47 堕落の落胤(バスタード) 01
「ということで、まず大学にいる冒険者登録されているメンバーで対応します」
大学は
が、大学構内での出来事となるため、まずは冒険者登録をしている学生中心で迎撃を行い、校内から魔物が出てしまった場合に
「正直いえば大学側のメンツもあるでしょうね、どうも研究棟から出現したらしくて……」
アドリアが耳打ちをしてくる。研究棟か……見学では入ったことがあるが、正直何を行っているのかさっぱりわからない部屋が多かった。
「過去の文献を確認していて記述と似た様な化け物がいることがわかりました。
周りを見ると、案外数が少ない。俺たち四人は冒険者登録をしているのでまあわかる。
大学の護衛として雇われていたという守衛の戦士が一名、この人は元冒険者なのだとか。
「俺のことはセロンと呼んでくれ、まさかこの年齢で再び戦うことになるとはな……」
少し遠い目をしているセロン、守衛なのに申し訳ない。
そのほかでいくと先日話したマックス……冒険者登録してるのか、と驚く。それとマックスのチームにいた青髪の男性……彼は弓を持っていた。
なんとクレールさんも緊張した面持ちで立っている……俺と目が合ったのに気がつくと手を振ってくれる。
あははと笑って手を振り返すと、いきなり腹にアイヴィーの鉄拳制裁をくらって悶絶する。
「……こんな時にデレデレしてんじゃないわよ」
アイヴィーさん大変お怒りです。アドリアとトニーがやれやれという表情を見せる。
「登録していることは自己申告なので……他にもいそうなものですが、さっさと逃げてしまった者も多いようですね」
アドリアがため息をつく。七人か……とはいえ前衛が二名になったのは大きい。
「クリフ君、敵は1体だがかなりの巨躯らしい、作戦を立ててから戦った方が安全だろう」
マックスが話しかけてくる。
「僕は攻撃魔法が使える、この青髪の……プロクターは弓と感知魔法の使い手だ」
プロクターと呼ばれた青髪の男は頭を下げる。あまり喋らない人らしい。
「私は戦闘支援や攻撃魔法が使えます。どこまで効果があるかわからないですが……」
クレールさんが
「僕は攻撃や防御系など広く覚えています、あといざとなったら
簡単にチームの役割を説明する。
近くに落ちていた枝を拾い上げ、地面に構成を書いていく。
「前衛二名、その後ろに僕とアドリア、プロクターさん。クレールさんやマックス、トニーは後衛で支援をお願いします。前衛には防御や支援系の魔法を全力でかけて、
「するとクリフ君は接近戦ができるのかい?」
マックスが不安そうに質問してくる。
「父が戦士でしたので、一通りは教わっています。本職とはいえませんが……」
そうなのだ、父バルトは戦士だったので小さい頃から色々なものを教わっている。魔法に興味があったのでそこまで真面目にやっていたというわけではないが、冒険者として活動した時にかなり命を救われた。
それから再び教わったことを復習している、命を拾うために。
「そうか、ならそれを信じよう。まずは一当たりだ。無理そうならさっさと逃げるぞ」
マックスが頷く。他のメンバーも同様に頷く。
「そうですね、倒せないことも考慮に入れて動くべきですね」
いのちをだいじに、だな。
近い。匂いが近い、俺を裏切ったものの匂いが近い。俺から奪うあいつが近い。
この場所には見覚えがある、いつだったか。
記憶を探ろうとするとモヤにかかったようにすぐに出てこない。
脳裏に浮かぶのは懐かしさを感じる金髪の少女の姿……なぜ泣いているのだろう?
だがその姿もすぐに消え去り、ネヴァンと名乗ったあのローブの女の姿に書き換わる。
「さあ……あなたの力を見せてみて、その力があれば馬鹿にされることはないわ」
ネヴァンの声が頭に響く。この声には抗い難い、強い衝動を感じさらに歩みを早める。
周りにいるローブの連中は俺を見ても攻撃してこない、学生服の者もいるがこの姿を見るだけで逃げ出していく。
街路樹やベンチ、そして歩みを止めようとする守衛を吹き飛ばしながら、巨体が進んでいく。
「ふふ……坊や……随分と元気になって……」
その様子を見ている黒いローブの女性、ネヴァンが笑みを浮かべながら屋根の上に立っていた。
「あなたは私が変えてあげたの、とても強く、美しい姿に」
ネヴァンは堪えきれないというふうにくすくすと笑うと、喧騒を眺めている。
あの肉塊にはもはや自我がほぼ無く、あるのは復讐心と攻撃衝動、そして猜疑心のみ。
外見もネヴァンは満足している、出鱈目に生えた手足をバタバタと動かし、のたうつように進んでいく。
美しい、これこそが生命だ、と思う。全身で生を体現する肉塊、
巨大な肉塊が大学の建造物を破壊していく。
なんとか阻止しようと大学の守衛戦士が立ちはだかるが、
その時
「来たわよ……坊や期待通りの働きをしてね」
ネヴァンは歪んだ笑顔を浮かべながら、戦いが始まるのを待っていた。
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