117 ゲルト村防衛戦 08
破裂音とともに、
「あ、アドリア?! なんで前線に……」
「助けに来たんですよ。クリフ一人じゃ負けちゃうかもって思ったんで」
アドリアは俺を見つめてニコリと笑う。
危ないだろう?! と俺は詠唱を中断して目の前のアドリアの肩を掴む……そこで気が付いた。彼女の肩は震えていて、額には汗が滲んでいる……やはり本調子ではないのだ。その事実に気がついて……俺はそれ以上疑問をぶつけられなくなった。
「すまない……」
「私はクリフの仲……いや……私の大事な人を守るのに理由なんかないんですよ」
アドリアはぷい、と顔を背けてガルタンに向き直る。再び
「ここは通さないわ! やれるものならやってみなさい!」
「ククク……一人増えたところで……障壁など破壊してくれるわ!」
ガルタンは狂気的な笑みを浮かべて
「この程度で……私の魔法を貫けると? 馬鹿にしないでください!」
しかし……アドリアの呼吸は荒くなっており、かなり辛そうな顔をしている。その表情に気がついているのか、ガルタンは笑いを絶やさずにひたすらに障壁へと攻撃を繰り返している。
「顔はそうは言っていないぞ?
アドリアが額の汗を拭いながら……必死に障壁の維持に回る。そして、そのタイミングで俺の心にあの声が響く。
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「これは……追加の腕のようにも扱えるのか……」
ガルタンの攻撃が激しくなり、アドリアが片膝をついた。もう限界かもしれないな……俺は急いでこの状況を好転させるために
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「影より生まれよ
俺の影から黒い霧が体へと巻きつくように立ち登る。その様子を見てガルタンが驚愕の表情を浮かべて攻撃を止める。そして、攻撃が止まったことでアドリアにも余裕が生まれるが、異様な雰囲気を感じたのか慌てて俺の方向を見て……その表情が固まる。
「漆黒の腕よ、わが意思に従い敵を討ち滅ぼせ。
黒い霧が次第に腕の形へと姿を変えていく、その腕はまさにガルタンが使っている
「ば、馬鹿な……私の
ガルタンが焦りの表情を浮かべて叫ぶ。それには答えずに俺は
「俺がお前の魔法を
俺はガルタンを締め上げたままその問いに答える。アドリアは目の前で見せられる光景に口を開けたまま唖然としている。メリメリと音を立ててガルタンを締め上げていく。
「そうか……これがガエタンを倒した使徒の……ハハハ……お前はやはり危険人物だ……」
ガルタンは笑いを浮かべてこちらを見る……黒いモヤが限界を迎えて消失していき、そして一気に
「ククク……お前の大事な人とやらは……グハッ……人ではない化け物……クハッ」
その言葉と同時にガルタンは口から血を吐き出して……
俺は
「あ、アドリア……大丈夫か?」
「え……あ、あの……」
アドリアが困惑したように俺を見ている。顔をあげて彼女を見ると、その目に少し怯えの色が感じられる。何かを聞こうとしているのか、口を何度もパクパク動かして……何かを言おうとしてはすぐに言い淀み、何を話せばいいのかわからないという表情だ。
そうだな……アイヴィーに初めて魔法を見せたときはこんな反応だった。彼女は俺が魔法を模倣していることを知っている。が、アドリアには話していなかった。
「すまない、今は何も聞かないでくれ。ちゃんと話すから……」
俺は
「……わかりました……今はそんなことを言う時ではありませんね……」
アドリアは俺の顔を見ずに……悲しそうな、そして辛そうな顔で答えた。
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