机上の幸福

僕は幸せになりたかった

誰かを幸せにしたかった

誰もが出来るはずの事が出来なくたって

それだけは出来るんじゃないかって思ってた


何も出来なかったけどね

好きだった人を沢山傷つけて

それでも自分の幸福に縋って

結局僕の幸福は誰かの不幸だった


なりたい人間はこんなんじゃなかった

誰にも好かれて困っている人を助けるような

赤いマフラーを巻いたあの子のように

優しいヒーローになりたかった


もう無理だけどな

大人になって気付いた

僕は欠陥品以上の欠陥品だった

人の心なんてもう分からない


「そういうこと言うなって」

誰かはそう言うかもしれない

もう自己否定はするのをやめた

でもそれは事実だから仕方がない


僕は幸せになりたかった

誰かを幸せにさせたかった

きっともう僕が夢見た幸せなんてもう来ない

だからそれは今朝のゴミ袋に入れたはずだ


なのにどうしてまだいるんだよ

もう僕にはできっこないよ

こんなに沢山の人を傷付けて

そもそも幸福を望む権利なんかないんだ


「助けて」も言えない人生で

そもそもそんな奴が手に出来る幸福なんてあるか

この世はフィクションなんかじゃない

そんな体のいい幸せなんてやってこない


「人生どこで間違えた」なんてもう言わないぜ

だって最初から間違っていたんだもの

こんな家庭に生まれて、いつも誰かと比べられて

そうして今は他人と自分の不幸を比べてる


それだから僕はずっと机上の幸福を書いていた

もうやってこない夢のような幸せを描いてた

それももう書けなくなった

幸せが何なのか分からなくなったから


こんな奴はさっさと死んでしまった方がいい

そういう思考がまた蔓延って

そう考えたってなんも良いことなんかない

それは分かってる、分かってるんだ


けど「朝には死んでればいいのに」って思うんだ

希死念慮はいつだって人に嗤われる

つまり僕はこれからもずっと嗤われる人間なんだ

だからもう誰を信じれば良いのか分からない


机上の幸福

造花のはずなのに枯れた幸福

幸福を描けなくなったらもう用無しだな

こんな人間さっさと死んでしまえ

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