32 プランナー・イン・ザ・ダンジョンズ01
「えー、聖王国魔法大学の新入生歓迎イベントとして〜、大学が管理している
学長がのほほんとした感じの喋り方で訓示をしている。そう、新入生対抗イベント「新入生
デカデカと垂れ幕にこのイベント名が書かれていて少し脱力する。
「それでは、各チームに分かれてください」
学生たちがお互いのチームにわかれていく。もちろん俺たちのチームはいつものメンバーで固まることになった。
が、アドリアが聖王国チームのメンバーから声をかけられており、少し話していたが最終的にはアドリアがお辞儀をして断ったようで、小走りにこちらへと走ってきた。
「どうしたんです?」
「いえ、聖王国チーム側から国のメンバーでなぜ集まらないのかと言われまして……今更言われても……」
アドリアに声をかけていた男性……赤い髪で気が強そうなキツめの外見をしている若者がこちらを憎々しげに睨みつけていたが、他のメンバーに諭され視線を外した。
うーん……確かにアドリアは治癒や防御系の魔法に特化している人材なので手放すには惜しいと思ったのかもしれない。
こちらを睨みつけていたのが多少気になるが……今は何かをする時間はなさそうだ。
ルールの説明では、
魔導監視装置により命の危険が迫った場合は強制転送されること。
時間までに
魔導石は複数あるが全チームに行き渡るほどは無く、確保したのちに学生同士の対人戦で奪い取ることも許される。
バトルロイヤル形式だが、確保する魔導石は一チームで一個、複数を奪い取ることはルール上NGとなっている。
などなど細かい条件が説明されていく。
「奪い取ることも許されるってことは、私たちが確保したところに他チームが襲撃をかけてくることも想定しないとダメですね」
アドリアが少し不安げな顔で話す。
そうだよなあ……さっきの聖王国チームだけでなく帝国チームもそういう戦法を取る可能性もあるし……。このチームでなら多少の妨害や対戦でも勝てそうな気もするが、何せ四人しかいないのでどうしても数的不利は免れないだろう。
「一番怖いのは複数チームがまとまってくることだな」
集合が完了し、最終的なメンバーの確認を行ったのち、学園の魔道士がチームのメンバーごとに色と図柄を分けたバッジを渡していく。
どんなバッジが来るのかな〜と思ってよそ見をしていると、突然ガバッと誰かに抱きつかれた。え? しかも柔らかい感触が俺の顔を包む。これってあれですよね? あれ。
「クリフさん! 久しぶりですね!」
抱きついてきたのはクレールさんだった。
エルフはいい匂いをさせていないとダメな法則でもあるのだろうか、心地よい香りが鼻腔をくすぐる。
「え? クレールさん? ちょっと何してるんですか」
この図はまずい、とにかく引き剥がしてクレールさんをみると、バッジを手にニコニコ笑っている。
「先生のお手伝いでバッジをお持ちしたんですよぉ」
「あ、そうなんですね……でもなんで急に抱きついてきたんですか?」
悪戯っぽく笑うとクレールさんはバッジを俺たちに渡してきた。
「スキンシップですよ、弟みたいなクリフさんのために、ね」
クレールさんは俺の頬に細い指をチョン、と当てる。その行動に思わず顔が赤くなった。そこで初めて……突き刺すような視線を感じた。
視線の先を見ると、アイヴィーとアドリアが明らかに汚物を見るような目で俺をみていた。
「あの、お二人とも……この人はクレールさんと言いまして、道に迷った俺を助けてくれた人なんです」
弁解をしても視線は変わらない。
「へえ、その割には随分と距離が近いですわね、
「弟にするようなスキンシップではないですよね、
完全にジト目だ。二人が明らかに疑いの眼で俺をみている。
冤罪や、冤罪。クレールさんは本当に俺を助けてくれた人なんや! なんもないんだ! と思ってトニーを見るが、トニーは一人スクワットをその場でやっていてそっぽを向いている。この裏切り者が……。
「頑張ってくださいね、クリフさん。それとチームの皆さんも」
笑顔で手を振って持ち場へ戻るクレールさん。悪気は絶対ない……というか天然なのかこの人。
苦笑いしつつ手を振りかえしてため息をつくと、いきなり脛を蹴られた。
「……いいですわねぇ、おモテになる殿方は違いますわ」
アイヴィーが青筋立てつつ笑顔で二回三回とガシガシ俺を蹴ってくる。
何故かポコポコと頬を膨らませたアドリアさんにも叩かれた。
「不潔ですよクリフさん」
「なんで、ちょ、二人ともやめてください、痛いです」
よくみたらトニーも何故か俺をポコポコ叩いている。
「ずるいですぞ、私もああいうお姉さんが欲しいのですぞ、クリフ殿のバカぁ」
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