57 下水道に潜む魔物 04
「この化け物め! 来なさい!」
伸びてくる首を
そのまま胴体へと
アイヴィーは首に絡みとられないように
「おお、すごいな」
アイヴィーの剣術は王国ではほぼ見ない型だ。
補助として防御魔法を展開し、アイヴィーを支援する。避けきれない攻撃があった場合はこれで命拾いすることもあるだろう。
「……あの貝殻を割る手段を考えないとだめだな」
図鑑にもあったが
「この程度じゃダメか……」
俺の覚えている魔法で貫通力が高い魔法はあまり多くない。
悩んでいると、アイヴィーが
「くっ……クリフ! 何ぼーっとしてるの!」
魔法防御を貫通した攻撃で、噛みつかれはしなかったが痛みに顔を顰めるアイヴィー。あまり考える時間はなさそうだ。このままではアイヴィーが危ない。焦りもあるが、ダメもとで賭けに出てみる。
魔力を集中させて、七年前に見たあの技を再現してみる。
「闇よ、深淵の力よ」
雰囲気が変わったのを感じたのか
「我が影から生まれ、敵を貫く槍となれ」
魔力を凝縮した黒点が俺の前に出現する……が安定していない。このままでは爆発四散する可能性が高い。あまりの抵抗感にこのままだとダメだ、と諦めかける。
その時、声が響く。
<<
七年間一度も出てこなかった力だ。ようやくチートが使えるのか……条件を教えて欲しい。
黒点が形を変えアルピナが使っていた時よりは少し澄んだ黒い槍のように整形されていく。
「な、何これ……」
アイヴィーが見たこともない魔法に驚く。そうだよなあ……俺も知識としてこの魔法を調べたけどどこにも載ってなかったしな。
「敵を貫け! <<
「アイヴィー!」
「このお!」
その言葉で気を取り直したアイヴィーが
俺も魔力の大半を一気に放出した感じがあって疲労感を感じて座り込む。全身汗だくだ、一発打つだけでこれだけ疲れる魔法って経験したことがない。
動かなくなった
「ご、ごめん。水……水が欲しい」
息がうまくできずに咳き込む。水筒を取り出し俺に渡すアイヴィー。水筒から水を軽く飲んで呼吸を落ち着ける。
「クリフ……今の魔法は何?
普段の俺ならその時アイヴィーが無表情で詰問するような顔をしていたことに気が付いたかもしれない。でも疲労もあって全く顔を見ていなかった。
「昔
少し咳き込んでから成功した嬉しさから笑顔でアイヴィーを見上げると、今まで見たことがないくらいに驚いた表情をしたアイヴィーの目に、別の色が浮かんでいた。
その色は恐怖だ。
「……まさか……クリフ……もしかしてあなた
素早く
「な、何をするんだ! やめてくれアイヴィー!」
「
剣先が震える。チクチクと複数の傷を作って俺の首から血が流れていく。
「私……あなたのこと……そんな……
ブルブルと震えながらぼろぼろと大粒の涙を流すアイヴィー。
「……そんなの、そんなのって……ないよ!」
大声で叫ぶアイヴィー。グッと
「待ってアイヴィー!
剣を突きつけられたまましどろもどろになって説明する俺。ただ転生のことは言えないから、魔法の研究を続けていて、オリジナルの魔法が開発できないかどうかをひたすらに試行錯誤していたのだ、と懸命に誤魔化した。
泣きながら説明を聞いて、少しでも不確かなところがあると剣を突きつけてきたアイヴィーだが、一応納得はしてくれた。念のために
「ご、ごめんなさい。感知魔法でも出ないということはクリフは普通の人間なのね」
「そ、そうだよ。第一
「……ならなんで敵の使った魔法を模倣しようと思ったの?」
完全にジト目で俺を見るアイヴィー。あ、これ理由話したら絶対殴られる流れだ。
「その……黒い槍が飛んでくってちょっと見た目的にカッコよかったから……なんていうの?男の夢?」
その言葉と同時にアイヴィーの鉄拳が俺の頬を捉える。やっぱりこうなったか痛いですぅー!
「馬鹿じゃないの!? 勘違いして私があなたを殺し……ちゃった……ら…うっ…どうするの……よ! バカぁ!」
周りに誰もいないので感情的になって泣き始めるアイヴィー。
「ご、ごめん。そんなに大事だと思ってなくて……」
アイヴィーをそっと抱きしめて、彼女が落ち着くまでそのままでいるしかなかった。
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