10 トロウルとの共同戦線を張るにあたって作戦を立案する
「……というわけだ」
ジャジャースルンドはここに来た経緯を話してくれた。
影の高原で斥候部隊の長をしていた彼は、任務として部隊を率いて影の高原から離れた
駐屯地付近に到着して異変に気がついた。
付近には混沌の使徒である
見過ごせなかったジャジャースルンドは部隊とともに駐屯地奪還のために詳細な偵察を行なったが、駐屯地にとんでも無い敵がいた。
この斥候部隊では力押しをしても勝てそうにない、という状況だという。
「我とそこにいるバーバランドラの二人だけでは混沌戦士を倒せるかわからん。
セプティムが唐突に「あ、嫌な予感が……」と小声で呟いた。
「我に雇われないか? ……先日盗賊どもを倒しているのを見せてもらった。腕が確かであれば心強い」
え?あの場所にいたんすか?
「人間の村が近いだろう、このままにしておくと混沌は村に到達する。結果的にそこの子供……クリフの身も安全では無くなるぞ」
ジャジャースルンドが脅しのように続ける。が、多分脅しではなく
「報酬としては、戦利品として駐屯地にある価値のあるものを出そう……渡せないものもあるのだが。我が死んだ場合は好きなものを持っていって良い」
「それは構わないんだが、どうやって相手を倒す?」
カルティスが疑問を投げかける。正直言えば
「それは我も理解している。今回戦えば
ジャジャースルンドが真顔で答える。
先生も話していたが、
それくらい人間と
そこで力弱い種族であった
圧倒的に数が少ないが力強く賢い
「とはいえ……
ベアトリスが頷く。その目にははっきりと恐怖の色が浮かんでいた。どれだけの経験だったのだろうか、先生も
「とは言え、僕らがこのまま
セプティムの答えにジャジャースルンドが満足そうに頷く。
「我は
さて、ここまで聞き役として発言を控えていたが、それほどの強敵なら策を練る必要があるだろう。
俺=クリフは子供とはいえ前世を含めるとそれなりに歳をとっているわけで、子供の頃から色々な戦記物の小説なども読んできている。その知識を活かして作戦を立てておきたかった。
「あの、僕も意見して良いでしょうか? 状況を少し良くするために意見をさせて欲しいです」
全員が驚いたように俺を見た。
「僕らは数が少ないので、相手を引っ張り出す必要があります。そこで陽動として相手を引きつける役が必要になります」
俺が立てた作戦は単純なものだ。
こちらの戦力は近接戦力としてジャジャースルンド、セプティムの2名、遠距離戦力としてカルティス、バーバランドラ、ベアトリス。その護衛にジャクー、俺=クリフ。退路を
「ふむ……相手を引き摺り出して魔法や弓、スリングで叩き、弱ったところを僕らで殲滅ね」
「はい、二人がまず出て来れば相手はこの数であれば、と思うのではないでしょうか?うまく後退して、相手を引きずり出せればあとは弓や魔法、スリングでの攻撃を合わせて一気に殲滅できると思います」
セプティムが感心したように俺に向き直る。昔の戦記物の小説で似たような作戦を立てていた話があった。今回はその応用に過ぎない。
「異論がなければクリフの案に乗るしかないな……この年齢でそんなのどこで覚えたんだ?」
カルティスが納得したようで、俺の肩をぽんぽんと叩く。
「戦術とかも勉強してたんですよ、もし有効なら使えるかなって……」
これは本当でもあるけど、嘘でもある。実践しているわけではないからうまく機能しないかもしれない。
「クリフの意見に乗ろう、俺も良い作戦だと思う」
「そうですな、この子は良い教育と知識を得ているようだ」
カルティスとジャクーが納得したように同意する。
「異論がないのであれば、この子を信じるしかないな、我は不満はないぞ。賢き子よ、我はお前を信じる」
ジャジャースルンドがニヤリと笑った。
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