25 ゲームプランナー(前世)はエルフと遭遇する
「しかしデカい都だなあ……」
なんというか、生まれた王国の首都ホワイトウォールも大きかったが聖王国は大きさもさることながらもっと文化的な匂いがする作りだ。石造の家が立ち並び、路面は綺麗に舗装されている。
前世で俺がファンタジーの街並みを想像するのであればこの街はぴったり当てはまるのではないか?
それくらい西洋風ファンタジー世界のテンプレートみたいな街並みだったのだ。
王国首都ホワイトウォールは案外質素で、質実剛健という言葉がぴったり当てはまる作りだった。
サーティナ王国は戦士の国、それは歴史を学んでいても必ずそう紹介されていたので、そのイメージに合わせた作りになっているのだろう、とは思っていた。
「国の文化だから仕方ないけどね」
そんな独り言を言いつつ、大通りを歩いていく。
「しかし……同じ大陸にあるとは思えないくらい華やかな街だな……」
通りはさまざまな人、種族が歩いている。ぱっと見知的種族に見えないものも歩いているが、そんな人々が楽しそうにまた忙しそうに歩いている。平和なのだなあと感心する。
大通りを抜け、聳え立つお城を横目に街の外れへと向かう。
目標となっているのは巨大な尖塔、「魔道士の塔」の方向だ。王国魔法大学が提供してくれた地図と簡素なイラストにこの塔を目指すべし、と書かれていた。
小一時間も歩くと塔が目の前に見えてくる。
「おお、絶景だな」
聖王国魔法大学は塔を中心に、複数の建物が配置されその敷地は小型の砦のように石壁が周囲に配置されていた。
非常に整然とした作りかつ合理的な建物の配置だな、と感じる。無駄というか隙がない。有事の際はここも戦いに利用されることもあるのだろうか?
そして夥しい数のお揃いの制服を着た人々が歩いている、目を凝らしてみているとどうやらこの大学には制服があるようだ。
「制服まであるのか……大学というよりは高校に近いな」
前世では高校はブレザーだったので、この大学の制服はそのイメージに近いかな、とは思う。一つ違うのは学生達はやはり皆一様に杖などを所持している点か。
この(精神)年齢で再び学生気分を味わえると思うとちょっと切ない。
学生の頃にやり残したことはたくさんあるのだ、何せ家で遊んでたゲームと勉強の記憶しかないからだ。男女共学だったのに俺は学生時代何もしていなかった、まあそのおかげでゲーム業界にいきたいという気持ちだけは強くなったんだが、結果はアレだからね。
「さて、受付を探さないといけないんだっけ」
ここにきたのは留学のため、そして数日後に行われるという入学式に間に合わせるためだったので、やっておかなければいけないことはさっさと終わらせてしまいたい。
が、どこにいけばいいのかわからない。大学からもらった地図も受付の場所までは書いてなかったのだ。
「んー……よし」
覚悟を決めて適当に制服姿の人に話しかける。
「すいません、学生の受付はどちらになりますでしょうか?」
「ん? あら、新入生ですか」
パッと目に写った中で思わず声をかけたのは、耳がつんと尖った
「はい、今日到着したばかりで右も左もわからず……」
「いいですよ、案内します」
女性は快く引き受けてくれた、助かった。
「ありがとうございます、私はサーティナ王国魔法大学から来ましたクリフ・ネヴィルと申します」
「私はクレール・ラファージュです、見ての通り
クレールは耳をチョイッとつまんでニッコリと笑う、なんかその仕草にドキッとしてしまった。というかやはり
彫刻のような造形、尖った耳、切長の目、そしてほっそりした体型、美形しかいないというのも理解できる。
「どうしました?」
「昔の友人に
少し照れながら答えると、クレールはああ、と頷いた。
「そうなのですね、そうか
少し考えるような動作をして、俺に顔を向けるとクレールはこちらへ、と歩きながら続けた。
「私は気にしませんが、他の
「え? なぜですか?」
「
そっか、確かに昔遊んでいたゲームなんかだとエルフは純血主義、ハーフエルフは人間、エルフ双方から迫害されているという設定のものも多かったはずだ。
まさにその通りの図式がこの世界では起きているということか。
「クレールさんはそうではないのですか?」
「私は、
え、それは知らなかった。先生も
「こちらです」
クレールはそんなことを話しながら学生の受付に案内してくれた。
「クリフ……さんと呼んでいいですかね?」
クレールが少し恥ずかしそうに俺に聞いてきた。
「はい、私のことはクリフと呼んでください、先輩」
「え? せ、先輩?!」
素っ頓狂な声をあげるクレール。少し顔が赤い。
「え? 大学では先輩じゃないんですか?」
「あ、いや先輩って呼ばれるのがちょっと恥ずかしかったので……私のこともクレールと呼んでください」
「ありがとうございます、クレールさん」
「クリフさん、それではまたお会いしましょう」
クレールはニッコリと笑うと去り際に可愛く手を振ってくれた。
「いやー、なんか美少女と話す機会がこの世界に来て増えたなあ、デュフフ」
そんなことを思いつつ俺は学生受付に向かった。
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