12
街の公園、いつもの様に早めに待ち合わせ場所に着いた私は、夏祭りの装いの街の公園を見回してみた。
――屋台や、夏祭りのステージが建てられている。街の公園には、友達同士で来ている観客や、家族連れの観客、それに、カップルで来ている人達などもいて、賑わいを見せている。
(私も、この中のカップルみたいに、佐伯先輩とデートするのね――)
何だか恥ずかしく、嬉しくなる。周りの人達も、建物も、この世界も、はじめっから幸せに包まれていて、素晴らしいものなんだなと思えてくる。
「おーい、おーい、いけざわ~」と聞こえてきて、振り返ると、佐伯先輩が私を呼んでこちらに走ってきている。まだ待ち合わせ十五分前だ。
「佐伯先輩、おはようございます。早いですね!」
「何言ってんだ。池澤の方がずっと早いだろう」と先輩は言う。そして私にこう話し掛けてくる。
「池澤、いっつも待ち合わせに早いから、今日は僕も早く着こうと思って来てみたんだけど、……やっぱり早いな、池澤は。感心する」
「そんな事ないですよ」と言う私に「いや、凄い事だよ」と先輩は言ってくれた。私の取り柄の一つ。先輩が褒めてくれて、嬉しいな。
「じゃあ、夏祭りに繰り出すか、池澤」
「はい、先輩!」
私達は、夏祭りの喧騒の中、デートを存分に楽しんだ。午前中は出店巡りをして、お昼はランチを食べる。ランチは、商店街のカフェで食べた。今日のランチはパスタを食べ、デートに相応しい食事内容だ。午後は盆踊りを踊り、神輿担ぎを観賞して、その後は再び出店巡りをした。そして今日も、夕飯は昨日食べた食堂で、ラーメンを食べた。今日は五目中華を頼み、海老などの海産物や野菜、細かく刻まれた豚肉などがとても良いアクセントを生んでいて、凄く美味しかった。
先輩とのデートはあっという間に過ぎて、楽しい時間はあと少しとなった。二日目の夏祭りは午後八時に終わり、その後、先輩と私は家に帰る。佐伯先輩に告白して、付き合える様になった。でも、今日はもう少し一緒に居たいな。
夜の街を歩いていると、先輩が何か言いたそうに、顔をこちらに向けている。
「池澤、告白してくれて、夏祭り一緒に居てくれて。ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
先輩は「お礼と言っちゃなんだけれど」と何か言いたそうだが、なかなか切り出せないでいる。
「キュルー!キュルキュル―!」
その時、キュリルが何か、鳴く。キュリルは、何か魔法の様なものを、先輩に掛けた気がした。先輩は、意を決した様に喋り出す。
「――今年の八月に、流星群、大量の流れ星が地球に降り注ぐ時があるんだ。ペルセウス座流星群っていうんだけれど、それが八月の十三日未明に極大を迎える……流星がたくさん降り注ぐんだ。その日は月の月齢も四で、特に日本はとても観測条件が良いんだ。晴れていれば、たくさんの流星が見えるだろう。ペルセウス座流星群は、十二日日没後も観測に適しているんだ。だから、八月の十二日、日没後に池澤とペルセウス座流星群を観たいんだ……夜の時間帯だから心配かけるけど、いいかな、池澤?」
先輩からの願ってもない申し出。言うのを躊躇ったのは、夜の時間帯に私と会う事になるからだろう。中学生の頃にも先輩とは、夜に夏の大三角形を見る為に会っている。佐伯先輩となら、大丈夫だろう。勿論、行きたい。
「分かりました。八月十二日にペルセウス座流星群を一緒に見に行きます。佐伯先輩」
「ありがとう、池澤」
私と先輩は約束をした。来月の事だけれど、夏休み中、佐伯先輩に会って、一緒に流星を観る……凄く、素敵だ。
「じゃあ、池澤、今日はこの辺で。すごく楽しかったよ。またな」
「はい、私も凄く楽しかったです。ありがとうございます、先輩!」
私と先輩は、それぞれ帰路に着いた。今日の夏祭りも、凄く楽しかった。佐伯先輩と付き合っているんだ、という事が、本当に嬉しい。私は、幸せ者だな。
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