97 洞窟の知恵者(ウィズダム)
「ほんと……男って嫌ですよねえ」
「そうねえ……しかも鼻の下伸ばして……」
今俺とロランはアイヴィーとアドリアの総攻撃を受けていた。返す言葉もない……実に的確な言葉である。いやなんかあの
いやでもアイヴィーの良さとか、アドリアのよさは
「俺は二人のことを……ぶげらぁっ!」
アドリアに本気で蹴り倒された。彼女はかなりお怒りの模様で……ちょっと顔を赤くして少しだけ震えている。ロスティラフが頭を抱えているのは気のせいか。
「あ? 馬鹿ですかテメーは、突然何言い出してるんです」
「ア、アドリア?」
アイヴィーが流石にオロオロとアドリアに困った顔を向ける。そうだった、二人のこと、なんて話したらアドリアと俺で決めた『アイヴィーには言わない』約束を破るところだった。俺とアドリアの関係は……バレてるだろうが、言わない。
で、今の状況だが俺たちは屋敷を退去して西へと向かっている。西へと向かうと洞窟があるそうで、そこに
「しかし……何か引っかかりますな」
ロスティラフが難しい顔をしながら歩いている。彼は屋敷に行く前からこんな感じだが、
「なあ、ロスティラフ、
「そうですな……
ロスティラフは俺たちに念を押してきた。どうも
「あまり知られていないと思いますが……
ほうほう……そんな流れなのか……すると
「ロスティラフさんは
「私は……いや、これは余計ですな。まあそういうことにしてください。ともかく
ロスティラフは何かを言いかけたが、すぐに口をつぐんだ。何かあるが今は聞くような話でもないのだろう。
「
「でも、それだと家畜を襲っているという話と辻褄が合わないわね。そんな危険を冒すとは思えないもの」
アイヴィーがロスティラフの顔を見ながら、違和感を伝える。確かにな、知性的な
「まずは会話……だな」
俺の言葉に全員が頷く、特にロスティラフは嬉しそうな顔で……俺を見つめた。
洞窟は思ったよりも屋敷から遠くなかった。何か巨大な生物が、遠い過去に岩盤を削ったような……そんな印象の外見だ。入り口近くには何かが這ったあと……巨大な長細い何か、だと思うが跡がついていたので、おそらくここで間違っていないのだろう。
「ずいぶん馬鹿でかい洞窟だな……」
「遠い過去に、何かが住んでいたのでしょうね……」
アドリアが入り口の壁などを調べている……ロスティラフも地面に落ちている石などを拾って確かめている。ロランは油断なく武器を構え、洞窟内を注視している。その時……洞窟の奥から声が響いた。
「冒険者か……あの家に雇われたのだな」
大陸共通語だ。一斉に警戒モードになる俺たち。
「待っておれ……今そちらに行ってやる」
何か巨大なものを引きずる音が響き……地面が小刻みに振動している。ロスティラフが慌てて後退し叫ぶ。
「これは……まずい!
洞窟の奥から、凄まじく巨大な影が覗く。竜の頭部から伸びる凄まじく長い蛇の胴体、そして背中には一対の大きな羽が生えている。巨体は以前戦った
「ふむ…‥男が二名、女が二名……一人は
「お前はどこの
ロスティラフは敵意がないことを示すために武器を収め、俺たちにも同じようにするように手振りで伝えると話し始めた。
「大陸共通語で失礼する。私は
「ロスティラフ? それは人に付けられた名か。まあ良い……我はそうさの……近しい人間からは
「さて
「いかにも。ただ状況が読めず……理由をお聞かせ願いたい」
ロスティラフが
「ふむ……話すより見せた方が早いな。ついてくるがいい」
俺たちはゆっくりと洞窟の奥へと歩いていった。
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