第二章 聖王国編
24 聖王国魔法大学への留学
「いい天気だなあ……」
心地よい風が流れ、ガタゴトと荷馬車が揺れる。
数人の乗客と、荷物を乗せた荷馬車に俺=クリフ・ネヴィルは乗っていた。
この馬車は王国から聖王国の首都まで荷物と人を運ぶ定期便だ。そんな馬車に便乗して俺は聖王国へ向かっていた。
聖王国、大陸の南に位置し文化と退廃、そして魔法の研究が盛んな国として知られ、
この国には神話の時代の終わりに魔道士の父と呼ばれ、現在の魔法体系を確立した大魔道士フラウエンロープが設立したことでも知られている最古の魔法大学が存在する。
この大学のおかげで魔法体系が整理され、大陸中に魔導士が移住し、各地の魔法大学の基礎を作り上げることとなったのだ。
各国にある魔法大学は入学してくる魔道士の中から、将来有望なものを選抜し、数年間の留学生活をおくらせる文化が根付いている。
聖王国魔法大学は大陸中からエリート魔道士を受け入れ、フラウエンロープの教義・思想を学ばせ魔道士とはどういうものなのか? という教育を行い、魔道士の質の低下を防ぐための機関としても利用されている。
「という話だったが、本当に俺でいいんだろうか?」
俺は聖王国魔法大学への留学のため、聖王国へと向かっていた。サーティナ王国は聖王国と領土を接しており、両国の関係は非常に良好である。
特に帝国の領土拡大に伴い、両国は互いの軍事同盟を結び侵略への対策を行なってきている。そのこともありここ二〇年ほど両国の魔法大学は積極的な交換留学生制度を進めてきた。
面白いのは仮想敵国であるはずの帝国からも留学生が入学してくることだ。
「学ぶものはその身分、立場、国を問わず受け入れよ」
フラウエンロープの教義は平等に学ぶことを推奨しており、その精神は今でも守られている。
俺がサーティナ魔法大学に入学したのは一〇歳になった年。
あの
親元を離れ大学で魔法の勉強に励む傍ら、冒険者としてギルドへ登録しちょっとした事件の解決なども行なっていたのだが……先日学長から呼び出しを受け、聖王国魔法大学への今年の交換留学生として赴いてほしい、との依頼を受けた。ということで聖王国へ向かっているのだ。
ちなみに今年で俺は一五歳になった。
王国では一人前として扱われる年でもあり、あの戦いから七年が経過している。あの後
「兄ちゃんまだ若いのに聖王国へ何しにいくんだ?」
相席客である知らないおっさんが話しかけてくる。
「大学へ行くんです。あと僕は冒険者でもあるので……」
「そっか、冒険者ね。大きな杖を持ってるから魔道士かなんかか?」
俺の傍にある樫の木の杖を見ながらそんなことを尋ねてくる。
「はい、まだ冒険者としては銅級ではありますが」
「そっかー、さすが杖持ち。その年ですげえんだな」
いやいや僕なんか大したことないですよ、と苦笑いして返す。
とはいえ実は杖を持っているのは本当に大した理由がない。
接近戦であれば腰に下げている
「杖なんかなくても魔法は放てますよ。でも人の思い込みは結構重要でして……大きな杖を持っている魔道士は階級が高い、と思ってる方も多いですね」
昔魔法を教えてくれたベアトリスがそんなことを教えてくれた。実際俺はあの時の戦いでは杖なんか使わなかった。思えばベアトリスも杖をふるって魔法を撃つなんて動作は一切していなかった。
「冒険の時はほとんどやらないですが、街中や必要があればワザと大袈裟に杖を振るいます。そのほうが一般の方からすると効果が大きく見えるのです。そう望まれる方も多いですから……」
あの時ベアトリスが笑った顔は今でも心に焼き付いてしまっている‥…寂しそうだったがめちゃくちゃ綺麗だったんだよな。
ま、そんな思い出もあって一応俺も人前で魔法を使うときは杖を大袈裟に振るうことにしている。
何度か手紙をもらって文通を続けていたが、ここ1年ほどは実家からは手紙が転送されていない。一応1年前に留学が決まったのでその旨を書いたのが最後か、この世界の文通システムも冒険者宛だとちょっと不確かだからなあ‥…。
ただ、彼らも冒険者だ。いつどこで命を落としてもおかしくない。心配はしているが、かなり強い人たちだったので問題はないだろうとは思うけど……。
「そろそろ着きますよ、聖王国の首都は少し遠くからも見た方がいいですよ、絶景です」
御者が声をかけてくれる。こういった荷馬車は観光案内も人によっては行ってくれる。
この御者さんはいい人なんだろうな、うん。
進行方向を見ると、そこには王国では見られないほどの巨大な城塞が広がっていた。
聖王国の首都、永遠の都レイヴァーディン。神話の時代からこの地には巨大な都が建設されていた。
青年は部族を統合し、国家としての体裁を整えると自ら
戦いは何年も続いた、だが
大陸随一の大戦士と付き従う蛮族の荒くれ者。
闇に潜む盗賊とその手下。
フラウエンロープ直系の一三人の
そして名も無き
これらの仲間とともに聖王国はその戦い全てに勝利した。そして全ての戦いに勝利し、太平の世を築いた。
長い年月の果て、死の間際に
「我は死すとも別の姿にて甦り、再び皇位を戴く。それが我、
そう……聖王国は一〇〇〇年続く終身皇帝である
そんな
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