほう? と感心したように顔を見つめている。どうやらクラウディオはあくまでも正面から戦うことを望んでいるらしい。戦士ではないネヴァンにはよくわからない理由だが……。
「我らは死なぬ、とはいえ再生には時間がかかるからな。無理はするなよ?」
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