102 金(ゴールド)級冒険者への昇格
「ば、バカな……お前は一体……」
ジャンは血まみれで俺の前に倒れる。
「クリフ……」
トドメを刺したものの、アイヴィーが不安そうな顔で俺を見つめている。ロランも、アドリアも
「えーと……なんて言ったらいいのか……」
俺は少し困り顔で、みんなを見る。どう説明したらいいんだろう? うーん……。
「言いたくないですか?」
アドリアが俺を真剣な顔で見つめている。少し不信感も抱えているのだろう、目に不安の色がある。
「いや、説明がしにくい……
うーん、これは苦しい。これ以上説明するにはどうしてそんなものを手に入れたかまで遡っていかなきゃいけないし、あの声が話をしていた
「……そうか……
倒れていたジャンが俺を見つめながら笑う。あ、こいつ死んでないのか。全員の目が彼に集中する。
「貴様は、あの
「クリフが……
アイヴィーが俺の顔とジャンを交互に見ながら、呟く。
「人を超越して……魔道へと堕ちる……暴虐と破壊の
そこまで話すと、口から血を吐き出してジャンが絶命する。……これ最悪な場所でぶつ切りになっている気がする。俺は何も言わずに……ジャンとマリアの目を閉じてやる。
「関係ないよ、俺は……」
俺は念のためにみんなの顔を見る……ロスティラフは表情がわからない。ロランは何か考え事をしているようだが。
アイヴィーは不安そうな顔で俺を見つめ、アドリアは明らかに俺が何も言わないことに不信感を抱いている表情だ。
「とりあえず、まずは
俺はすぐに話題を入れ替えるために、少し無理のある笑顔でみんなに話しかける。その言葉に動き始める仲間たち。
そこから数日、
そしてそれを解決したのが
そして俺たちはいつもの酒場で、酒と料理を前に少し話し合いをしていた。
「さて、きちんと説明をして欲しいですね」
アドリアが俺に詰問するかのような目で見つめる。酒の肴は俺、あの時
「そうだな……まずは飲ませてもらっていいかな?」
俺が少しエールを飲みながら苦笑いで話すが、誰もその笑いについてこない。とても寒い空気が流れ……俺はため息をつく。しかし……心にあの影の声が響く。
『真実を話してはいけない……適当に誤魔化しなさい……』
そして心臓を鷲掴みにされるような、そんな悪寒を背中に感じ、俺は少し青ざめた顔で後ろを見る……が誰もそこにはいない。ただ酒場の喧騒が広がっているだけだった。
「どうした?」
ロランが少し心配そうな顔で俺に話しかけるが……俺は首を振って問題ないというジェスチャーを返すと、嘘をつくことにした。
「気がついたら
明らかに苦しい嘘をついてしまった。下を向いて誤魔化すようにエールを飲む俺。上目遣いでちらりとみんなの顔を見るが、誰もその言葉を信じていない顔をしている。
「
ロスティラフがエールを呷りながら俺に尋ねる。
「わからない、俺が
まあ、それは……とロスティラフが少し納得したように頷く。ふと視線に気がついてその方向を見ると、アイヴィーが俺を見ていて……赤眼が少し輝いた気がした。そして、俺の視線に気がつくと悲しそうな顔で下を向く。嘘だってバレてるんだな、これは。そうだ、すでに俺は
「時がくれば……説明できるんだろうけど、今はこれだけしか……」
俺は再びジョッキに目を落として、みんなの視線から逃げるように下を向く。そんな俺を見て、アドリアはため息をついて……口を開く。
「いつなら説明できますか?」
「わからない」
アドリアは呆れたような顔でこちらを見ている。アイヴィーはまだ目を伏せているし、ロランとロスティラフはエールを片手に俺とアドリアの様子を見ている状態だ。
「わからないじゃ無理ですよ……」
「今は言えないんだ、信じてくれ」
「そうか、まあ男には言えない秘密が一〇〇や二〇〇はあるからな……俺は気にしない」
ロランはエールの入ったジョッキをぐいっと呷ると、俺に笑いかける。
「俺はさ、今のこのメンバーが気に入っているんだ。クリフのことも信頼している。いつか話してくれればいいよ」
なんて優しいんだロランは……それとは別で女性陣は明らかに困惑しているようだ。
「まずは今、
ロランの一言で、少し場が和み……ギクシャクした空気もあったものの、俺たちは普段より少し味のしない酒と料理を楽しんだのであった。
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