13
家に帰って部屋に着くと、美緒と一美からLINEが着ているのに気付いた。「デートは楽しかった?」「上手くやれた?」という内容だ。
「大丈夫だったわ」「それと今度、八月にペルセウス座流星群っていう大量の流れ星が地球に降り注ぐんだけれど、それを観る約束をしたわ」と返信する。
「やったじゃない、夏稀!」「上手くやっている様で安心したわ」と喜んでくれる二人。いい友人を持って、私はやっぱり幸せ者だ。
――お風呂に入って戻ってくると、佐伯先輩からもLINEが届いていた。急いでスマホを見ると「池澤、今日はありがとう。次のデートも楽しみにしているよ」と書かれてある。「はい、今日はありがとうございます!私もまたデート、楽しみにしています!」と返信して、明日も部活動後に会う約束を交わす。
「ふふふ」とベッドにダイブする。嬉しさのあまり、足をバタバタさせる。明日も先輩と会う。毎日が、薔薇色だ。
「キュルルルルー!」
ビックリして飛び起きた。キュリルが鳴いている。そうだ、キュリルが居たんだった。
「夏稀ちゃん、良かったね!涼太君と仲良しだね!」
「キュリル――」
キュリルは子気味よく話している。これは、本当ならうるさい位な気がするんだけど、キュリルが何だか愛おしくて、許してしまえる。この妖精の役得だな、と思えた。
「キュリルも、応援していたの!涼太君の背中を押す魔法を掛けてあげたの!」
……そう言えば、ペルセウス座流星群を観ようと私を誘う時、佐伯先輩はちょっと言いにくそうだったっけ。あの時、キュリルの声が聞こえた様な……。
「そうなの?キュリルが魔法を使ったの?」
キュリルは、妖精だ。この素直で純粋な妖精は、そんな事も出来るのかもしれない。
「僕は、背中を押してあげただけなの!キュリルは、涼太君に頑張るきっかけを与えただけなの!そんな魔法なの!」
キュリル、応援してくれているのね。何だか嬉しそう。
「夏稀ちゃんと涼太君の仲がいいのが、嬉しいの!」
私はキュリルと喜びを共有しながら、佐伯先輩とのやり取りを思い出し嬉しくなって、これから先輩と紡ぐ未来も想像して、楽しくなる。キュリルと話をして、今日の思い出に浸りながら、眠りに就いた。
次の日、朝起きると、キュリルが学校に連れて行ってと頼んでくる。
「キュリルは、いつも夏稀ちゃんの傍に居るの!夏稀ちゃんと共に居るの!」
キュリルがどうしてもというので、学校に連れて行く事にした。何故だかキュリルの頼みは断れないな。
「嬉しいの!キュリルは夏稀ちゃんの傍に居るの!」
キュリルは凄く喜んで、ブンブン私の部屋を飛び回っていた。
学校に行くと、いつもの様に美緒と一美と共に、吹奏楽部で部活動をする。そして部活動が終わると、佐伯先輩との語らいの時間……。嬉しくて、楽しくて、とても大切な時間で、凄く幸せ……。
夏休みは進んでゆく。楽しい時間はあっという間。佐伯先輩との時間は凄く幸せで、振り返ると楽しい思い出ばかりだけれど、先輩と約束したペルセウス座流星群の観測まであと五日……。そうなってみると、凄く早く時間が進んでいる気がする。でも、先輩といると胸が温かい。心がウキウキする。そんな時間が、ずっと、永遠に続いてくれたらいいな。
佐伯先輩と、ペルセウス座流星群を観測する日の三日前。部活が終わり、佐伯先輩と話をしていると、先輩が観測当日の計画を話し、確認をしてくる。
「ペルセウス座流星群観測当日は、日高山の山頂で流星を観ようと思う。小さな山なんでそんなに街と変わらないかもしれないけれど、山頂の広場から少し進むと、公園の街灯や街の明かりが届かなくて星空がよく見えるし、日高山は夜十二時までロープウェイが運行してるから、上り下りも簡単に出来ていいしな」
日高山は私達の街の外れにある、標高二百メートル程の山。標高は低いけれど、私達の街を見渡せるので、なかなか人気の山だ。日高山にはロープウェイも張っていて、ゴンドラで上り下りする事が出来る。ロープウェイの周りに照明もあり、夜間でも運行できる。朝は午前八時からやっているけれど、夜十二時までやっているのね。
「分かりました、日高山で流星群を観るんですね!」
元気に返事をする私。先輩は、嬉しそうだ。
「当日は、夕飯を食べてから、午後七時に街の公園で待ち合わせしよう。街の公園から日高山までは歩いて三十分位。夜八時位には、暗くなって星が見える様になるだろうから、それからペルセウス座流星群を観測しよう」
「分かりました!」と先輩と約束を交わす。先輩と流星群を観るまであと三日。凄く楽しみだ。
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