30 パーティメンバーのやれること確認する、これ基本ね

「さて、僕らチームの能力を確認し合おう」


「ちょっと待って、なんでクリフが仕切ってるの?」

「それはもうアイヴィー様のお手を煩わせることがないようにですよ、ウヘヘ」

「……あんた後で覚えておきなさいよ」

 俺たちは放課後、大学が保有している訓練場の一つにいた。

 自分たちが得意としているものを持ち寄ろう、と言う話になっていたため、それぞれ得意な武器などを持ってきてもらっている。


 俺はいつもの木の杖と影霧シャドーミストを持ってきた。服はまあ制服でいいや、と思っている。

 冒険の時は一応革製の軽装鎧レザーライトアーマーを着ていることが多いが、今回は着ていない。

「俺はいつもこの杖と小剣ショートソードで冒険に出てるよ。魔法は攻撃系と防御系、それと精霊の召喚ができる」


 感心したようにアイヴィー達が頷く。

「冒険者ってのも本当なのね。特にその小剣ショートソードは魔法の武器に見えるわ」

 アイヴィーが影霧シャドーミストを見ながら感心している。よく見ると赤眼が少し輝いているようにも見える。魔力感知能力があるのだろう。

「クリフさんって結構ランクが高い冒険者だったりしますか?」

 アドリアが質問してくる。俺は首飾りにしているプレートを見せる。その色は銅だ。

「そんな高くないよ、俺は学生が本分だし」

「それでも銅級カッパーなんですね、同い年なのに……」

 まあこれには訳があるのだが、今話すことではないかな。


「私は魔法もちゃんと使えるけど……武器も扱えるのよ」

 アイヴィーが刺突剣レイピアを鞘から抜いて振るう。これもまた業物なのだろう、装飾も含めて作りの良さが目立つ。

「ということは正確には魔法剣士メイジソードマンになるのかな?」

「そうね、私の父上は帝国伯爵と同時に騎士だったのよ。子供の頃から剣の勉強もしたわ」

 ほう、とトニーが感嘆の声をあげる。

 確かに刺突剣レイピアを構えたアイヴィーの姿はかなり様になっている気がする。


「私は支援系魔法が得意ですぞ」

 トニーがポージングをしながら応える。お前武器ないんかい。

「と言うよりも私は自分の肉体を生かすために支援系魔法に特化したのです」

「肉弾戦が得意かと思ってた……」

 俺は素直な感想を口に出した。ってかどう考えてもトニーは肉弾戦で戦うタイプだろ!

「私は格闘技の経験もございませんでしてな、はっはっは」

 それはそれで頭痛い話だが、支援系に特化しているのは悪いことではないな。


「私は治癒系とかが得意です、防御系なども使えますよ〜」

 アドリアが連接棍フレイルを手にニコニコ笑っている。笑顔とは逆に連接棍フレイルの穀物部分には複数の突起が出ており、当たりどころが悪ければ致命傷になりかねない。実戦的な武器なのだなと感じた。


「治癒系の魔法が得意なのは僧侶プリーストだけかと思ってました」

「そうではないですよ、確かに治癒魔法や解毒魔法は僧侶プリーストの方が有名ですけど……私は僧侶プリーストではないですが、将来医者になりたくて……医術も含めてそういった勉強をしています」

 魔道士ソーサラーで治癒系に特化しているのはかなり珍しい……というか王国の魔道士ソーサラーはそういった系統には明るくなかった気がする。聖王国ならではなのか、かもしれない。


「とりあえずアイヴィーは前衛、トニーが支援系、アドリアは治癒、防御。攻撃魔法は俺と考えると冒険者パーティに必要なものは大体揃ってる気がするな」

「そうですな、アイヴィー殿には多少負担がかかる気もしますが、その辺りは援護できればと」

 トニーはポージングを決めつつそんなまともなことを言い出している、いやポージングの時点でなんかおかしい。


「アイヴィーはどういう魔法が得意なの?」

「私は自分の能力を強化するのが得意ね、一応攻撃系も覚えているけど……」

 身体能力を魔法で強化して戦えるのはかなり強力な気がする。実は王国でこの辺りの魔法を覚えようと思っていたが、複雑な内容だったので覚えるのを後回しにしていたのだ。

「そこは俺が補えばいいかな。俺も接近戦は心得があるけど、戦士ではないので」

 あれこれ話しながら、現状把握を進めていく。とはいえ相当にこの四人でできることは多そうだ。


「イベントは二週間後だった。一度みんなで冒険者登録をして、軽く肩慣らしをしておいた方が良さそうだね」

「あ、それ良いわね。私一度冒険者の仕事を体験してみたかったのよ」

 アイヴィーが即食いつく。トニーもアドリアもやりたかったようで、賛成してくれた。

「じゃあみんなで冒険者組合ギルドに行こうか。青銅ブロンズ級の受けれる依頼はそれほど危険がないと思うし、次の休みの日に挑戦してみよう」


 俺が初めて冒険者登録して受けた依頼は、確か不足しがちな薬草の収集依頼だったんだよなあ。

 今でもその依頼のことを思い出すことができる。

 薬草を集めていたところに一角兎ホーンラビットが数体出てきて、影霧シャドーミスト炎の矢ファイアアローを駆使して撃退したんだっけ。

 一角兎ホーンラビットも案外動きが早くて苦戦したのは懐かしいところだ。それから一人で行動するのが危ないとわかって、野良パーティに入れてもらって行動することが増えたんだよなあ。


「お互いのことを理解しておかないとぶっつけ本番というのは危ないもんな」


 昔先輩冒険者から言われたことを思い出して俺は独り言のように呟いた。

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