第5話

 〈 43番目の地球 〉


するとベイは…嬉しそうに頷きながら…

「匠さん、女将さん…いよいよ作戦実行と行きますか?」と声をかけた。


女将は…

「はい了解しました。

でわ皆さん、

下のブリッジの方に来て

頂けますでしょうか」


12名は元気よく返事をしながら…

エレベーターに乗り…

ブリッジに向かった。


ニーナが…

「お兄ちゃん、なんだか胸が

ドキドキするわね」

「そうだね…」

と、トムが言い終わる間に、

エレベーターの扉が開いた。


ブリッジの大きな窓の外には…

左手に地球、右手には月が見える…

そして、デッキ中央部には、

既に会議用の

テーブルと椅子が並び……

そして、その横に…


女将と匠が照れ臭そうな顔で…

しれっと立って居た。


ベイを筆頭に全員が…

「えっ?マジで…」と言う声をもらした。


すると、女将がゆっくりとした口調で…

「あの…こんな時なんですけど…

私達…こんな身体に成りました。

全て、人工的な皮膚、何ですけど…

似合ってますか?」

と聞いてきた。


正直言って全員が驚いた。

当然ベイも含めてである。


しかし…エイリアンの事に比べたら…

とっても嬉しい驚きだったので、

皆んなは叫びたい気持ちを

グッと押さえて。


「とっても素敵です」

「お似合いですよ」

「嬉しい、現実なんですね」

「これからズッと一緒に居れますね」

と口々に言いながら、

順番に、女将と匠に…握手をしに行った。


女将は、匠の心の中に…


「このタイミングで正解だったわね、

私達のこの身体…

皆さん受け入れて下さったわね…」

「良かったね、気持ち悪い、

なんて言われなくて…」

「皆さん、心が広いから大丈夫よって…

私が言った通りでしょ」

「女将の言う通りだったね…」


と言うような、

AIならではの会話を…

こっそりとしていた。


その後…女将はベイに向かい

凛とした声で…

「匠と話し合ったのですが、

この場所に待機していれば…

異星人の動きが、

手に取るように分かります。

奴らが動き出すまであと4時間と18分…


今…スカイシップに透明シールドを

張りました。


ちなみに今回…

匠が作りましたシールドは、

更に進化を遂げました。


現在のスカイシップは、

どんなモノに攻撃されても全て、

かわせます、つまり…

名実共に、本当に透明であり、

幽霊船的なモノになって居ます」

と言った。


ベイをのぞいた11名は…

驚きのあまり声が出ない。


しかし女将は、皆んなの驚きをよそに、

ホタル達にむけての、指令も出した…


「全てのホタルに伝えます、

通常通りの任務を遂行して下さい…

もし担当対象者が、

命の危険にさらされた時は、

速やかに対象者の細胞を摂取し、

その場所から離脱して下さい。


もし離脱不可能だと判断した時には、

その場で待機、

匠が0.1秒以内に貴方達を…

スカイシップに瞬間移動させます。

貴方達の後ろには、常にパパとママが居る事を忘れないでね!」

と言った。


世界中で…任務に就いている200億匹の

ホタル達は、女将の言葉に

いっせいに羽を広げ…

満面の笑みを浮かべた。


ブラウン一家を除いた8人は…

(あぁ…きっとホタル達が喜んでいるんだろうなぁ…)と思ったが…


ブラウン家の4人は…

(誰かいるの?…女将さんの独り言じゃないよね)と思った。


ニーナは首を傾げながら…

リンダの手をにぎり…

「リンダ先生、ホタルって何ですか?」

と尋ねた、リンダは…

「えっ…」と言いながら、

ベイに視線を向けた、

するとベイが微笑みながら…


「トップシークレット何だけどね…

そうだなぁ〜…

いざ言う時に、皆んなの事を守ってくれる

妖精の事を…

別名、ホタルって言う

名前にしたんだよ、

可愛い呼び方でしょ…」

と言った。


するとニーナは、守ってくれる、

と言う言葉が胸に刺さったようで…

「はい、分かりました、

ありがとうございました」

と返事をしてくれた。


横に居る、ブラウンとレイチェルとトムも…

(…おぉ〜守ってくれる妖精の名前なんだ…)と思って、

大いに納得して微笑んでいる。


まさか「四人の肩にも、二匹のホタルが居るんですよ」何て言えないので、

納得してくれた四人に対して…

(細かい事を、気にしない性格の人って、

本当に有り難いなぁ…)と思いながら、

8人は(ホッ…)と…胸を撫で下ろした。


時を同じくして月面基地…

天文台に勤務する、

各国の博士と、職員達は、

70万キロ離れた場所にとどまって居る、

未確認物体に度肝を抜かれていた。


博士達は、震えながらマイクを握りしめ…

「首相に、急いで…報告したい事が…」

「大統領につないでくれ…」

「国王につないで欲しい…」

国によって呼び方は違うが、


要するに国のトップに一刻も早く

知らせる事が、

自分の出来うる最善の事だと

思ったようである。


報告を受けた各国のトップ達は、

会議中の人もいれば、

ゴルフの真っ最中の人も居る。


各地を視察中のトップもいれば、

パーティーの真っ只中のトップも居た。


しかし報告を受けた彼等は…

一応に驚き、慌てふためき…

大統領(首相、国王)は直ぐに、

国の代表者を招集して…

会議を開いた。


そして…1時間後……

世界中の代表者達が集う、

世界最高会議を開く…

と言う事になった。


本来なら世界中の代表者達が、

一堂に会する場所がアメリカには

在るのだが…

余りにも急な事で、

全ての代表者が集まれる訳もなく…


急遽集まれたのは…

12ヵ国の代表者のみで、

その他の国の代表者達は、

衛星中継で会議に参加すると

言う形になった。


議長国であるアメリカは、

陸海空軍のトップの精鋭幹部は当然の

事ながら、

国中の科学者、天文学者、宗教学者、

生物学者、そして…

NASAの幹部をも招集していた。


そして今…世界最高会議の席上…

アメリカの大統領は…

大きく息を吸った後に…

マイクを握った。


大統領の第一声は…

「…世界中が今よりも更に、

協力し合って乗り越えなければならない…

局面がやってまいりました。

月面基地からの報告では…

巨大な未確認物体が…

月の後方…70万キロの場所に、

居るそうです。

この映像を観て下さい…」


NASAが、月面基地からリアルタイムで撮影されている映像を、

会議室の中のスクリーンに

映し出してくれた。


会議室に集められた、

アメリカの選りすぐりの人材300名と、

12ヵ国の代表、120名が…

いっせいに頭を抱え…

そして心の中で…


(…現実なんだよな…

こんな日が本当に来るなんて…)

と思っていた。


この様子は、スカイシップの中でも

リアルタイムに流れている、

当然である…


会議室の中に入っている全員の肩に、

840匹のホタル達が着いて居るのだ、

色々なアングルの映像が入って来る、

会議室の外からの映像も…

とにかく何でも見る事が出来た。


ベイはメリーの肩を抱き寄せながら…

「さて…どのタイミングで

世界中の空軍の方達に協力要請するか…

だよねぇ…

困ったねぇ、知り合いなんて

誰もいないしねぇ…」


するとジョニーが…

「あのベイ博士、三年ほど前に、

僕とアンジーが担当していたラジオ番組で、

空軍の方にインタビューさせて

貰った事があるですけど、

えっ〜とリチャード…」


その先が思い出せないのか…

アンジーの顔を見た。


アンジーはジョニーの期待に応える為に…

「…えっ〜とリチャード…あっ、リチャードスミスさん」


「さすがアンジー記憶力がいいね」

ジョニーは嬉しそうに、

アンジーの肩を抱き寄せた。


次の瞬間、女将が…


「ベイ博士、リチャードスミスさんの

プロフィールを紹介します…」

そう言って、

2分間でスミス氏の生まれた時から

現在までを語ってくれた。


ジョニーとアンジーが当時聞き出すことが

出来なかった事まで、

全て含まれている。


其れによると、

とにかくリチャードスミス氏は、

真面目な人である、

子供の頃から正義感が強く、

困っている人には手を差し伸べる…

いじめらて居る友人がいれば、

多勢に無勢であっても、頭から突っ込んでいくような人である。


ベイは…

(ボブによく似て居るなぁ…今回の事が終わったら友達になりたいなぁ…)

と思った。


その時、匠から、1つの重大な

発表があった…

「ベイ博士、申し訳ありません!

奴等の母船(球体)は1つではない事が、

今わかりました、

あと二機!…人工的球体惑星が地球に

向かって来ています」


「えっ?同じ大きさのが二機?」

「はい…今しがた銀河系の中に

入って来ました、

既にこちらに向かっています、

球体どうしの交信を傍受しました」


「同じ種族の者達ですか?」

と言うベイの問いかけに、

今度は女将が…


「奴らは1つの種族ですが、

3人のリーダーの元に、

それぞれが派閥を作っているようです、

3人は同等の力を持っています…」


ベイは少し考えてから…

「3人は仲が良いのですか?」


すると女将は「いえ、悪いようです」

と即答した。


ベイは笑顔で…

「いい事です…でも…何でだろう…?…

1つの球体からでも凄いパワーを感じるんだけど…何で3つの球体が…

揃って地球に来るんだろう?」


すると女将は、

「ベイ博士、今現在も…奴らの会話を聞いていますが…どうやら地球には、

食糧の調達と言うよりも…

狩をしに来たようです、

どの球体のリーダーが、一番多く食料を調達出来るのか、奴等にとって…

今回の地球訪問は…

たんなるゲームのようです」


「なるほど…彼等はゲームの為に、

今まで沢山の星を侵略、殺戮、

そして、破壊を繰り返して来たんですね」


「はい、その通りです…

今まで3つの球体は、

42の星を食いつぶして来ました」


ベイは小さく頷いた後に、

皆んなの顔を見回しながら…

「奴等にとっての地球は…43番目のゲームの舞台なんだね、ムカつくねぇ…」


と言ってベイはそっと目を閉じた…

そしてスッと目を開くと

満面の笑みを浮かべながら


「奴らを倒すことに、

何のためらいも無くなったよ。


1つは、地球を守るため、

2つ目は、42の星の方達の敵討ち…

うん、最高の大義名分が出来たね…

さてと皆んな、

まだ少し時間があるから、

自分達の部屋で休憩しようよ」


そう言ってメリーの手をとり、

立ち上がった。

ブラウン一家の四人も、

緊迫した状況から解放されると思ったのか、少しホッとしたような表情で…


「はい、分かりました」

そう言って…

自分達のホテルが設置されている、

屋上デッキの方に戻って行った。


4人がブリッジから居なくなると、

ベイは…

「…すまないけど、皆んな、もう一度座ってもらえるかな…

作戦会議の…続きを開きたいんだ、

まさか子供の前で、

復讐だとか、絶滅なんて言う言葉は

使えないからね」

そう言って微笑んだ。


ボブ達6人は…顔を見合わせながら

ソファーに腰を下ろすと、

神妙な顔つきで、ベイを見つめた。


「僕が…常々言っている復讐の

件なんだけど…いよいよ、

最終段階に入って来たんだ」

と言うベイの言葉に、

6人は思わず…

「オォッ〜…」と言う声を上げたが、


心の中で…

(宇宙のはてから侵略者が来るって

言う時に……

なぜ、このタイミングで復讐なんだろう…)

と思った。


ベイは、そんな皆んなの思いをよそに…

「女将さんと匠さんが、慎重に調べてくれた事をまとめると、

僕は今まで、国の最高責任者が…

僕達を殺したと思っていたんだ…

けど、違って居たみたいなんだ、

トップは何も知らされて居ない。

じゃあ誰なのか?…


今現在、アメリカ合衆国の…

No3、あたりのポジションを

獲得している…

Yと言う人物なんだ…


いずれトップを引きずり下ろして、

自分が上に上がる為に、

有能な化学者(科学者)達を、

国の税金を使って、

うまく手なずけて居たんだ…

まぁよくある話だよね。


でもさぁ〜少し…

ホッとしたよ、

だってさ、国のトップ(大統領)は選挙で決めるわけじゃない…


その人が、

アイツを殺せ、

なんて言う指示を出すなんて…

思いたくないもんね…

そう言った意味でホッとしたんだよ…

皆んなが選んだ人が、

いい人で良かったよ。


さあ…そこで、いよいよ黒幕を退治しようかと思っているんだけど、

皆んな…心の準備はいいかな?」


6人は(そうだったのか…)と思いながら、真剣な表情で、親指を力強く立てた。


ベイは嬉しそうな顔で…

「昔から…僕のワガママな考え方に…

何だか…皆んなを巻き込んでいるような気がしてさ、本当にごめんね」


するとジョニーは即座に

「ワガママだなんて思っていません。

でも、ベイ博士が

ワガママだと言われるなら…

僕達はそのワガママのお陰で…

今、とっても幸せです」


そう言ってアンジーの肩を抱き寄せた。


すると、ボブもリンダを…

グレイもルーシーを抱き寄せた。


ベイは「ありがとう…皆んな大好きだよ…

…では次に、今から女将さんに、

今後のエイリアンの、行動予測を教えて頂きます…女将さん、宜しくお願いします…」


「はい、皆さん此方をご覧ください…」

女将は皆んなの目の前に、地球と月のホログラムを出した。


「…皆さん、まず奴等の球体は…色が違います。今現在、月の裏側後方にいる球体は黒で、

次に地球に来る球体は白、

そして最後に来る球体は、銀色です。


奴等は始めに、地球を囲むように

待機します。

その後に、各球体から、6機のレンガのような形をした航空母艦が合計18機…

アメリカ、

ブラジル、

オーストラリア、

ロシア、

中国、

アフリカの上空に待機し…


まず地上に、どれだけの生命反応があるかを調べます、

全てではありませんよ、50cm以上の生き物です……

その調査は約一時間ほどで終了します…

その後に、球体に乗っている三人のリーダーがゲームスタートの合図を出します。


すると各航空母艦から100機の武装した

捕獲機が飛び出します…

その後に殺戮が繰り返され、

地球は、宗教絵で描かれているような、

地獄絵図のように成ります」


ベイは小さく頷きながら……

「ありがとうございます女将さん…

とても分かりやすい説明でした」


〈 作戦 〉


ベイは皆んなの顔を見回した後に

「…よし…シンプルな作戦で行こう」

と呟いた。


皆んながキョトンとした顔をしていると


「あのね…匠さんにお願いして、

まず僕達を奴等の球体の中に、

瞬間移動させて貰って……

球体の中心部に爆弾を仕掛けるんだ、

シンプルだけど一番効果的な方法だと

思うんだ、皆んな、どう思う…」


「いいと思います、やりましょうベイ博士」と最初に声を上げたのはグレイである。


ジョニーもボブも満面の笑みを浮かべながら親指を立てている…


するとリンダが

「ベイ博士、空軍の方達はどうやって動いてもらうんですか?」と質問した、


ベイは…

「うん、実はその事なんだけど…

直接僕らが……

アメリカ大統領がいる

会議室に押し掛けて、直談判をするか……

女将さん…

リチャードスミスさんにコンタクトを取り…大統領に、空軍を動かして貰うように

頼む事は可能ですか?」

と尋ねた。


すると女将は…

「残念ながら彼は、直接大統領に会える

階級の方ではありません」


「なるほど…」


そこから8人は、

あーでもない、こーでもない、

と言う話し合いに、

2時間もかけてしまう事になる。


その時である、女将から…


「ベイ博士、お取り込み中…すみません。

たった今、

黒い球体から、6機の航空母艦が

出発しました…

おそらく、

少しでも、自分達が有利に動けるように、

生命反応の数を

先に調べておきたいのでしょう、

どうしましょうか?

撃ち落とす事は可能ですが…」

ベイは目を見開き…

3秒ほど固まった後に…


「いま航空母艦を撃ち落とすと、

3機の球体が一斉に警戒して…

地球を囲むと思うんです。


今は航空母艦の動きを見ましょう、

たぶん、まだ命を奪う様な事は…

無いと思うんですけど…」


そう言っている時に…

6機の航空母艦が…

スカイシップの前を通過して行った。


大きさは…女将から聞いては居たが…

実際に目の前を通過している光景を見ると、


縦が800m、横が2000m、

長さが4400mの

航空母艦は…


「なんだか不気味で…怖いわね…」

そうルーシーに言わせるには…

十分過ぎるぐらいの大きさだった。


そのセリフを聴いた匠が、

とても愉快そうな声で


「ルーシー様、大丈夫ですよ、

観て下さい、

奴等はたった今、

大気圏内に入って行きました。

これで奴等のシールドは使い物に

成りません……うっふふふ…」

と笑いながら、親指を立ててくれた。


ルーシーも満面の笑みを浮かべ……

「匠さん、ありがとうございます、

なんだか、ユカイな気持ちに成って

来ました」

そう言って親指を立て返した。


その後、航空母艦は予定通りに、

アメリカ、

ブラジル、

オーストラリア、

ロシア、

中国、

アフリカの上空に向かって

進んで行った。


地球上は当然の如く、大騒ぎである。

メディアはカメラを航空母艦に向け…

アナウンサーは…


「地球はどうなるのでしょうか?」

と声を荒げ…


マスコミはホワイトハウスを取り囲み…

「大統領、どのような手を

打たれるのですか…大統領、大統領…」

と叫び続けた。


残って居る職員達は、

報道陣の前に行くと…

「大統領は最高会議に出席されて居ます…

ホワイトハウスにはおられません」

と言ったが、

報道陣は納得してくれない、


マイクを無遠慮に職員に向けて…


「何で、ホワイトハウスの中で会議を開かないんですか?」


「それは…もし不測の事態に陥った時の事を考えて…」


「御自分達だけ、安全な場所に居ると言う事ですね」


「いえ、そう言う意味ではありません…」

マスコミは…

職員の言葉尻を捕まえながら…

絶叫し続けた。


しかし本当に絶叫したいのは、

世界中のトップの人達である…

怖くて身体の震えが止まらないのだ。


「…どうすればいいんだ…

国と国の…政治的な問題とは…

訳が違う…

言葉も通じ無いだろうし…

我々の想像を

はるかに超え過ぎて居る…」


誰もがそう言って頭を抱え込み…

国のトップでありながら、

逃げ出したい気持ちに成っていた。


しかし、何処にも逃げ場所が無いのだ。

臆病な自分の心を

国民に悟られてはいけない、

そんな事を思いながら

各国の代表者達は、

指導者の威厳を保つ為に…

自身の恐怖のホコ先を…


議長国アメリカ大統領に向ける事にした。


(…さぁ…世界のリーダーなんだろ…

強いアメリカを

見せて貰おうじゃないか…)


そう思いながら、

厳しい質問をアメリカ大統領にぶつけて

いった。


その結果…

アメリカ大統領は世界中に向けて、

原稿の無い、自分自身の言葉で…

メッセージを送ら無ければならなくなった。

大統領はマイクを持ち…

カメラの前に立った。


内心は(…なんで…俺が大統領の時に、

こんな事が起きるんだよ…)

と思って居た…


大統領の声が若干…

震えているように聞こえる…

「いま現在…最高会議で…未確認飛行物体がどのような目的で…地球に来たのか…

確認しているところです…


世界中の皆さん、

安全な場所に避難して下さい、

決っして外に出ないようにして下さい…

政府が…

必ず皆さんを守ります…

また新たな情報が入り次第…

ご報告します…」


そう言ってメッセージを終えた。


実質的な非常事態宣言である。


世界各国の代表者達は…

(自分が議長国でなくて…本当に

良かった…)

と胸をなでおろしていた。


その時、会議に参加している

アメリカの科学者達から、

未確認飛行物体とコンタクトを取るべきだ、と言う意見が出された…

大統領は……


「誰が取るんだ、かなりのリスクが伴うんじゃないのか」

と言うと…


ここでベイ達を死に追いやった、

黒幕の…Yが、

しゃしゃり出て来た。


スカイシップの中で女将が…

「皆さん、注目して下さい、

13人の科学者と、Yが、出て来ました…

皆さんを、死に追いやった敵です!」

と叫んだ。

8人は鋭い視線を向けた。


会議室で13人の科学者達は、

自分達が今まで研究し、

集めたデータを…

軍のヘリコプターか、ジェット機に搭載し、

未確認飛行物体に、

我々は敵では無い、

と言うメッセージを送ろうと主張した。


スカイシップの中で

そのセリフ聞いたベイは、

思わず笑い出してしまった。


7人は……

(えっ?今のは笑うところなの?)

と思ったが…

メリーの微笑む顔を見て…

リンダもとっさに微笑んだ、

するとアンジーとルーシーもすかさず笑顔を浮かべた。


ボブとジョニーとグレイも…

(ヤバイ…何が可笑しいのか

分からないけど、

とりあえず笑わないと…)

と思って満面の笑みを浮かべている。


女将と匠は、そんな7人の健気さを見て

必死に笑いをこらえている…


すると優しいフリー達が、

自分の主人の耳元で…

「…アンジー様、ベイ博士が

笑い出した理由は…

例えば漁師が、沢山の魚を捕ろうと

魚群探知機で海底の様子を見て

居たとします、

その時に、1匹の小さな魚が海面に出て来て、背びれや尾びれをピチピチしてたら、

漁師は、どうすると思いますか?」


「えっ?捕るんじゃない」

「そうです! 魚の言葉は人間には

分かりません。


ベイ博士は、なんて意味の無い、

無謀な事をするんだろう、

と言う思いで、

笑い出してしまったんです」


「あー、なるほど、ありがとう

フリー・アー」

「どう致しまして」

7人は自分のフリー達から答えを

聞かせてもらい

(…本当にフリーの存在は

ありがたいなぁ〜)

と心の底から…そう思った。


会議室の中でYは、

大統領に向かって…


「大統領、今はとりあえず、

思いついた事を実行した方が良いと

思います」


「しかし…」


「どんな事にも犠牲はつきものです、

我がアメリカの空軍に、

臆病者はおりません、やってみましょう」


「…わかった…そのかわり、

危険だと判断した時…その場から

少しでも早く離脱出来る乗り物を…

選んで上げてほしい…」


「分かりました」

Yは、無表情のまま…

空軍の指揮官に視線を送り

(実行しろ)と言う意味で…小さく頷いた。


この事を

スカイシップの中で見ていたベイは…

「匠さん、もしこの作戦がダメな時には…

乗組員の方達を救助して頂けますか?」

「お安い御用です」

そう言って微笑んだ後に…


「ベイ博士…たった今、

メッセージを送る乗組員が分かりました…

隊長は、先程ジョニーさんとアンジーさんが言っておられた…

リチャードスミスさんです」


皆んなが(えっ)と言うような

顔をしていると、

ジョニーは思わず顔を曇らせ…

「マジかぁ〜」と悲壮な声を漏らした。


どの国の民衆も…

空に漂う航空母艦を見上げて大騒ぎである。

誰もが…

「何で…あんなレンガみたいな物が…

地球に来たんだろう…

戦う事に成ったら…

勝ち目は…無いよな…」

そう呟いていた。


アメリカに来た航空母艦は、

ニューヨークの上空1000mの位置に待機して居た。


そして、10分後…

いきなり100機の未確認飛行物体が

飛び出して来た…

絶叫する市民を横目に、

奴等はさっそく生命体を調べ出した。


動物から人間まで…とにかく数を、

早く調べて置きたいのだ。

ただ奴等は…

頭が良いのか、悪いのか…

自由の女神をやたらと観察し…

〈とても大きな食べ物を見つけた…〉

と言って、航空母艦に連絡を

入れている。


ずっと盗聴している女将は、

思わず…

「貴方…奴等は…バカなのかしら…

それとも、仲間達に対して

笑いを取って居るのかしら」


匠は笑いながら…

「自由の女神像の中に居る、

観光客をスキャンして、

おっ〜、大きな生き物だぁ〜って

判断したんだろうね、

まっ奴等の…

科学力の限界を見せて貰ったような

感じだね…

でも油断は禁物だけどね…」と言った。


そんな時、

リチャードスミスが隊長をつとめる

ジェット機が、

レンガ形航空母艦の

斜め下に飛んで来た。


世界各国の代表者達は、

ジェット機の形を観て…

「んっ…」と言いながら、首を傾げた…

アメリカが…まだ世界に公開していない

ジェット機だからである。


大統領は…

(なぜ今アレを出すんだ…

我が国が誤解されるだろう…)

と思いながら、Yを睨み付けた。


しかしYは、逆に大統領を睨み返し…

(…ふん…お前の信用度を下げるつもりで

アレを選んだんだよ、失脚しろバーカ)

と思いながら…涼しい顔で…


「今、皆さんが見ているジェット機は、

まだ未公開のモノです、

ただ緊急事態ですので、

どうかご了承ください。


まだ名前も付けていませんが…

マッハ3で飛行できる偵察機です。

今から未確認飛行物体に

コンタクト取ります。


なお大統領の方から、危なくなった時に、

直ぐに逃れる乗り物、

と言う指示がありましたので、

今回…最新鋭の技術を搭載した

ジェット機にした!

と言う事を付け加えておきます」


そう言って、

大統領の視線を無視するような形で、

モニターに目を向けた。


大統領は歯ぎしりをしながら…

コブシを握ったが、

今は、どうする事も出来なかった。


ニューヨークのど真ん中…

その上空で行われている光景を、

マスコミが放っておくわけがない、

カメラは一斉に、

ジェット機と未確認飛行物体に

焦点を当てた。


リチャードスミスと言う生真面目な軍人は、科学者達から出された、

計画書通りの動きをしてくれた。


音を送ったり、光を送ったり、

それが正しいとか、間違っているとか、

それは分からない、

とにかく、与えられた任務が正しいと

信じるしか無いのだ。


しかし、言われた事を順番にしてはみたが、一向にらちがあかない…


その時、

科学者の方から直接スミス氏に指示が

出された

「スミス君、彼等は気づいてないの

かも知れない…

彼等の周りを飛び回って見て

もらえないかな?」


スミスは…

「了解しました」と言った後に…

すぐさま部下の顔を見て…


「全員脱出準備」と叫んだ。


9名の部下は「えっ?」

と言いながら隊長の顔を見た、スミスは厳しい形相で…


「この作戦はきっと間違っていると思う…

10人で死ぬ事はない…俺だけでいい」


そう言って、脱出用のスイッチを

入れようとした、その時


「隊長、待って下さい、なぜ失敗だと思うんですか?」


「アイツらは、コチラの問いかけに一切答えない…俺達は、アイツらに、

相手にもして貰えないんだよ、

地球の科学力じゃ…勝てないんだよ、

早く脱出しろ!」


「隊長、一緒に行きます」


「何を言ってるんだ?」


「…きっとマスコミのカメラが回ってます、

今脱出すると、女房、子供が世間から責められます…隊長、連れて行って下さい」


隊員の言葉に、

スミスは息をのんだ


(なんて事だ、死ぬ選択しかないのか…)

と思った…

「わかった…奴等の上に行くぞ」

ジェット機は一気に上昇し…

航空母艦の上を飛び回った。


会議室の中ではその状況を…

科学者達が腕組みをしながら、

偉そうな態度で見ている。


スカイシップの中では…

メリーがベイの腕にしがみ付きながら…


「スミスさん達は、死ぬ覚悟で

飛んでいるのね」

「そうだね、国の為に、家族の為に、

そして自分自信の名誉の為に…

本当に素晴らしい方達だよね

…奴等の上を飛び回って入れば、

攻撃されても、ニューヨークの街に被害が及ばないもんね…」


そう言っている時、

奴等は…ジェット機が鬱陶しくなったのか、

3機の偵察機が攻撃を仕掛けて来た。


しかしマッハ3のジェット機の実力は

凄かった、

航空母艦の上空だけを飛び回るので、

マッハ3のスピードは出せないが、

随時マッハ1、3のスピードで、

航空母艦と偵察機からの攻撃を

全てかわしていた。


リチャードスミスは科学者達に…

「こちらからも攻撃をしたいのですが」

と言った、

しかし、科学者達は首を縦に振らない、

それどころか…

Yがマイクを握り…


「君達が攻撃して、もしも後で

彼等と国交を結べたらどうするつもりだ…

攻撃はダメだ、逃げ回っていればいいんだ」そう言って無線を切った。


すると横から大統領が…

「バカな事を言うな‼︎

彼等は軍人ではあるが、1人の人間として

家族がいるんだぞ!…

誰か無線をつないでくれ」


すぐさま対応したのはNASAの

メンバーである


「大統領、今コチラの方から繋ぎました、

どうぞ…」


「ありがとう…リチャードスミス君

聞こえるか?」


「はい大統領、聞こえて居ます」


「作戦は失敗だと思う、すまない事をした。直ぐにその場から逃げてくれ、

アリガトウもう十分だ!」


「はい、大統領。この空域から

離脱します…」

と言って無線を切った。


スミスは

「皆んな、大統領からの命令だ、

腰抜けとバカにされる事はない、

家に帰るぞ」

と言ったが…少し遅かった。


航空母艦から100発以上の迎撃ミサイルが発射された。


スミス達のジェット機は必死に逃げたが…

6秒後…迎撃ミサイルに挟み撃ちに合うような形で……高度1200mの辺りで…

大破した。


その様子を……

最高会議室の人達だけではなく、

マスメディアのカメラを通じて、

世界中人達が目撃する事になる。


ベイはメリーの顔を見ながら……


〈 リチャード・スミス 〉


「爆破されちゃたね…

本当に野蛮な奴等だね…」

メリーは怖かったのか、

ベイの胸にギュッと抱き着いた。


ベイは、メリーの背中をさすりながら

「大丈夫だよメリー、大丈夫。

匠さん瞬間移動は…」

「はい、余裕で間に合いました」


そう言い終わった時、

デッキの中央部の床に、

20匹のホタル達が立っていた。


女将は微笑みながら

「…ご苦労様、怖かったでしょ…」

と声をかけた、

するとリチャード・ホタルが

「〈男〉ちっとも怖くありません…」「〈女〉いつも匠様と女将様が見て下さって居ますから」


そう言って頭を下げながら、

肉片をソッと床に置いた。


匠は天井から、

10本のアームをニョロニョロと出すと、

10人の肉片に光りを放った。


フンワリと肉片が光り出した…

次の瞬間…

ムクムクムクっと…

10名がその場に現れた。


9名は膝を抱えて座っていたが…

リチャードスミスだけは目を閉じて…

立っていた。


ジョニーはアンジーと手を繋いで…

10名の前に向かった。

2人の足音に…

敏感に反応したリチャードスミスは…

ゆっくりと目を開けた…


(男女2人がこっちに来る…)


彼は一瞬身構えようとしたが、

見覚えのある2人に…

思わず笑みを浮かべた。


ジョニーは小さく会釈をしながら…

「あのリチャードさん、私達の事を

覚えて…」

そう言った時だった…


座っていた副隊長のエッジがいきなり

銃を構え…


「動くな…」と言いながら立ち上がると…

「隊長、此処は何処ですか?

私達は生きているんですか!」

と叫ぶ彼の足は…

小さく震えていた。


リチャードは低い声で…

「エッジ落ち着け、ここが何処なのか、

私にも分からない、

でもここに居られる方達は

敵ではない…」


そう言って他の部下達にも視線を向けた。


そして…

「…確か……ジョニーさんと

アンジーさんでしたよね?」

ジョニーは微笑みながら…

「嬉しいです、私達の名前を覚えていて

もらって…

あの〜、皆さん…かなり困惑していると思いますので、

今の、この状況を説明させてもらいますね」と言って微笑んだ。


まず自分達8人が誰なのか、どのように生きてきたのか…

理不尽に暗殺された事、

ベイ博士の科学力の事、

スカイシップの事、

女将さんと匠さんの事、

復讐の事、

今回のドサクサに紛れて、

政界のYが、

実権を握ろうとしている事…

未確認生物の事


そして今、

10名が生き返ると言う、

不可思議な事を…

ジョニーとアンジーは

ピッタリ10分間で話をまとめてくれた。


リチャードスミスは…

大きく息を吸った後に

部下の顔を見つめ

「…俺は、今の話を全て信じる…

君達はどうだ…?」

と、部下に問いかけた。


すると9名は…

「私も信じます…」

「俺も信じます…」

そう言って、次々に賛同してくれた。


リチャードスミスは、ベイの顔を見ながら…

「助けて頂き、

本当にありがとうございました、

私達は、

博士のおっしゃる通りに…

動きますので、何なりと

言いつけて下さい…」

と言ってくれた。


メリーはベイの耳元で…

「理解して貰えて、本当に良かったわね…」


「これでエイリアンの退治も出来るし…

僕達の復讐も、成就する事が出来るよ、

さてと…最高会議室に乗り込もうかな」

そう言った後に…


「フリー・ベー…

ジョニーとアンジーに、

君達のおかげで

物事がスムーズに進んだよアリガトウ、

って伝えて」と言った。


フリーは微笑みながら…

「かしこまりましたベイ博士…」

そう言って…

ジョニーとアンジーの耳元に飛んで行った。


2人が恐縮しながらベイに視線を向けると…

ベイは深々と頭を下げた。


アンジーはジョニーの耳元で…

「ベイ博士はちっとも変わらない、

私達が何かを手伝うと…

必ず頭を下げてくれるの…

私達の方が…頭を下げたい事が

イッパイあるのに…」


「ベイ博士は、偉くなっても威張らない、

そう言った素敵おこないは…

僕達もドンドン真似をしようよ…」

そう言って微笑んだ。


世界最高会議は大混乱した状態で

収拾がつかない。

10分ほど前にジェット機が

堕とされたのだ…

当然と言えば当然である。


衛星中継先の各国のトップ達〈首相、国王、大統領、大臣〉から

「とにかく、何らかの対処をせねば、

国民が納得しない、

大統領、どうすればいいんですか?」


この大統領と言うのは、

アメリカ合衆国の大統領の事である。


大統領は13名の科学者に視線を向けた、

しかし…

彼等にしても、

未確認生物の事は何も解らないので、

憶測と推測で物事を言う事しか出来ない、

なんとも歯切れの悪そうな感じで

「…えっ〜、我々としましても、

まずデーターを集め…分析をしませんと、

その為には…」


早い話が、何が何だか…今は解らないと

言っているのだ。


アメリカ大統領は拳を握りしめながら

(…世界トップクラスの科学者が…

今ごろ何を言ってるんだ!

この期に及んでデーターが足りないって…

日頃なにを研究しているんだ!

年間どれだけ君達に

莫大な費用を回しているのか、

分かった上で言ってるんだろな…)


そう心の中で叫んでいる時に…

会議室の天井付近が

突然…パッと光った。


会議室の中に居る420名は…

(えっ?なに…)

と思いつつ…視線を上に向けた。


其処には18人の人影があり…

ゆっくりと降りて来るではないか。


420名の代表者達は絶句した…

当然Yも、13人の科学者達もである。


誰もが未確認生命体が入って来たと

思ったのだ。


ベイ達18人が…会議室の中央にゆっくりと…降りていくと、

その下に居た代表者達は、

這うような格好で、

その場から離れた。


そして…

18人は、大統領と向かい合うような

形で、床から2mの高さの空中に、

静止した…

その距離わずか5m。


ベイはリチャードスミスを…

大統領の前に進めた。


誰もが自分の目を疑った…

先程…ジェット機は粉々に爆破されたのに…

いま目の前に…

パイロット達が居るのだ。


大統領は半信半疑で…

「えっ〜?…リチャード君…君なのか?」


「はい、大統領」

そう言ってリチャードは敬礼をし…

後ろに居る9名の部下は、

45度…頭を下げた。


「えっ?どう言う事なのか…

説明してくれないか…」


「大統領、発言してもよろしいで

しょうか?」


大統領は小さく頷きながら…

「頼むよ…」と言った。


スミスはまず、

奴等のミサイルから逃げ切れず、

ジェット機を大破されてしまった

事を詫びた。


すると大統領は間髪入れず…

「ジェット機など、どうでもいい、

君達が生きて居る!

其れだけでいいんだ」

と言ってくれた。


スミスは小さく会釈をしながら…

「私達自身…死んだと思っていたのですが、気がつくと…

こちらに居られる、

ベイ博士が作られた、

スカイシップと言う乗り物の中に居ました。

ベイ博士の科学力は、

私には想像もつかないくらいに

凄いモノです。


大統領、ベイ博士は既に…

未確認生命体の事を全て

理解されています…

あの、

力を貸して欲しいと、

頼まれてみてはいかがでしょうか?」

大統領はジッとベイの顔を見つめた…


すると横から、真っ赤な顔をしたYが…

声を荒げて怒鳴り出した…


「お前は、何をくだらない事を言って

居るんだ、

ベイ博士なんて聞いた事もないぞ、

何処の大学を出て、

何処の研究室に所属してるんだ、

だいたいなんだ、

真っ黒な服を着て、

何のコスプレだ!

ふざけた奴等が最高会議室の中に

居る事自体がおかしいんだ、

おい誰か、コイツらをつまみ出せ」

そう言ってベイ達を睨みつけた。


すると横から大統領が…

「ユーリ(Y)議員、すまないが、

君が黙ってくれないか!」


「何を言ってるんですか大統領、

私はアメリカ合衆国の為に

言っているんです」


「わかった、でも今は少し黙って

いてくれないか」


「何も分かっていない!」

ユーリは絶叫しながら右手を上げた、


すると会議室の中に居る420名の内、

94名が、銃を構えながら立ち上がった。


ユーリは不敵な笑みを浮かべながら…

「全員動くな!」

と言った。


大統領は慌てた口調で…


「気は確かかユーリ議員?

世界中の代表者が観ているんだぞ!」


「構わない!

大統領はさっきの衛星中継を聞いて

何とも思わないのか、

各国の政府は、

世界一強いアメリカをナメて

かかってるんだぞ…

今まで散々、

色々な手助けをしてやったのに、


何だ、あのモノの言い方は…

全て大統領のせいだ、

これからは対話の時代だと、

青臭い事を言ってるんじゃない!

力でねじ伏せればいいんだ!」


「やめないかユーリ議員、

我々アメリカは、

世界のリーダーシップを取るも、

独裁者に成ろうなどとは、

一度も思ってない、

だからこそ、

沢山の方達の意見を聞かなければ

いけないんだ」


「聞かなくていい!

放っておけばいいんだ…

小国は我々の言う事を、

素直に聞いていればいいんだ。

もし言う事を聞かなければ…」

と言った時に…


ベイが口をはさんだ…

「聞かない者は、殺すんですよね

ユーリ議員」


「何だと?誰だお前は?」

「貴方は知らなくても…

後ろにいる13人の博士達は、

私の事を…よく知っていると思いますよ」


ベイは科学者達に目を向け…


「恥ずかしく無いのか!

何で科学者が、銃を構えて立って居るんだ、

人を救う為の科学じゃなかったのか…」


そう言った次の瞬間である…


13人はベイに向かって

一斉に引き金を引いた。


大統領が…

「何をするんだ、やめないかー!」

と絶叫すると、

今度は4人の反乱分子が大統領に向かって

発泡した。


近くに居た8名のSPが、

慌てて身体を盾として

大統領を護るも…

大統領の身体には7発の銃弾が…

8名のSPにも10発前後の弾が当たって

しまった。


会議室の中の326名と、

衛星会議をしている各国の代表達は

絶句したが…


94人の反乱分子達は、

不敵な笑みを浮かべながら…

銃を構え直した。


ユーリは両手を広げ…

「今から俺が世界の代表だ…」

そう言った時だった。


撃たれたはずのベイが.

「冗談じゃない、

お前に、代表が務まるわけがないだろう。

だいたい今まで、

お前の指示で、何人の人を殺して

来たんだよ…」


ユーリを筆頭に…93人が自分の目を疑った(えっ?…奴には銃の弾が届いてない?

弾が…宙に浮いている?…)

ベイは更に…


「殺した数が多過ぎて分からないだろう、

何が世界のリーダーだよ、

大統領が居るんだ、

お前の出番なんて、有る訳がないだろう

バカじゃねえの…」


するとユーリは強がりながら…

「何を言ってるんだ、大統領は既に息耐えてるだろう」


そう言って居る時に…

ボブとリンダが大統領の所に、


ジョニーとアンジー、

グレイとルーシーは

8名のSPの所に向かおうとした…


するとユーリはもう一度…

「撃てー!」

と叫んだ…


93人は一斉に引き金を引いたが、

今度は、銃口から1mの空中で弾が

静止したのだ…

(えっ?…)

と思っていると…

次に…自分達の身体が動かなくなって来た…

ユーリは動けない恐怖の中で…

「何をした…クソ…俺達の身体に

何をした〜」

と叫んだが、

ベイはその質問には一切答えず、

ユーリ達に背を向けた。


ボブ達は大統領と8名のSPの前に行くと…

肩を軽く…ポンポンと叩いた、

リンダが…


「皆さん、急に撃たれて

ビックリしたでしょうけど…

弾は身体の中には入っていませんから…」

そう伝えると…


9人は目を見開き、

自分の身体を…

触りながら見回し…

そして……首を傾げた。


大統領が…

「本当だ血が出ていない」と言うと…

ルーシーが…

「素敵な防弾スーツですね」

と言った。


大統領は笑いながら…

「いやいや、そんなスーツは持って

無いから。

…ベイ博士…これは一体どう言う事ですか?…」と尋ねて来た。


ベイは微笑みながら…

「実は、私の科学力のベースには、

向こうで固まっている13人の

科学者達の研究が

ヒントになって居ます、

私は彼等の研究室を順番に回ったと

思って下さい。


本来なら13人の研究は、

人を幸せにする、

あるいは世の中の為になる…

そう言うモノでした、


しかし彼等は答えにいくら経っても

近づけない、そこで私は、

偶然を装って答えを出し…

彼等に提出しました。


でも彼等には答えが理解できないのか…

私は研究室から追い出され…

そして殺され…


今、こんな黒いコスプレみたいな格好で…

世界最高会議の席上に立って居ます。

かなりザックリとした答えですが…」


アンジーはジョニーの耳元で……

「本当にザックリとした説明ね、

大統領がキョトンとした顔をしてる…」

と言った。


〈 いよいよ復讐 〉


するとジョニーが……

「ちょっと説明をして来るね」

そう言って大統領の前に進んだ…


「大統領、時間が有りません、

宇宙からの侵略者達は、

計画通りに動いています、

ベイ博士の事、

ユーリ議員と13人の科学者の事は

後で詳しく説明します、

今は侵略者達の事を…」


そう言ってジョニーはまず……

侵略者の科学力の高さ、

地球に来た目的、

そして友好などと言う事は、

一切ありないと言う事を説明した。


しかし明るいニュースとして、

奴等の航空母艦と、

戦闘機のシールドを解除してあるので、

地球の、軍の戦力でも対等に戦える、

と言う事を力説した。


それら全てを説明する為に使った時間は…

9分と23秒。

ベイは思わず…

「お見事!」と言ってジョニーに向かって頭を下げた。


世界中の代表者達の視線が、

アメリカ大統領に向けられた…

決断を迫られて居るのだ…


しかし、

大統領は目をつむったまま動かない…

頭の中では既に理解している…

どのような結果になっても、

責任は全て自分が背負う覚悟もしている…

ただ…戦闘機に乗るパイロットは

死ぬ確率が高いのだ…


「頼みます」の一言は…「死んで下さい」

と言う事の裏返しでもある…

皆んな…家族が居るのだ。


その事を察したのか、

リチャードスミスが…

「大統領………

ベイ博士は、絶対に地球を守って

下さいます…

ならば私達も、全力を尽くして、

奴等の戦闘機と闘います。

命令を出して下さい」と言った。


大統領はリチャードスミスの顔を

ジッと見つめ…

「いいのか…」

「はい!」

大統領は意を決したのか…

小さく頷きながら…


「リチャードスミス隊長、

アメリカ空軍の全指揮権を君に託す…」

そう言って手を差し出すと…

リチャードは…

「光栄です!」

そう言って…

大統領の手を…両手で握りしめた。


リチャードはその後…

部下全員を連れてベイの前に来ると…


「せっかく助けて頂いた命ですが…

この先の事は分かりません。

地球を守る為にと言えば、

格好良く聞こえるでしょうが、

本音を言えば…


愛する妻と、娘の為に戦って来ます。

ベイ博士、皆さん、

本当にありがとうございました」

そう言って頭を下げ…


10名は会議室を後にした。


ジョニーは再び大統領に向かい…

「既に、月の後方に1機の球体が

待機して居ます、あと2機も地球に接近しています。


3機の球体が地球上で、

狩と言う名のゲームを始めるまで…

あと6時間ほどです。


私達が奴等の航空母艦と戦闘機を、

太平洋上空におびき出します…

そこで皆さんに奴等を叩き落して頂き…

その間に、

ベイ博士が率いるスカイシップは、

宇宙空間に居る三機の球体を破壊して来ます…どうでしょうか?」


「よろしく頼みます」

大統領が快諾してくれた。


ベイはメリーの耳元で…

「良かった〜、アメリカ空軍が動いてくれたら、きっと世界各国が

動いてくれると思うよ」


メリーは嬉しそうな顔で…

「私もそう思うわ、

だってアメリカ大統領は

ずっと平和の為に

対話を重ねて来られた方でしょ…

どの国も、前向きに検討して

下さると思うわ」


2人が話して居る時に…

大統領はマイクを持ち、

カメラの前に立った。


「私は……いや…アメリカ合衆国は…

ベイ博士と言う、1人の科学者を信じて…

空軍を出動させます…

命がけの大変な任務です…

しかし、やらねばなりません。

地球を護るために…どうか皆さん…

御理解を頂きたいと思います」


諸外国に対して「共戦」を呼びかけたが…

具体的に、

こうして欲しいと言う事は、

一切言わなかった。


どの国にも…それぞれの事情がある事を

知っているからである。


ベイも当然そんな事は分かっている、

しかし…

戦わなければならない時も有るのだ…

それは、自分自身で判断し…

行動に移すしかないのである。


ユーリ議員と13人の科学者達も…

初めはそんな思いで

動き出したのだとは思うが…


違う意見の人を排除したり、

殺したり、監禁したり…


残念ながら、

どんな理由をつけても…

他人の不幸の上に築こうとした幸せは…

絶対に長続きはしないのである。


94人は依然動けないままである。

ユーリは悔しくて仕方がないが、

とにかくベイから…

動かせて貰えなかった。


大統領はジョニーに…

「先ほど、あなた達の資料が私の手元に届きました…あの…

家事で亡くなったと記載されているんだが?記載ミスかな…?」

ジョニーはあえて質問には応えず


「大統領、私達は復讐に来ました。

ベイ博士から…

『やられたまんまで終わってられるかい』

と言う意見が有りまして」


大統領は頷きながら…

「なるほど、では彼等をどのように…」

(たぶん極刑にして欲しいと

言って来るんだろうな…)

と思いながら…ベイの顔を見つめた。


するとベイは満面の笑みで

「もう復讐は終わりましたよ。

彼等は大統領に対して、

そして世界中の人達に対して、

自らの罪を告白したわけですから、

あとは法律によって

裁かれればいいと思います…

先ほど大統領から…


『ユーリ議員、君が黙ってくれないか』

その言葉を聞いて、

私は胸がスッとしました…

此処に居る94人プラス、

此処には居ない

427人の仲間達の資料を…

後で、大統領の机の上に置いときますので…

全て大統領にお任せします。


私達は今から…

自分達の出来る事をして来ます…

さぁ皆んな…行こうか」

そう言って大統領に背を向けた。


メリーはベイの腕に抱きつき、

ボブとリンダ、

ジョニーとアンジー、

グレイとルーシーが…

揃って博士の周りに立つと、

ベイは微笑みながら…


「フリー・ベー、船に帰るよ」


「かしこまりましたベイ博士。

匠様、瞬間移動をお願いします」

そう言い終わるのと…ほぼ同時に、

8人の身体は会議室の中からフッと消えた。


大統領を筆頭に誰もが…

「おぉ〜……」

と言う声を漏らした。


デッキに戻って来た8人は口々に…

「女将さん、ただいま帰りました」

「匠さん、上手く話しがまとまりましたよ」と言うような報告した…


するとメリーが小さく笑いながら…

「ねぇ皆んな…女将さんと匠さんは、

デッキの中から全てを…

観ておられたと思うわよ…」


ベイを除いた6人が…

「あっ〜そうだよね〜」

と言いながら笑い出した。


笑いが収まりかけた時にグレイが…


「ベイ博士…復讐は終わったんですよね…」そう言ってベイの顔をジッと見つめた。


ベイは目をそらす事なく…


「あぁ…終わったよ」


グレイはホッとしたような顔で…

「やっぱりベイ博士は昔のままだったんですね…良かった〜」

そう言って皆んなの顔を見回した。


するとベイは首を傾げながら…

「どうしたんだいグレイ、

僕は昔から、

こんな感じの人間だけど…」


「そうです、

ベイ博士は昔からズッと優しくて…

正しくて…強くて…冷静で…

でも、復讐と言う言葉が出ると…

顔が急に怖くなって…


だけど、復讐と呼ばれる今までの作戦は…

何時も人助けで…

でも今回は、

本当の犯人に対しての復讐で…

僕はてっきり…

犯人を八つ裂きにするんだろうなぁって、

思っていたんです、


マシンガンかな?

刀かな?

ハンマーかな?

僕はどんな武器にでも対応できるように…

イメージトレーニングだけはしておこうって、色々な映画を観たりして…


よく考えれば、

ベイ博士が…そんな事をするはずが

無いのに、

すみません…バカな事を言って」


そう言ってグレイが頭をさすると、

ルーシーも同じように隣で頭を

さすって居る…


そんな2人を見てデッキの中は

大笑いと成ったが…


ベイだけは笑っていない。


メリーは小首を傾げながら…

「どうしたのベイ?…」

そう言って、ベイの顔をワザと大げさに

覗き込んだ…


するとベイは急にメリーをギュッと

抱きしめた、

かなり強めである…

その強さは…メリーを愛する時の

強さである、

その事に気づいたメリーは

ベイの耳元で…

「ベイ待って、ここじゃダメよ、

後で…お部屋で、ねっ…ねっ…」

と呟くと、

ベイはメリーの耳元で…

「大丈夫だよ、節度は常に必要だと…

自分に言い聞かせているからね」


メリーの背中をさすりながら

5秒ほど沈黙した。


そして…

「今、皆んなの前で…

メリーを抱きしめたのわね…

もう二度と離すもんか、って言う、

僕の本気の意思表示なんだよ…


グレイ、ルーシー…僕の本音を言うね…

ガッカリしたら許してね。


もしもあの時…

皆んなを生き返らせる事が

出来なかったら…

僕は…


地球を破壊するつもりだったんだ…」


7人の顔から血の気が引いた。

ベイは更に…


「愛する女性を…

愛する家族を殺された僕の心は…

崩壊寸前でね…

よく映画の中で、

愛する人の犠牲で…

あるいは家族の犠牲で

国を守りました、地球を救いました。

って言う

シーンがあるでしょ…


僕には無理だ!

出来ない!

そう言った意味で言うと…

僕は冷静でも無ければ、

優しくもない、

ましてや、正しさなんて微塵もない。


『もしも僕が帰って来れなかったら、

地球を破壊して下さい』って.

女将さんと匠さんに、お願いしたんだ…

僕は…とっても怖い心の持ち主だよ。

さっきの会議場で…

『大統領にお任せします』

って言えたのは…


皆んなが、生き返ってくれたから…

メリーが僕の腕の中に…

帰って来てくれたからだよ。


僕から優しさと、冷静さを引き出せるのは、メリーだけで。

僕から正しさと強さを引き出せるのは、

ボブとリンダ、ジョニーとアンジー、

グレイとルーシーなんだよ。


つまり僕は…

1人では何にも出来ない…

弱い男なんだよ…ゴメンね…本音を聞いて

ガッカリしただろう…」


そう言って皆んなの顔を見回すと…

ボブが、目に涙をいっぱい溜めて…


「ベイ博士、俺もまったく同じ思いですよ…リンダが俺に、

優しさを教えてくれたんです」


するとジョニーも…

「僕も同じですよ、アンジーが居なければ、他人の為に、何かをしてあげよう何て…

少しも思わない…」


更にグレイも…

「僕はルーシーが居ないと生きて

行けません」と言い切った。


するとリンダが…

アンジーが…

ルーシーが…

それぞれが自分の夫に抱き着き…


「私も…同じ思いよ…」

そう言ってキスをした。


5秒後…少し遠慮がちな女将の声が

デッキの中に響いた…


「皆さ〜ん、お取り込み中のところ

誠にスミマセ〜ン、

地球にとっての一大事が、

直ぐそこに

やって来ました〜、

私の声、聴こえてますか〜

もしも〜し

私の話しを聞いて頂けますか〜

お願いしま〜す

もしも〜し……」


8人は、女将のユーモラスな問いかけに、

笑いながら我に戻った。


女将は、世界各国の民衆の悲壮な声を

デッキの中に流した…

「女将さん、まだ誰も奴等に連れて行かれていませんか?」


「大丈夫ですよ、偵察はしていますが、

まだゲーム開始の合図が出ていませんので、

ただ、

空を見上げると、

得体の知れない飛行物体が居ますので、

誰でも悲鳴を上げたくなりますよね」


ベイは…

「そうですね…匠さん、女将さん、

もう一度だけ聞いてもいいですか…」


「ベイ博士、なんでも聞いて下さい」

と言ったのは匠である、


ベイはメリーの顔を見て……

小さく微笑んだ後に…


〈 球体 〉


「奴等はこの先…

心を入れ替える可能性は、ありませんか…」

と尋ねた、

匠は、ベイの優しさを考慮した上で、

3秒間…沈黙をした。


そして

「ゼロです、奴等には1%の優しさも

有りません…

ベイ博士、皆さん、

奴等は今まで42の星を破壊して来ました…42の内、12の星が

地球よりも、科学力が上だったんです。


当然その星の方達は、

話し合いを求めましたが…

聞き入れられる事も無く、

戦いを余儀なくされ、

皆殺しの目にあっています。


ちなみに奴等の三機の球体の中に、

他の惑星の生き残りの方、

捕虜になって居る方が居るのかどうか、

くまなく探して見ましたが…

生命反応は…ゼロ…

誰も居ませんでした。

皆さん…此方をご覧ください…」


匠は、三機の球体に保存されていた映像を、8人に見せた。

無惨に殺される異星人達…

命乞いをして居るのに、

聞く耳を持たずに、

蛮行に走る三機の王様達…


笑いながら…殺戮を楽しむ野蛮な部下達…

そんな奴等の映像を、

匠は、包み隠す事なく、

8人に見せた。


絶句する8人に…今度は女将が…

「実は…奴等は捕獲した生き物を、

大きなタンクの中に入れて、

特殊な光を当てるんです、

すると、肉体は液状になってタンクの中に溜まって行きます、

この段階で、生き物の命は奪われています。


タンクの中に溜まった液の分量が

多い球体が、

勝者となるゲームを…

奴等はズッと今まで…して来ているんです。


ちなみに、その液体は、奴等の

食料に成っています。

ベイ博士…ためらう必要など無いと

思いますが…」


ベイは冷たい微笑みを浮かべながら…

「最後まで…甘い考えを持っていた

自分自身に、

腹が立って来ました。

匠さんと、女将さんの言われる

通りですよね、

話し合う事も出来ない奴等に、

慈悲の心は必要ないですよね」


そう言って皆んなの顔を見ると…

全員が力強く頷いた。


その時女将が…

「ベイ博士、予定より早く

2機の球体が地球に到着します。


先ほど…月の後ろに待機して居る黒の球体が、フライングをして偵察機を出した事が…

他の2機の球体にバレたようです。


現在2機の球体から

非難を受けています…」


8人は思わず吹き出してしまった。

ジョニーが笑いながら…

「なんだか締まりのない話しですね、

どんな顔をしたリーダーなんですかね?」


と、何気なく言った言葉に、

女将が直ぐに反応してくれた…


「…待って下さいね…

たった今リーダーの部屋まで

潜り込むことが出来ました」

そう言って、リーダーの動く様子を、

デッキの中央部に、ホログラムとして映し出してくれた。


「想像していた通り…怖い感じの

生命体だなぁ」

と言ったのは、グレイである。


すると、4人の女性陣もそう思ったのか、

小さく震えながら、

自分の夫にしがみ付いた。


女将は、三体のリーダーの性格を大まかに分析してくれた。

「皆さん、黒い球体のリーダーは

ズル賢い奴です。

身長は3mほど

なんだか黒い液体のかたまりって言う感じですね、どの辺が顔なのか?

よく分かりませんね。


白い球体のリーダーは…コイツもよく分からない感じですね?

白いスライムって言う感じですかね?

身長は5mで用心深い奴です。


銀色の球体のリーダーは、

…龍…?なんで龍なんですかね?」

と女将さんが首を傾げている時に…

龍がライオンに変わった。


ベイ博士は腕を組みながら…

「あなどれない奴等ですね…

たぶん、

沢山の地球の情報を集めて…

気になるモノがあると自分が変身して

遊んでいるんでしょ…」


すると匠が…

「ベイ博士の言われる通りです、

黒も白も、変身し出しました」

女将は3体を一緒に映し出してくれた。


ベイの言う通りに、

変身して、遊んでいるのが分かる…

時には歴史上の人物にまでなって…

ふてぶてしく笑っているのだ

(…本当に危険な奴等だなぁ…)

と誰もがそう思った。


ボブはホログラムを見つめ…

「ベイ博士、先ほど爆弾を仕掛けると言う話でしたが、具体的には…

どんな風に戦うんですか?」


ベイは小さく微笑みながら

「そうだね、奴等を観て思ったんだけど…

闘うと言うより…

3体のリーダーの、

同士討ちなんて…どうかなと思ってさ…」

7人は、腕組みをしながら

「なるほど…」と呟いた。


すると匠が…

「ベイ博士、良い選択だと思います、

いま、女将とも話していたのですが…

3体のリーダーは、

とにかく仲が悪いんです、

自分が一番偉いんだと思っています。


それから…少し話しが変わりますが、

奴等の球体の外壁が…

想像以上に硬いんです。


それと、シールドが、かなり強固な

造りに成っていまして…

当初は、大気圏内に入って来た空母の様に、外から直ぐに、シールドを外せると

思って居たのですが…

スミマセン…

全ての分析に、まだ少し…

時間がかかります。

ですから、内側からの攻撃作戦は、

一番良い選択だと思います」


そう言って小さく頭を下げた。

すると、今度は女将が…


「ベイ博士…三体の王達は、

変身は出来ますが、

その他の能力は有りません。

沢山の部下を上手に手なずけて、

王様のように君臨していますが、

中身は空っぽです。


きっと、部下達を上手く洗脳して

いるんでしょうね」


ベイの横からメリーが…

「例えばどんな風にですか?」


「まず食料を豊富に与える。

大好きな闘いを沢山させてあげる。

自分の下に、幾つものポストをつくって、

その中に入れる事は、

名誉な事なんだと、精神的に植え付ける。


一つの事をやり遂げた者を、

皆んなの前で褒めまくる。

なんて言う感じですかね」


「なるほど、発想は人間と同じようなモノですね…しかし面白いですね、

宇宙人も、権力を持ちたがるんですね。

生きとし生けるもの全ての…

本能みたいなモノなんですかね…」


そう言って、メリーは、ベイの顔を見つめ…

「ベイも権力が欲しい…?」と尋ねた。


周りで聞いている6人は…

(…イヤイヤ、メリー、なに聞いてるの。

ベイ博士は

権力なんて興味ないでしょ…

有るとすれば…)

と思っていたら…


ベイは間髪入れずに…

「メリーと権力のどちらを取る…

と言われたら、迷わずメリーを取る‼

︎それ以外の選択肢は僕には無い!

僕にはメリーが必要なんだ!」


そう言ってメリーを抱き寄せた、

メリーは真っ赤な顔で…


「えっ、いや、あの…ベイ、

私は権力の話を…

でも、あの、とっても嬉しいわ…

ありがとう、ベイ…」


メリーは、ベイの胸の中に顔を埋めた。


6人はニヤニヤしながら…

(そう言うと思った、

だいたいベイ博士が

権力が欲しければ、

スカイシップを造った次の日に、

世界の王様に成っているよ…

ベイ博士は、メリーしか見てないよ…」

6人全員が…そう思った。


スカイシップの窓から見える地球は…

悪い奴等に狙われているとも知らず

…とにかく青く、綺麗に…輝いていた。


しばらくすると…

白い球体からも

銀色の球体からも、

6機ずつの航空母艦が出て来た。


先に出ている黒の航空母艦は…

ジッとして動かない。

白と銀の球体から

クレームを言われたからではない、


既に、生命体の数を把握できて居たのだ。

「どんな文句でも言えばいい…

勝てればいいんだ。

今回こそは…白と銀に絶対に負ける

事はない…」


そう言いながら、

ニヤニヤとホクソ笑んでいた。


白と銀の航空母艦が、

アメリカ、

ブラジル、

オーストラリア、

ロシア、

中国、

アフリカの上空に

姿を現したのは、

それから数分後のことである。


マスコミ各社のアナウンサーは、

恐怖で顔を引きつらせながら…

「ご覧下さい…

未確認飛行物体が…

また増えました…地球の軍隊で…

勝てるのでしょうか?」


思わず…

民衆に不安を与える様な事を

言ってしまった。


民衆は、

自分達の頭上を飛び回る

未確認飛行物体に対して、

恐怖を抱きながら

身をかがめる事しか出来なかった。


白と銀の航空母艦は、

直ぐに100機ずつの戦闘偵察機を出した、

生命反応を少しでも早く把握する

為にである。


それを見た… 黒の航空母艦の艦長は…

「我々は既に調査は終了しているが…

いちおう形だけでも

戦闘偵察機を出すか…」と言いながら

部下達を出動させた。


そんな時…

ベイは不敵な笑みを浮かべながら、

「さぁ…僕達の出番だ、

派手にやろうじゃないか!」

そう言って

8人に、親指を立てて見せた。


ベイ達はまず、

匠に瞬間移動でロシアの上空に送って

貰うと、直ぐに黒の航空母艦を挑発する

事にした。


ベイとメリー、グレイとルーシーは、

ブレスレットに、

白い球体所属の戦闘偵察機に化けてもうと、

速攻で黒の航空母艦に、

ワザと当たら無い様に

ミサイルを放ち…


[ルールも守れない卑怯者…]

と言うメッセージを、6機の、

黒の航空母艦の艦長達に送りつけた。


黒の艦長は凄い形相で、

白の戦闘機を睨み付けた。


すると今度は、

ボブとリンダ、ジョニーとアンジーが

ブレスレットに、

銀の戦闘偵察機に化けてもらい…

変身するや否や…これまた速攻で…

黒の戦闘偵察機6機に対して

ミサイルを発射した…

これは初めから撃ち落とす為にである。


不意を突かれた戦闘偵察機に…

逃げ場はない、

一瞬にして…空のチリとなった。


そしてボブ達も、

黒の航空母艦の艦長達に…

[我々はお前達を…絶対に許さない!]

と言うメッセージを送りつけたので、

もう黒の艦長達はカンカンに怒り出した。


部下を失った黒の艦長は、

まず自分の球体のリーダーに…


「我等が尊敬する黒の王よ…

白の王と、銀の王が攻撃をして来ました…

どう致しましょう、

反撃しますか?…」


と言う指示を仰いだ…

しかし、

残念ながら彼等の声は、

黒の王様の耳には届いて居ない…


A Iの優秀さが、余りにも違うのだ。


彼等の声は、

全て女将が受け取り、

黒と銀の王様の真似をして、

戦い全体の流れを

手の平の上で転がして居るのだ。


女将は……

「艦長…今回のゲームが終わったら…

2人の王に話しをしよう…

今は挑発にのるな。

もし2人の王に手を組まれたら…

かなり、マズイ事になる…」

と告げた。


黒の航空母艦の艦長達は…

「分かりました…」

と言う事しか出来なかった。


女将は匠に向かい…

「ベイ博士が予測した通りね、

あの3体の王は、

強いパワーを持ち過ぎたせいで、

お互いの存在に

怯えあって居るのね…」


匠は頷きながら…

「そうみたいだね、一対一なら互角でも、

二対一に成ると…

勝てる確率が下がるからね…

お互いに戦う事だけは…

避けたいだろうね」


「ベイ博士は、その部分を叩けば…

必ず勝てるとおっしゃったのね」


「さすがだね…

さてと、6か国の上空に居る航空母艦を、

そろそろ太平洋上におびき出そうかな」

匠の言葉に、

女将はニッコリと微笑んだ。


まず匠は…瞬間移動で太平洋の上空に

姿を現した…

すると女将は…

18機の、航空母艦の艦長達に、

宇宙空間に居る王様のフリをして…

偽の命令を下した。


まずは、白と銀の航空母艦、

12機の艦長達に向けて…


「黒の王に不審な動きがある…

調査を中断して太平洋上空に集まれ…

ゲームの前に、

黒の王の、弁明を聞こうと思う…」

と言った。


航空母艦の艦長達は、

黒の王が先に調査を始め、

ルール違反をしたと言う事を

既に聞いていたので、

何も疑う事なく…


「了解しました」

と言って、太平洋上空に進路を向けた。


女将は匠の顔を見ながら微笑み…

そして次に、黒の王様になりすまし…


「白と銀の王が我々に不信を抱いているようだ…手を組まれるとマズイ事に成る…

全機、太平洋上空に集まれ…

2人の王に

弁明をせねばなるまい」

と言った。


黒の航空母艦の艦長達は、

ロシアの上空に待機して居る艦長から…

「白と銀の王から、攻撃を受けた…」

と言う話しを既に聞いていたので…


「了解しました、直ぐに向かいます」

と言い…

(マズイ事になってきたな…)

と思いながら…進路を

太平洋上空に向けた。


いっせいに向きを変えて動き出す航空母艦…マスコミ各社はドローンを使って

後を追わせたが…

航空母艦のスピードについて行ける

訳もなく…


視聴者には…

航空母艦の…

後ろ姿を見送る様な映像しか

見せる事が出来なかった。


匠は、瞬間移動でロシアに

ベイ達を迎えに行った。


「おかえりなさいベイ博士、

全て順調に進んでいます」


ベイは頭を下げながら…

「ありがとうございます。

御二人の仕事は…何時も本当に完璧ですね」


すると女将は茶目っ気たっぷりな顔で…

「実は…此れはトップシークレット

なんですけど…」


8人は真顔で女将の顔を見つめた…

「私達夫婦の創造主が、

宇宙一の天才科学者なんです…

名前を教える事が出来ないのが、

本当に残念です…

ご了承下さい…」

そう言って頭を下げたので、

デッキの中は大爆笑と成った。


どんなに緊迫した状況の中でも、

常に匠と女将にはユーモアがある。


太平洋上空に、18機の航空母艦が

集まって来た。


18名の艦長達は血の気が多い…

自らの命を失うかも知れない、

そんなギリギリの闘いの中に

自分が居る。


とにかく、

闘って居る自分自身が大好きなのだ。

かなりタチの悪い生き物である。


女将はまた…黒の王様のフリをして…

6人の艦長達に…


「…いま、白の王と、銀の王と、

話を進めている…

なかなか疑念が晴れないようだ…

しかし、もしも次に、白と銀の艦長達から、

攻撃された時は…

反撃してもよい、みすみす

やられる必要はない、

黒の強さを見せてやれ、

我々は…絶対に負けない!」

と言った。


6名の艦長達は、

王様からの戦ってもよいと言う言葉に…

「ウオォ〜」と言う雄叫びを上げ…


「…黒王国の底力を見せてやる、

白と銀が同盟を組んでも…

我々は負けない、必ず勝ってみせる」

そう言って、自分自身を奮い立たせた。


次に女将は、白と銀の王様のマネをして、

12名の艦長達に向け…

「皆の者よく聞け、

黒の王が、一方的にルールを破って来た、

奴は、前から、約束事を守らない所がある…

油断するな、

もし奴等の動きが怪しい時は、

総攻撃を加えて構わない、


我らは、二国同盟を結んだ、

黒の王に勝ち目はない、

軽くあしらってやれ」

そう言って高笑いをした。


王の言葉を聞いた

12名の艦長達は……

「同盟を結んだ我らは、

宇宙一のパワーを持った。

黒の奴らを叩き潰して、

我らを…食料にしようぞ」

と言って、戦う前から、

勝ったような事を言い出した。


〈 シールド 〉


そのセリフをスカイシップの中で

聞いたボブは…

「ベイ博士…奴等は、捕まえたモノを

溶かしてしまえば…

たとえ仲間達でも、食べちゃうんですね…」


「そうだね……42の星を滅ぼしたのも…

納得できるね…

素晴らしい科学力を持っていても、

意味のない奴等だね…」


そう言っている時に、女将が…

「ベイ博士、各国の空軍が

18機の航空母艦の後ろ側に、

間も無く到着します」

と報告してくれた。


ベイは……

「匠さん、透明シールドを張ったままで、

黒の航空母艦の後ろにつけて下さい」

「了解しましたベイ博士」

そう言い終わった時……

スカイシップは既に、

黒の航空母艦の後ろに着いていた。


「匠さん…白と銀の航空母艦を

同時に落として下さい」

「了解しました…」


スカイシップから、レイザー砲が

発射された…


大気圏内に入ってきた段階で、

シールドが解除されている事を、

18機の艦長達は、

今だに気づいていない……


なので、

本来ならブロックされるはずの攻撃を、

白と銀の航空母艦2機は、

まともに食らってしまい、

大爆音と共に炎に包まれ…

海に落ちて行った。


スカイシップから撃たれたレイザー砲は、

事前に女将が航空母艦からデータを盗んで、匠がコピーしたモノである、

しかし、各艦長達はそんな事知らないので、


白と銀の艦長達は…

「黒の艦長…やりやがったな、

皆の者、戦闘態勢、

黒の艦隊を叩き落とせ!」

と、号令をかけた。


レイザー砲を打ったとされる、

黒の航空母艦の艦長は、

一瞬は(えっ?…)と思ったが…


「…誰が撃ったか知らねえが、

かまわねぇ、

前々から白と銀の奴等が嫌いだったんだよ、奴等はあと10機だ、

全力でブチ落としてやれー」


此方も怒りにまかせて、

号令をかけてしまう事になる。


ベイの思惑通りである。


航空母艦からは…

100機の生粋の戦闘機と、

偵察戦闘機100機が飛び出した…

その瞬間、女将が…


「ベイ博士すみません、

航空母艦に、200機の戦闘機が乗っているなんて…」


「いや、これは私の推測ですけど、

1機の偵察戦闘機は、

元々2機合体型だったんだと思いますよ、

きっと非常事態発生で

別々に動き出したんだと思います。

大丈夫ですよ、

地球の空軍も3000機を超えていますから、必ず、勝てますよ」

と言った。


女将は頷きながら、

ホタル達に緊急時の

注意事項を飛ばした。


「パイロットを護るホタル達、

先程も言いましたが、

もしもの時は、対象者の細胞を摂取し、

その場で待機、

匠が瞬間移動で直ぐに迎えに行きます、

安心して待って居なさい」


すると可愛いホタル達から…

「女将様、ありがとうございます。

匠様、よろしくお願いいたします」

と言う声が…

デッキの中に響いた。


太平洋の上空… 黒vs 白と銀。

そして、地球の空軍入り乱れての…

戦いの始まりである。


ベイは7人に向かって号令をかけた…

「今から作戦通りに動くよ、

ボブとリンダは白の球体に…

僕とメリーは銀の球体に、それぞれ

爆薬を仕掛けに行く。


ジョニーとアンジーは、

太平洋、戦闘区域の島々に、

泡のドームを頼むよ。


グレイとルーシーは、

津波が来そうな沿岸部の国々に、

海水の壁を立てて貰えるかな、

さっき、白と銀の航空母艦

2機を落としたから、

島や沿岸部に津波が押し寄せると思う、

早急に頼むよ」


7人は、真剣な表情で親指を立てた。


4体のフリー&ブレス達は、

透明モードでベイ夫妻と

ボブ夫妻に装着した。


すると…フリー・ジー達4体も、

ジョニー夫妻と、グレイ夫妻の耳元で…


「私達はスーツとして御主人様を守り、

皆様の活躍のサポートをさせて頂きます。

また、津波の高さ、

波に飲み込まれる島と、

沿岸部に津波が到達する順番は、

既に、把握していますので、

お任せ下さい」

と言った。


女将と匠は…

ベイ夫妻とボブ夫妻を、

瞬間移動で、

白と銀の球体の

中心部近くに送った。


当初は外からの攻撃で、球体を爆破させようと言う案も出ていた、

その方が危険度が低いと思ったからである、しかし匠の調査によると、

球体の外側のシールドシステムが

なかなか強固で、

外すのには、あと少しの情報が欲しいとの

事だった…


ベイは頷きながら…

「奴等に逃げられたら、

後が面倒ですよね、

奴らが油断している今…

何とか、叩き潰して置かないと…」

そのベイの一言で、

今回…

球体の中に入る事になったのである。


ジョニーとアンジー、

グレイとルーシーは、

ジェット機に変身したブレスに乗り込むと、太平洋上空に飛び出した。


今はまだ、

2機の航空母艦が海に落ちただけなので、

30m前後の津波だが、

残りの航空母艦も必ず堕とす予定である、

更に高い津波が来る事を

想定しなくてはならない。


ベイはボブに「…聞こえるかな?」

「はい、聴こえています」

「制限時間は11分50秒だよ、

お互いに頑張ろうね」

「了解です」


ボブとリンダは内部を見回した…

まるで迷路のように成っている、

しかし自分達は、

金属でも、壁でも何でも通り抜けられ…

ましてや女将から

方向案内までしてもらえるのだ、

迷う事は一切ない。


爆薬を仕掛ける中心部まで100キロ、

この距離を移動する事によって、

更に、球体内部の情報が、

匠と女将に届けられる事になる。


4人は物凄いスピードで

球体の中心部まで飛んで行った。


「…ベイ博士…着きました。

すごく大きくて…

管がたくさん張り巡らされていて…

それでいて繊細ですね…」

そう言ってきたのは、リンダである。


ベイはリンダの言葉に頷きながら…

「奴等の科学力は凄いね〜…

何で良い方向に向けられないのかなぁ…

残念だけど

滅びてもらうしかないね」

そう言いながら…

メリーと爆薬をセットしていると…


ボブが…

「ベイ博士、かなり小さな爆薬ですけど…

きっと破壊力がすごいんでしょうね?」


「いや小さいよ、でも大丈夫だから、

周りをよく見て…

ここは人間で言う所の…

脳の中なんだよ、

目の前の管一本でも切れたら、

大変な事になるんだよ、

球体の機能は麻痺し、

シールドも張れなくなるんだよ…

その時を逃さず、一気に攻撃をするんだ」


ボブはベイの言葉に、

満面の笑みで…

「了解しました、2人で50個の爆薬を…

手早くセットしますので…」

そう言って、

リンダに微笑みかけた。


そして11分後、リンダから…

「ベイ博士、全て、セット終了しました」


「2人共、お疲れ様…こちらも今終わったよ、

さぁ、こんな所に長居は無用だ、

スカイシップに帰ろう。

フリー・ベー、匠さんに帰還を頼んで

もらえるかな」


「かしこまりました」

フリー・ベーがそう言い終わった時、

4人は…スカイシップのブリッジの

中に立っていた。


「お疲れ様でした、ベイ博士、メリーさん、ボブさん、リンダさん」

声をかけて来たのは、女将である。


匠と女将は,スカイシップの中から

4人を見守りながら、

ずっとドキドキしていたのである…

思えば、とても優しくて、

過保護なAIである。


女将は更に言葉を続けた…

「太平洋上空の映像を見て下さい…」

4人が視線を向けると壮絶な空中戦が展開されていた。


黒の戦闘機は、白と銀の部隊を襲い、

白と銀の戦闘機は、黒の部隊を徹底的に撃ち落としている、


そこに地球の空軍が、よそモノに侵略されてなるものかと…

黒と、白と、銀の、戦闘機を、

横から、後ろからと、

果敢に攻撃を仕掛けている…


その時…

「こちらジョニーです、全ての島にシャボン玉ドームを張りました。

今から帰還します」


そう言い終わるのと同時に…

2人を乗せたジェット機は

ブリッジの中に着いていた。


「あら?…ここはもうブリッジの中…」

そう言ってキョロキョロと周りを見回したのは、アンジーである。


メリーは小刻みに手を振りながら…

「お帰り〜、ご苦労様〜」

と言っている時に…


「こちらグレイです、

全ての沿岸部に、

海水の壁を立て終わりました、

いま日本の上空です、

急いで帰還します…」


と言い終わるのと同時に、

グレイとルーシーはブリッジの中に居た。


ルーシーが笑いながら

「はい、帰還して居ました。

もう…びっくりですね」

そう言って、ジェット機モードを解除した。


太平洋上空の空中戦を、

マスコミは見逃してなるものかと、

最新のドローンを使い、

空軍の戦闘映像を、

リアルタイムで…世界中に放映した。


ジョニーが厳しい顔で、

空中戦の映像を見ながら…

「アンジー…この中に…

リチャードスミスさんが居るんだよね…」

「そうね…何処に居られるのか…

分からないけど…」

とアンジーが呟くと、


女将はいとも簡単に…

「はい、ココですよ」

と言って映像の中に矢印を入れてくれた。

ジョニーが…


「えっ〜?」と驚きの声を出すと、

匠が笑いながら


「ジョニーさんアンジーさん、

空軍の方達の戦闘機の中には…

ホタルが乗っていますから、

全てのパイロット方の映像をながせますよ」そう言って、

現在戦っているリチャードスミスの顔を

スクリーンに映し出してくれた。


ベイを除いた7人は…

(あっ、そうだった…

もう何回も聞いているのに、

想像を遥かに超えすぎて、

逆に…直ぐ忘れてしまうんだよね…)

と思いながら照れ笑いをした。


その時、匠の方から…

「ベイ博士、球体内にセットされた爆薬を、今、起動させました…現在…

球体のAIが必死に原因を探しています…

機能が麻痺して来ました…

今、球体のシールドが外れました、

機能回復まで27秒です」

7人が拳を握り、

息を飲んだ次の瞬間、


匠は…

「ベイ博士、スカイシップを

黒の球体の後方に移動させました、

…24、23…」カウントダウンが

始まった、


するとベイは目を見開き…

「発射!」と叫んだ…


黒の球体の後ろから…

白の球体に向かって一直線に

青い光が走った。


白の球体のAIが…

「王様、黒の王が攻撃を!

シールドが間に合いません…」

「なにっ…」と言う言葉を最後に…

白い球体は、真っ赤な炎に包まれ……

宇宙のチリと成った。


2億近い生命反応が…

一瞬にして消えた。


その映像が月面基地から地球に

送られて来ると、

最高会議室の中は、大歓声に包まれた。


アメリカ大統領は…

「驚いたな…本当に…

ベイ博士がやってくれた…」

そう呟きながら…

拳を握った。


しかし大統領よりも驚いたのは、

太平洋上空の、白の航空母艦の艦長と、

戦闘機のパイロット達である…

本来なら自分達の王様が…

黒と銀の王様よりも

強いと思っていたからである。


しかし本当に一番驚いたのは、

黒の王様である…

「えっー、どう言うことだ、

誰が白の王様に破壊光線を放った?誰だ…」

すると黒の球体のAIが…

「王様、銀の王様がこちらに攻撃準備をしています、

しかし現在、

銀の球体のシールドが、

なぜか、解除されています、

撃つなら今です」

「えっ…?」

「シールド再起動まで6.5.4…」

黒の王様は反射的に…

「撃てっー」と叫んでしまった。


黒のAIは、命令通りに破壊光線を発射した。

銀の球体のAIは…

迫り来る破壊光線を感知すると…

「王様、シールド再起動が間に合いません」とだけ言うと、

王様と2000体の上位幹部が居る

区分を切り離し、

後方に打ち出した。


銀の球体のAIは、

自分の王様を護る為に、

破壊光線を6秒間も耐えたが…

力尽きたのか、

真っ赤な炎に包まれて…

宇宙のチリとなって

消えた。


ここでも2億近い生命反応が、

一瞬のうちに消えた。


太平洋上空の、白と銀の航空母艦の艦長達の怒りは頂点に達した。


「黒の王よ…よくも我等の主人を…」

その怒りは凄まじく、

わずか30分足らずの内に、

黒の航空母艦5機を炎に包み…

太平洋に、叩き落とした。


残った1機は慌てて球体に帰ろうとするが、後方から…

白と銀の戦闘機集団に一斉攻撃を受け…

あえなく爆破される事になる。


残るは白の航空母艦1機と、

銀の航空母艦2機、

そして白と銀の戦闘機419機である。

地球の戦闘機の飛行技術は、

決して奴等に

引けを取るものではなかった。


しかし、機体の硬さには関して言えば、

圧倒的に奴等の戦闘機の方が硬く、

一発のミサイルが当たっても

奴等は落ちないのだ…

二発、三発当たってようやく大破させる事が出来ると言う…

かなり手強い相手であった。


ジェット機に搭載しているミサイルの数が…足りなくなってきた…

(どうしたらいいんだ…)と地球の

パイロット達が考えている時…

リチャードスミスの元に無線が入った


「ミサイルが無くなった…

後は宜しく頼みます…」

日本の戦闘機隊長、田口からの無線である、リチャードは…

「えっ?待って…」

と言った次の瞬間、

田口のジェット機は…

何のためらいも無く、

銀の戦闘機に体当たりをして行った……

その時、銀の戦闘機も一緒に大破した事を確認した日本のパイロット達は、

リチャードに向かい…


「こちらもミサイルが無くなりました…

隊長に続きます」

「待て、別の方法が…」

と言っている目の前で…

日本のパイロット達は、

隊長の後を追うように…

次々と敵の戦闘機に体当たりをして行った。


各国のパイロット達は絶句した、

しかし次の瞬間…

まだ腹にミサイルを抱えた日本の戦闘機…

村山副隊長が

「ここで引いたら地球の負けだ…

負ける訳にはいかない!」

と言って銀の航空母艦に向かって

飛んで行った。


各国のパイロット達は…

「やめろー」と叫んだが、


その横を…

18機の日本の戦闘機がすり抜けるように…、副隊長の後を追って行った、

各国のパイロット達は何度も…

「やめろ、やめろ、やめろっー」

と叫んだが…

19機は何のためらいも無く、

銀の航空母艦に突っ込んで行った。


シールドが張れて居ないので、

銀の航空母艦は、

大爆音と共に、

真っ赤な炎に包まれ…

太平洋の中に消えて行った。


そんな空の様子を…各国のドローンは…

そのまま、世界中のテレビに流した。


その映像を見た人達は…

「…世界を救う為に…自らの命を

犠牲にしてくれた」

と言う人。


「何もそこまでせずとも、いったん基地に帰ればいいのに…」

と言う人。


受け止め方は…人によって様々であった。


リチャードスミスの耳に…

部下の声が入ってきた

「隊長、なんで日本のパイロット達は、

自分の命を捨てる事が

出来るんでしょうか?」


リチャードスミスは少し考えた後に…

「きっと、ためらったと思う……

その上で、地球を守る為に…

自らの命を…かけてくれたんだと思う……

でもエッジ、

君達は突っ込まなくていい…

次は…俺が行くから…」

「えっ?隊長…」

「故障したようだ…後は頼む…」

そう言って…

リチャードスミスは大きく旋回しながら…

銀の航空母艦の背後に向かって行った。


副隊長のエッジは分かっている、

リチャード隊長の

「故障したようだ」は…嘘である事を…

「隊長、私達も後から行きます…

またあの世で呑みましょう…」


「あぁエッジ、先に行ってるよ…

出来る事なら…君は来るなよ…」

と言う言葉を最後に…

リチャードは、2発のミサイルを抱えたまま航空母艦に突っ込んだ…


2秒後…

銀の航空母艦の中で鈍い爆発音が聞こえ…

更に3秒後…母艦が傾き、

赤と青の炎に包まれ、

大爆発を起こし…

太平洋に消えて行った。


各国から集まって来てくれたパイロット達は絶叫した…

「1機残らず叩き落してやる!」

「オマエらに地球は渡せねえよ!」

「ふざけんじゃねぇー、ブッ殺してやる!」と叫びながら…

1機、また1機と敵の戦闘機を

落として行った。


残る大物は、白の航空母艦、一隻である。

ただ、白の航空母艦の艦長は、

科学者である、

それも3つの球体の設計を手掛けた、

天才科学者である。


彼は今、なぜ黒の王が急に反乱を起こしたのか?その事ばかりを考えていた…


(…おかしな事が多すぎる…

あの王の本性は、臆病者だ…おかしい…

まるで見えない何かに…

操られているような気がする…

しかし、私が作ったAIは何も

感知していない、

気のせいなのか?…)

そう思いながら戦闘機に命令を出した。


「今から黒の王を倒しに行く、

母艦の後方を守れ」

白の航空母艦は月に向かった。


月の後ろにいる黒の王様は、

既に球体の中で勝利宣言をしていた。


「本来なら、地球と言う惑星で狩りをするはずだった。

しかし…何処でどう狂ったのかは

分からないが。

狩ったのは、白と銀の球体である。

今からワレが…

宇宙の王である…」

球体の中は大歓声に包まれた。


その時、球体のAIが…

「王様、お逃げ下さい、白の航空母艦がこちらに向かっています」

「何を言っている、

航空母艦の一隻くらいでナゼ逃げなくてはならないのだ、

叩き潰してやれば良いではないか…」

「向かって来るのは、

白の第3航空母艦…

グロ博士が艦長です」

「それがどうした?」


「グロ博士は、3つの球体…

私の設計者です…

球体の弱点を知っておられます」


黒の王様は絶句した。


AIは更に

「王様、白の航空母艦の射程圏内に入ってしまいました」

「グロにつなげ」AIは黙って無線を繋いだ…「…グロ博士、話しを聞いてくれ、

俺にも、何がどう成っているのか、

分からないんだ…」


「分からなくていい、お前のようなバカは、何も分からないままに死ねばよい」


「待て、待ってくれ…」と言っている時に、グロ博士は破壊光線を

黒の球体に向けて発射した。

黒の王はうろたえながら…


「AI、なんとかしろ」

「シールドを張っていますが…王様、9秒で球体は爆破されます…」

「なんとかしてくれ…」

と言う言葉に…

AIは何も答えず…

黒の球体は大爆発を起こし宇宙の

チリとなった…

ここでも2億を越える生命反応が

消えた。


グロ博士を乗せた航空母艦の中には、

3600体からの部下が乗っている、

グロ博士は…

(…今度は俺自身が王様になろう、

ばか者を上に置いておとくと、

ロクな事をしない…)

と思った、その時である…


銀の王様と、2000体の部下達を乗せた、シルバーシップが近づいて来た。

銀の王様は、

白の航空母艦の艦長がグロである事を

知っている…


「グロ博士、無事でなにより…

今回の黒の王の反乱は驚いたね、

昔から何を考えているのか分からない奴だったが…」

銀の王様の話は止まらない。


銀の王様は以前から、

グロ博士が自分の事を良く思っていない

事を知っているし…

また彼が、

優れた科学者である事も知っている

(…なんとかして奴を味方につけたい…

もし無理ならば殺すしかない…)

そう思いながら様子をうかがっていた。


グロ博士は、なぜ銀の王様が、

のこのことやって来たのか…

知っている。


グロ博士は静かな口調で…

「銀の王よ、私から逃げ切れないと

悟った事だけは

褒めてやろう…しかし、

さよなら、これは地球の別れの挨拶だ」

「そうか、仲良くはなれないかグロ博士、

残念だが仕方ない…」

そう言って軽く右手を上げた。


白の航空母艦の主砲が開くと同時に、

シルバーシップの主砲も開いた…


ほぼ同時に破壊光線が撃たれると、

その光線は、渦を巻くような形で…

互いの鑑に命中した。


お互いの鑑には、

強いシールドが張られている…

要は、防御力が勝敗を決めるのだ。


グロ博士は…

「私が作り上げたシールドを、破れる訳がない…」と言い、銀の王様は

「いつまでも自分が、一番の天才科学者だと思うなよ…」

そう言いって、一歩も引かなかった。


グロ博士は、

シルバーシップのシールドを見ながら…

「銀の王様もやるねぇ…改良したね。

しかし、私のシールドは壊せないよ…

待てよ…

おかしいな…なぜ地球の上空では

シールドが張れなかったんだ?……

しまった!地球には…」

そう呟いた時…


「さようなら…」と言う女性の声が

グロ博士の耳に届いた…


「誰だ?…」と言う問いかけには

一切答えず…


女将は…白の航空母艦のシールドを、

匠は…シルバーシップのシールドを、

遠隔操作で…ソッと解除した。


シールドを外さなれた2隻の船はアッと言う間に紅蓮の炎に包まれ……

宇宙の塵となった。


〈 ただいま 〉


2つの大きな爆発音は地球には届かないが…

月面基地の天体望遠鏡により…

その映像は…地球に送られた。


これで3機の球体全てを

破壊した事に成る。


最高会議室は狂喜乱舞…

大歓声に包まれた事は言うまでもない。


その様子を、スカイシップの中で

観ていたベイは…

「良かった…地球を護れて…

匠さん…宇宙空間でもシールドを遠隔操作で、外せる様に成ったんですね」


「はい、ほんの3分ほど前に、

奴等のシールドを全て解明する事が

出来ました、

博士夫妻とボブ夫妻が、球体の中に

行って下さったおかげです。

スミマセン、少し時間がかかって

しまいました」


「いやいや、とんでもない、

ご苦労様でした、

匠さんと女将さんのおかげで…

無事地球を守る事が出来ました、

ありがとうございました。


そして皆んな…ご苦労様でした。

今更言うのは照れくさいけど…

僕達ってさ…本当に最高のチームだと

思わない?」


そう言ってベイが振り返ると……


ボブとリンダの後ろにトムとニーナが、

ジョニーとアンジーの後ろにブラウンが、

グレイとルーシーの後ろにレイチェルが…

満面の笑みで立って居た。


ベイの驚いた表情を見て…

6人は振り返った…


そして、ブラウン一家の4人を見て…

(…あらまぁ〜、屋上デッキに居ると思ったら…下のデッキ居たんだ)

と思った。


ベイはメリーの顔を見て…

(…いつから居たんだろう…)

と目で訴えた後に…

「トム、ニーナ…えっと…ずっと見ていたのかな?」

そう尋ねると…2人は黙って頷いた。


ベイはもう一度メリーの顔を見て、

作り笑いをした後に…

「怖くなかったかい…」

と尋ねた。


するとニーナはチョコンと頭を下げて…

「勝手にブリッジに入って来て

ごめんなさい。

上のホテルの中で…

ジッとして居ようねって、

パパとママに言われていたんだけど…

でも…私も、お兄ちゃんも、

先生達のそばに居たくって…

ごめんなさい…」


そう言って…

ニーナはもう一度

頭を下げた。


ベイは頷きながら…

「そうか…側に居たかったのか……

あのね…いま見ていたと思うけれど、

僕はたった今、

沢山の命を奪ったんだ…

悪魔みたいにね…ごめんね、

ビックリしただろう…」


するとブラウンが横から…

「とんでも無いです、

ベイ博士が居られなかったら…

地球は滅びてしまう所だったんですよね…

助けて下さった方をヒーローと言っても…

悪魔とは言いません」


レイチェルは夫の言葉に頷きながら

「地球を43番目の惑星にしないで頂き、

本当にありがとうございました。

ベイ博士が居られなかったら、

私達は光を浴びて

溶かされてしまったんですよね…」

そう言って頭を下げた。


ボブはリンダの耳元で…

「ほぼ始めの方から…

ズッと居られたんだね」

と言うと、リンダは思わず

吹き出してしまった。


トムはベイの前に進むと…

「僕は…僕の家族は、

ベイ博士と7人の先生方と、

匠さんと女将さんと、フリーさん達を…

心の底から尊敬しています、

本当に…ありがとうございました」

そう言って頭を下げた。


ベイはトムを見ながら…

1回、大きく深呼吸をした…

そして…


「トム…ありがとう。

なんて言えばいいのか……

心が…救われたよ。

自分で答えを出して行なった事なのに…

心のどこかで…

この答えで正しいよね、

100%…大丈夫な答えだよねって…


何回も自問自答をしているんだ…

だからトム、ニーナ、

レイチェルさん、ブラウンさん、

皆さんの言葉で…

僕の心が救われました、

ありがとうございます」

そう言って微笑んだ。


女将は、その状況を3秒間見守った後に…

「ベイ博士、太平洋上空に戻って、

残っているエイリアンの戦闘機を排除したいと思います」


ベイは直ぐに

「了解です、その後にも大切な仕事が残って居ますからね」

そう言って皆んなの顔を見回した。


    〈…ただいま…〉


2秒後、スカイシップは地球に戻った。


太平洋上空にいるエイリアン達は

焦って居た、

自分達が帰還する航空母艦も居なければ、

宇宙に待機して居るはずの球体も

無いのだ。


本来なら地球上の生物狩りをして、

星そのものを滅ぼす予定だった…

ところが…気が付けば

全てを失っていたのは、

自分達の方だったのだ。


(…この星の何処かで隠れて…

住み着くしか無いか、

しかし見つかれば殺されるだろう…

ならば…この戦いで…

死ぬしかないか…)

そう思うと、ヤケクソになるより他に

道が無かった。


いずれにしても、

理性を失い、

捨て身で戦う奴ほど、厄介な者はない。


自分達の戦闘機の硬さを武器に、

破壊光線を出しながら

空軍の戦闘機に体当たりして来るのだ。


各国のパイロット達は

たまったものではない…


ミサイルはほぼ使い果たしている…

各国のパイロット達は…


「さてと…次は俺たちの番だな…

まだエイリアンの戦闘機は

291機も残っていやがる…

日本のパイロット達はスゲエなぁ…

チクショウ、

死ぬのが怖くてしょうがねぇよ…

でも世界を護る為には、

体当たりで行くしかねぇか…」

そう独り言を言いながら、


心の中で家族に別れを告げていた。


その時である、

目の前に瞬間移動をして来た

スカイシップが…

パッと現れた。


各国のパイロットは…

スカイシップを見るのは初めてである。


この戦いが始まる少し前、

各国の戦闘機が

太平洋上空に集まる最中に、

リチャードスミス隊長からの無線で…


「…こちらには、

ベイ博士と言う、すごい味方が着いている、

スカイシップと言う乗り物に乗って居られる、見た感じが…

私達の知っている形ではない…

手足のないサソリ、カブトガニ、

オタマジャクシ…

ちょっと説明がしづらい、

たぶん観れば分かると思う、

敵では無いので、攻撃をしないように…」


そう言われていたが…

いざ目の前に急に現れると

「敵か、味方か!」

とにかく、慌てまくってしまった。


その時、副隊長のエッジが

無線を使い、大声で叫んだ

「味方だっー、ベイ博士が来てくれたー!」


各国のパイロット達は…

(うわぁ〜…本当に形容しづらい形の

乗り物だぁ…でも、きっとスゴイ

攻撃をされるだろうから、

俺達は早くこの空域から出ないと…)

と思っている所を…

奴等に背後を取られてしまった…

「くそー逃げ切れない!」

何機ものパイロットが、そう叫んでいる…


その時、匠が…

「ベイ博士、奴等の戦闘機は291機です」

ベイは頷きながら…

「全機撃ち落として下さい」


「了解しました」


そう言い終わった瞬間、

スカイシップの胴体全体から光の玉が

発射された…

次の瞬間、戦闘機は大爆発を起こし

空のチリとなった…


各国のパイロット達は唖然とした

(…はあ?…マッハのスピードで

飛び回っている戦闘機を

一瞬で撃ち落とすって何だよ…怖いよ…)

そう思っている時に、


パイロット達の耳元に…

ベイの声が聞こえた…


「勇敢なパイロットの皆さん、

御苦労でした。

皆さんが太平洋上空を守って

下さったおかげで、

私達は、宇宙空間に居た、

3機の球体を破壊する事が出来ました。

皆さんが居なければ、

地球はどうなっていたか…

考えただけでゾッとします。

皆さんは地球を守られた

英雄です、

本当に、ありがとうございました」


パイロット達の顔はアッと言う間に

赤くなり…


「まいったな、そんなに真っ直ぐに褒められてもなぁ…嬉しいけど…

でも…仲間が…たくさん亡くなってるんだよ…

その家族の悲しみを考えるとなぁ…

それに、俺達も燃料が無いから

帰れそうも無いし…」

と言いながら燃料計器を見ると


「えっ?満タンになってるし…

えっ?どうやったの?…

ベイ博士って…本当に何者なんだよ…」


そんな独り言を言いながら、

大きく旋回して…

自分達の空軍基地に帰って行った。


女将 はブラウン家族に…

「皆さん、怖い思いをさせてしまって

御免なさいね、地上に帰りましょうね」


するとレイチェルが…

「私達の事を気遣って下さり…

本当にありがとうございました」

そう言って頭を下げると、

ブラウンもトムもニーナも

一緒に頭を下げた。


そして13秒後、

ブラウン一家とホワイトホテルは…

自分達の大地に、

数ミリの狂いもなく

帰って来る事が出来た。


空に飛び立つスカイシップに

手を振る4人、

スカイシップが見えなくなると

レイチェルが…手を一回、

パンッと鳴らした。


「さあ…皆さんが帰って来るまで…

4時間、

美味しい夕食を用意するわよ」

ブラウンとトムとニーナが一斉に

「オッ〜」と言いながら、

右手を高々と上げた。


今現在、スカイシップは…南極の上空

2万mの場所を漂っていた。


シップの中の第1格納庫には、

5828匹のホタル達が召集されていた。

真っ白な床にホタル達は50センチ間隔に

キッチリと並んでいる、

そこに…ベイ達、10名が降りて来た。


まず、女将が前に出て…

「皆んな…御苦労様。

今回は、かなり怖い目に遭って

しまったわね、ゴメンなさいね、

大丈夫だった?」


そう優しく声を掛けると、

女の子のホタル達がいっせいに…

「はーい、大丈夫でした」

と、可愛い声で応えてくれた。


次に匠が…

「日頃の君達の働きに…

どれだけ感謝しているか、

いつもパワフルな活動、

本当にありがとう…」

と言うと、

男の子のホタル達は、一斉に拳を掲げ…

「おおっ〜」と言いながら、

立ち上がってくれた。


匠が…右手を軽く上げた…

すると天井から2914の

光のアームが降りてきた。

ホタル達は…

抱えていたパイロットの肉片を放し、

左に25センチほど移動した。


光のアームは…

その小さな肉片を優しく包み込んだ…


20秒後、死んだはずのパイロット達の姿がニョキニョキと立ち上がり…

10秒後、

ホタル達が主人の両肩に戻ると、

パイロット達が目を開けた。


3秒後、

パイロット達は周りを見回しながら、

「ウオォッ〜」と…絶叫した。


2914名の先頭に…リチャードスミスが立って居た…

リチャードはベイの姿を見つけると…

「ベイ博士、私達が今ここに居ると

言う事は…」


「はい、皆さんが、太平洋上空を守ってくださったおかげで…

宇宙空間に居た奴等の3機の球体も、

航空母艦も、

エイリアンの戦闘機も、

全て居なく成りました!」


リチャードスミスは満面の笑みで…

パイロット達の方に振り返り…

「皆さん…私が無線で言っていた、

天才科学者のベイ博士です!」

と言うと…

格納庫の中は…

割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。


女将はベイの耳元で…

「最高会議室の方に、

パイロットの皆さんを送って

行った方がいいですか?」

と尋ねると…


ベイは…

「いえ…各国の空軍基地に送って

頂いた方が…

たぶん家族の方々が駆けつけていると

思うんですよ…」


女将は頷きながら…

「そうですね、でわ順番に基地の方に…

その前に、

パイロットの皆さんに、

ソファーに座って頂き…

軽食と飲み物を

出させて頂きますね」

そう言い終わった瞬間…

床からソファーが出て来た。


女将は更に…

「ベイ博士はどうなさいますか?

最高会議室に顔を出されますか?」


「いえ、メッセージだけを送ります、

たぶんその方がいいと思います」

そう言って…

ベイ達はいったん…ブリッジに戻った。


ベイは最高会議室に向けて、

音声だけのメッセージを送った。


「緊急事態は解除されました。

各国の…パイロットの方達の働きによるものです、ありがとうございました。

また私を信じて、

空軍を出動させて下さった

各国の代表の皆さん、

ありがとうございました。

今回の作戦を、

影で支えて下さった皆さん、

本当に御苦労様でした。

そして最後に…

私達を信じて下さった、

アメリカ合衆国大統領に…感謝します!」


ベイのメッセージを聞いた

最高会議室の中は、

はち切れんばかりの歓声に沸き立った!


しかし、各国の代表者達は、

(…沢山のパイロット達を犠牲にしてしまった…家族の方々に申し訳ない…)

と言う思いにかられていた。


ジョニーはベイに向かい…

「各国の代表者達は…

ベイ博士に会いたいでしょうね」


「そうだね、自分の国に

僕達の科学力が欲しいだろうね…

そう思ったから行かずに…

メッセージ…だけにしたんだけどね…

僕達は、悪魔の使いだぁ、って言って居るくらいが…ちょうどいいんだよ」

そう言って微笑むと…


ジョニーは小さく頷いた後に…

「…ベイ博士は…昔っから、本当に…

欲が無いですね」

と言った。


するとベイは、急にメリーを抱き寄せ、

かなり真面目な顔で…


「ジョニー、君をガッカリさせて悪いけど、僕はドロドロとした欲の固まりだよ、

どう言う理由を見つけて

メリーを裸にしようか!

どうやってメリーのお尻に顔を埋めようか!

もう〜そんな事ばっかり考えている、

本当にエッチな奴だよ!」


ボブが笑いながら

「そっちの欲かい」と突っ込んだ。


するとグレイが…

「でも兄さん、

ベイ博士がおっしゃる通り、

僕も、ルーシーを独り占めにしたい、

と言う独占欲がとても強いです」


ボブは義理の弟からの

突っ込み返しに、

何気なく妹の顔を見た、

嬉しそうに…

グレイの腕に抱きついている…

その妹の姿が…とても輝いて見えた…


(…良かったなぁルーシー、

グレイがお前の事を大好きで…)

そう思っている時…

ボブの背中に…柔らかな感触が…

リンダの胸である。


リンダはボブを後ろから抱きしめると…

「私も常にボブを独占したい、

心の中はそんな思いで…いっぱいなのよ」

そう言って…

ボブの耳たぶを…

甘噛みした。


ジョニーは自分の頭をさすりながら…

「すみません、ベイ博士は…

欲の固まりだったんですね、

僕もアンジーに対して同じ欲を持っているのでよく分かりました」


「ごめんよジョニー、

締まりのない代表で…

とにかく、僕の心の中では、

メリーが一番大切なんだ…

中心なんだよ。

時には僕も…難しい事を考えるけどさ…

でもメリーなんだ、

とにかく、メリーが大事なんだ」


するとメリーは真っ赤な顔で…

「ベイ…どうしよう…足の指先まで熱い…」

「えっ…大丈夫…」

「ぜんぜん大丈夫じゃない…

ベイが私のことばっかり

思っているからよ」

「だって大好きなんだ…」

「ダメ〜」

そう言って…

メリーはベイの唇を…

キスで押さえ込んだ。


これ以上、愛を語られたら

理性を失うと思ったからである。


各国の空軍基地…

集まったパイロットの家族達は…

暗く沈んでいた。


自分の息子、あるいは夫、

あるいは父親が…

生きて帰って来た人達はいい…


しかし、ジェット機すら帰って来ないと

言う事は…

テレビのニュース番組で見た、

あの映像…

爆破されて、

炎に包まれたジェット機に…

乗っていた事になる。


パイロット達が…

脱出する事すら出来なかった壮絶な戦い…

エイリアンの戦闘機を道連れに、

大破していったパイロット達。


航空母艦に、ミサイルを抱えたまま…

突っ込んで行ったパイロット達。


空軍に主人が入っている、

その段階で覚悟はしている…


イヤ…していない…

したくない。

自分の夫だけは、

奇跡的に、帰って来てくれるんじゃないか…

そんな風に…

思っていた。


あるアメリカの空軍基地に…

1機、また1機と…

ジェット機が帰ってくる…

パイロットの家族達は…

駐車場の金網に

しがみ付いていた。


双眼鏡を覗きながら「あっ…」

そして、急に小さな声で…

「母さん、兄さんが帰って来た!」

そう言って抱きしめ合う親子、

周りの人達の事を考えて、

声を抑え、

遠慮がちに喜んでいる…

そう言った家族ばかりであった。


しかし、いくら待っても帰ってこない

家族達は、

腰から崩れ落ち…

立って居る事すら出来ない状態に成った。


その時である、

テレビの画像にチラッと映った、

変な乗り物が…いきなり目の前に現れた。


それも、沢山のジェット機の真ん中に、

いきなりパッと現れたのだ。

(…なに?…まさかエイリアン…)

そう思って

誰もが固まってしまった。


すると、変な乗り物が一瞬…

パッと光った。

誰もが(眩しい…)と思って目を閉じた…

そして恐る恐る目を開けると、

変な乗り物の姿が無く…

その場所に、

42名のパイロットが立って居た。


「…えっ?えっ〜?…」

自分の息子が、

父親が、

夫が立って居るのだ、

夢でも、幻でも、幽霊でもない…

パイロット達は…

自分の家族の姿を見つけると

「オッーイ、帰って来たよ、

生きて帰って来たよ!」

そう言って…手を振っている。


それに対して…

何度も目を擦りながら、

金網越しに見直す家族達…

やがて…

「お父さんだー」と言う…

子供の声を

キッカケに、歓声と絶叫の嵐が

巻き起こった。


生きて、戦闘機に乗って帰って来た

パイロットと、

生き返らせてもらい、

身体だけで帰って来たパイロット達は…

お互いの健闘を称え合い…

抱きしめ合って、泣いている。


その時、本来なら…

開けてはいけない空軍基地の扉が開いた…

駆け寄る家族とパイロット達…

「良かった、本当に良かった…」

歓声と涙の抱擁…

家族達は内心…

(ジェット機も無いのに…どうやって帰って来たんだろう…)

と思ったが、

そんな事は一切口に出さず…


「神様って本当に居たのね、

主人を返してくれて、

ありがとうございます…」

そう言って主人に抱き着いた。


すると…

「いや、あの〜神様じゃないんだ、

ベイ博士と言う、天才科学者の方に助けて

貰ったんだ…」

パイロット達は更に続きを話そうとした…

しかし…

奥さんや子供達からのキスで、

言葉は全て途切れてしまった。


妻からすれば、神様でも科学者でも、

そんな事どうでもよいのである、

とにかく

生きている夫に…

父に…息子に…

…キスを出来る事が嬉しいのだ。


スカイシップは、各国の空軍基地を…

順番に回って行った。

どの基地も暗く落ち込んでいた…

しかし、

死んだはずのパイロットが現れると…

割れんばかりの…拍手と奇声、

そして…歓声と涙…

抱擁とキスの連続に成った。


「ごめんよ、心配したかい…」

と言う夫の言葉に…

妻は涙で言葉が出ない…

泣くだけ泣いた後に…

「…あなた、お願い…除隊して!」

「えっ?」

「空軍に…残りたいなら…

地上勤務に変わって欲しいの…

貴方を失いたくないの」

「…わかった、うん、わかったよ…」

そう言って…

パイロットは妻を強く抱きしめて…

キスをした。


とにかく、

そう言うセリフを言った夫婦が

沢山いたと言う事だけを…

付け加えて置きたい。


 〈 私のヒーロー 〉


スカイシップが最後に向かったのは、

日本の空軍基地である。


軍の関係者達も、パイロットの家族達も

…黙って空を見上げていた。


ドローンの技術進化により、

太平洋上空の空中戦が、

あまりにも鮮明に

テレビ中継されていたので、

日本のパイロットは……


誰一人として帰って来ない事を…

誰もが分かっていたからである。


地球を守る為に、家族を守る為に

パイロット達は、

自らの命を惜しむ事なく

捧げたのである。


世界中のメディアは、

英雄と言う言葉をふんだんに使い

彼らの行動を讃えてくれたが…


父親を亡くした子供達や、

夫を亡くした妻達は…

(英雄なんかじゃなくていい…

生きて帰って来て欲しかった…)

心の奥で、そう思っていた。


しかし、自分達が取り乱し…

パイロットの名誉に傷をつけては

いけないと…

グッと下腹に力を入れて

泣かない様に、

涙が落ちないように、

空を見上げていたのである。


その様子をスカイシップの中から見ていた

日本のパイロット達は…

「…ごめん…本当にごめんな…」

と家族に向かって謝る事しか出来なかった。


ベイは微笑みながら…

「皆さん、今回の戦い、本当にありがとうございました。

また、ご家族の方に

悲しい思いをさせてしまい、

誠に申し訳ありませんでした」

そう言って頭を下げた。


パイロット達は…

(生き返らせて貰って、

こちらこそ、ありがとうございました)

と、そう思っていたが、

感極まって声が出ず…

自分達も、とりあえず

頭を下げ返す事しか出来なかった。


匠がベイの耳元で…

「皆さん…罪の無い、

善人ばかりで良かったですね」


「はい、匠さんのおっしゃる通りです、

悪い事をされた人は、

亡くなった後に、

黒い影に連れて行かれますもんね、

今の私達には、連れ戻す方法が分からないですからね…


今回の作戦に参加された

世界中のパイロットの方達が…

本当に正しい方達ばかりで良かったです」


そう言って、

横にいるメリーの手を…

ソッと握った。


スカイシップは滑走路に降りると…

透明シールドを解除した。


得体の知れない大きな物が、

いきなり目の前に現れた、


軍の関係者をはじめ、

家族も

マスコミも

全員が固まってしまった。


ベイはパイロット達に向かい…

「皆さん、今回の戦いに参加して頂き…

本当にありがとうございました。

家族の方達が首を長くして

待っておられます、

ここでお別れです、

お元気で…」


日本のパイロット達は、

先に降りて行った、

各国のパイロット達を見送っているので…

ベイ博士の…

「お元気で」と言う言葉をきっかけに、

全員がビシッと、

45度前方に頭を下げた。


その後、隊長である田口が一歩前に出ると

「生き返らせて頂き…

本当にありがとうございました。

なんと御礼を言えば良いのか、

あの…一つ質問しても宜しいですか?」


「はい、何でも聞いて下さい」

「あの…ベイ博士は仏様なんですか?」

と尋ねた、

仏教の国…日本の人らしい質問である。


ベイは小さく首を横に振りながら

「違いますよ、悪い人です。

自然の摂理とか、

色々な世の中の常識を

くつがえすような事をしています、

悪魔の使いだと思って下さい」 


「…しかし、地球を守ってくださいました」


「気まぐれですよ、明日から悪い事をしますので…覚悟しておいてください」


そう言って微笑んだ。


56人のパイロット達は小さく笑いながら(仏様のジョークって…今ひとつ

分からね〜、何で悪魔の使い、

なんて言うんだろう?)

と思っている時に、

いきなり

目の前の風景がパッと変わり…


56人はスカイシップの外に出ていた。


そして…

目の前には家族の姿が……

まずは絶叫…

次に…歓声を上げながら駆け寄る家族達、

その後は…涙と抱擁とキスである。


軍の関係者は…驚きのあまり…

その場を動けず、

マスメディアの中心者は…

「奇跡の映像だ!急いでスタジオと

中継繋いで!

他の映像は後でいいから!」


そしてスカイシップはもう一度

透明シールドを張ると、

一気に高度1万mの高さに上がった。


デッキの中で

喜び合っている人達を見ながら、

ベイがポツリと呟いた…

「終わったなぁ…やっと終わった…

復讐も…地球を守る事も…」


隣に居るメリーは、

ベイの左腕を自分の胸の中に包み込み…


「良かった、ベイの復讐が無事に終わって。そして良かった、犠牲者が1人もいなくて」

そう言って微笑んだ。


すると匠が…

「ベイ博士、太平洋の島々に張っていた

シャボン玉シールドと、

各国の沿岸沿いに立てて居た…

ゼリーシールドを

全て解除しました」


「何から何まで…

最後の最後まで…本当に…

ありがとうございました」

そう言いながら頭を下げるベイに…

匠と女将はニッコリと微笑んだ。


今回…空軍基地まで送ってもらった各国のパイロット達は、

生き返らせて貰えた事を感謝しながら、

心の中で…

(もう二度とあの方達には会えないん

だろうなぁ…)と言う、

一抹の寂しさを感じていた。


しかし、先の話になるが、

彼らは自分の生涯の内に、

2回から3回…

スカイシップ・ファミリーの誰かに

会う事になる。


それはパイロット自身が病気になったり、

妻が事故に遭ったり、

子供が災害に巻き込まれたりと、

事情は様々であるが、


何時もの通りに…

壁から出て来たり、

空から降りて来たりして…

そして…再開を喜びつつ…

助けてもらう事になる。


そして、その中で一番会う機会が多く…

一番最初に再会したのは

リチャードスミス氏である。


彼は今、車の中で小さく震えていた。


10ヶ月ほど前に

最愛の妻マーガレットが、

原因不明の病気だと診断され、

入院を余儀なくされていたのである。


空軍基地に戻り…

仲間達と無事帰還できた事を

喜び合っている時に…

「すみません…今、病院から電話があり…

奥様の容態が…」

リチャードスミスは軍の車で病院に

送ってもらい、


車から降りると、

三階にある妻の病室まで、

一気に駆け上がって行った。


病室のドアを開けようとすると…

先にドアが開き、

中から三人のドクターと

四人のナースが出てきた…

「あの、妻は…」

「お気の毒ですが…詳しい事は後ほど

説明させて頂きます」

そう言って、病室から出て行った。


部屋の中に入ると…

14歳になる一人娘のパトリシアが、

母マーガレットの手を握りしめながら…

泣きじゃくっていた。


「すまない、パパ、間に合わなかったな…」そう言って後ろから声をかけると、

パトリシアは顔を上げ


「パパ…ママがね…パパは地球を救う為に

戦う、ヒーローの…一人なのよ…

だからママの側にいては…

いけないのよ、って…

ママね、

学生時代からパパの事が大好きで…

今日までとっても

幸せだった…って、

2分前まで…

パパを待っていたのよ…

パパ、ママに触って…まだ温かいわ」

そう言うと自分は立ち上がり、

母の手を父に渡した。


リチャードは妻の右手を両手で包むと…

「遅くなって、ごめん……」

そう言うのが精一杯で…

後は…声を押し殺して…

泣き出してしまった。


そこに、

黒装束のベイ達8人が入って来た。


リチャードの肩にも、

パトリシアの肩にも、

そしてマーガレットの肩にも、

ホタル達がチョコンと乗っている…

6匹はベイ達の顔を見つけると…

嬉しかったのか?

満面の笑みで手を振り出した。


8人は微笑みながら、

小さく頷き、

そして手を振り返した。


パトリシアは…

8人を見て、とっさに…

(…パパの同僚の方が来て下さった…)

と思ったのか、

こぼれ落ちる涙を必死でぬぐいながら、

平静な表情を作ろうとしたが、

とにかく涙が止まらない…


その時、

母性本能が強いリンダが…

スッとパトリシアの前に行くと…

黙って両手を大きく広げた。


お互いに初対面なのだが、

パトリシアはリンダの胸の中に、

大きな愛情を感じたのか、

吸い込まれるように入っていった。


強く抱きしめるリンダ、

背中をさするアンジー、

頭をなぜるルーシー、

周りを囲むボブとジョニーとグレイ…

パトリシアはとうとう……

大声で泣き出してしまった。


ベイとメリーは…

マーガレットがねむる

ベットの横に向かった。


顔を伏せて泣いているリチャードスミスは、妻と初めて会った時から…

今日までの事を、

順番に思い出しているのか…

周りに人が来ても…

気付かない。


メリーはその間に

「フリー・メー、サポートよろしくね…」

と言いながら、

マーガレットを生き返らた。


ベイはリチャードスミスの肩を…

ソッと触った…

「リチャードさん…」

スミスは、声のする方に目を向けた…

「改めまして、今回は本当に…

ありがとうございました。

貴方の助言が無ければ、

大統領は、動いて下さらなかったと

思います」


リチャードは、涙を拭きながら立ち上がり…

「とんでもないです…」

そう言って恐縮した。


ベイは微笑みながら…

「急に押しかけて来たのは、

リチャードスミスさんと、

お友達になりたくて……

あの…奥様と、お嬢さんを紹介して

頂けませんか?」と言った。


するとリチャードは、

妻を亡くした事で気が動転しているのか…

「…さきほど…妻が…亡くなりまして…」

完全に自分が生き返らせてもらった

事を忘れていた。


ベイが更に…

「あの、リチャードさん…」

と言った時である、後ろから…

「はじめまして…

私はマーガレットと申します、

リチャードスミスの妻です」


リチャードは(えっー?)と思いながら

振り返った。

「あなた、お帰りなさい、

出迎えが出来なくてごめんなさい、

私ちょっと、死んじゃってて…」


「いいんだよマーガレット…

実は僕も…2回…死んでしまったんだ」

「そうなの?」

「うん、こちらに居られるベイ博士に生き返らせて頂いたんだ、

マーガレット良かった…

君が居ない毎日なんて、僕には

耐えられないよ!」


そう言ってリチャードは、

マーガレットを強く抱きしめて…

キスをした。


パトリシアを抱きしめているリンダは、

その様子を見ながら…

(よし1回キスをした…

2回目もキスをしたな…

3回目、よし、もういいだろう…)

パトリシアを胸の中からソッと離し…


「もう泣かないで、

ほら…お母様が帰って来られたわよ」

そう言ってパトリシアの身体を

ベットの方に向けた


「えっ?ママ?」

と言う声に気づいた両親は

娘を手招きした、

パトリシアの奇声と喜びの足ぶみ。


なかなか前に進まないので…

リンダとアンジーが左右から手を添えて、

パトリシアを両親の元に連れて

行ってあげた。


母と娘が抱きしめ合う隣で、

リチャードスミスはベイに…

「どれだけ感謝しても…しきれません、

何と…御礼を言えば良いのか…」

そう言って涙を流している。


その時…

リチャードスミスの携帯電話が鳴った、

見覚えのない電話番号が表示されている

(誰だろう?…イタズラ電話か…

何かの勧誘か…

間違い電話なら…

出ない方がいいかな)


そう考えている時に、

フリー・ベーがベイの耳元で


「ベイ博士、リチャードスミスさんに電話を掛けておられるのは、

アメリカ大統領です」


「ありがとう、フリー・ベー」

ベイはリチャードスミスに向かい…


「その電話は大統領からです、

出られた方がいいのでは…」


リチャードスミスは慌てて電話に出た…

「出るのが遅くなりまして、すみません…

はい、ありがとうござます…

そうです、

アメリカ空軍だけではなく

各国のパイロット全員が…

生き返らせて頂きました…

すみません…

私には分かりません…

はい…と言われてましても…」


フリー・ベーが…ベイの耳元で…

「無事で良かったと言う事、

どうやって生き返らせてもらったのか

と言う質問、

ベイ博士に会えないだろうかと言う、

大統領からのお願いです」

と内容を教えてくれた。


ベイは頷きながら、メリーの耳元で…

「僕が、どこか特定の国の代表と仲良くしたらマズイよね」

「そうね…かなりマズイわね…」


その小さな会話を聞いた

リチャードスミスは…

「…すみません大統領、

気が動転していたものですから…

はい…何も聴く事が出来ませんでした、

申し訳ありません…はい……

はい…失礼します…」

と言って電話を切った。


ベイは微笑みながら…

「ありがとうございます、

助けていただいて」

「とんでもないです、

助けていただいたのは

私と妻と、

各国のパイロット………


そして地球です。


先ほどベイ博士と奥様が、

特定の国の代表と仲良くしたらマズイ、

と言われている声が

聞こえたものですから」


〈 御二人は日本人 〉


「あっ、聞こえていましたか、

すみません気を遣っていただいて…」


「とんでもありません、…友達が秘密にしたいと言う事は……他言はしません。

あの…改めまして、妻のマーガレット、

そして娘のパトリシアです」


そう言って2人を紹介してくれた。


ベイは満面の笑みを浮かべながら

「友達に成って頂き、

ありがとうございます、

私も家族を紹介させて頂きます」

そう言って

皆んなを順番に紹介していった。


楽しい会話で盛り上がっているが、

ここは、あくまでも病院である、

それも先程…1人の女性が亡くなった…

病室である。


廊下に微かに聞こえる笑い声……

部屋の前を通りかかった1人のナースが、

首を傾げながら…ソッと中を覗いた


(えっ〜?この部屋の患者さんは…

亡くなったって、聞いていたけどな…

私の聞き間違いかしら…)

ナースは急いで、

ドクター達に知らせに行った。


三人のドクターは、お互いに顔を見合わせ…

小さく首を傾げ…

(ナースが部屋を間違えたんじゃないかな?)と思ったが…

「…念の為に」と言う1人の

ドクターの言葉に、

3人のドクターと婦長を含めた

4人のナースが

マーガレットの病室に向かった。


婦長が優しくドアをノックすると

「はい、どうぞ…」と言うパトリシアの

明るい声が…婦長は…


(んっ?お母様が亡くなられたのに…

明るい声ね…)

と思いつつ

「すみません、少し確かめたい事が…」

そう言ってドアを開け…

頭を下げた状態で…

「実は、お母様の事でチョットお話を…」

と言った。


するとベットの方から…

「はい…何かしら…私がどうか

しましたか?…」

と言う声が…

マーガレット本人である。


(えっー!?…此の部屋の患者さんは…

亡くなられたはずなのに…)

と思いながら…

お互いの顔を見合す7人。


しかし、現に今…

目の前に座っているのは…

マーガレット夫人である。


ドクターの1人が…

「あの…何があったんですか…あの…

その…亡くなられましたよね」

と遠慮がちに尋ねた。


その時…

アンジーが、リチャード夫妻の前にサッと

立ちはだかり…

「お前ら、訳の分からない質問を

するんじゃないよ、

いにしえの昔から、不思議な出来事は、

悪魔の仕業と相場が決まって居るだろう…」そう言って7人を睨みつけた。


7人は一歩下がりながら

(やっベー、さっきから気になってる

黒装束の人が動き出したよ〜

自分の事を、悪魔だと言っているし、

絶対に危ない奴やん…)

と思った。


アンジーの後ろに…ジョニーも入って来た。


ジョニーは、ニヤリと不敵な笑みを

浮かべた後に…

「俺達8人は気まぐれな悪魔の使いだ…

ベットに居る女性を生き返らせたのは…

俺達だ…何か文句でも…あるのかな?」

と言った。


7人は…

(えっ〜、生き返らせたって、マジかよ〜)と思ったが、怖いので…

黙って首を横に振った。


ジョニーは…1人のドクターを指差して…

「アンタの女房は難病に侵されて…

この病院に入院して居る、

しかも、余命3か月と診断されて

いるんだよな…」


42歳のドクターは顔を引きつらせながら「なっ、なぜその事を…?」

ジョニーはニヤリと微笑んだ後に…

「悪魔の使いだからさ〜、

何だって知ってるんだよ〜」

と言って指をパチンッと鳴らした。


7人が…

(えっ?)と思った次の瞬間である、

パジャマ姿の1人の女性が、

目の前にパッと現れた。


それも御丁寧に…

床から30センチほど浮いた状態で

横たわって居るのだ。


ジョニーは心の中で…

(匠さん、タイミングがぴったりです!)

と思った。


すると1人のドクターが…

「ソフィア…」

と叫びながら、妻を抱きしめた。


ジョニーは、

立っている2人のドクターに向かい…

「助けてやらないのか?

余命3か月だってよ、苦しそうだぜ、

仲間の女房なんだろう…

なぁ…助けてやれよ…」と言った。


誰も言葉が出ない…

今の医学では太刀打ちが出来なかったのだ。

その時、

アンジーの両手がソフィアの身体に触れた…(何をするつもりだ?…)

7人は顔をしかめた…

しかし、わずか3秒足らずでソフィアの顔色が…見る見るうちに良くなって行くのが

分かる、

やがて苦しげに閉ざされた目が

パチッと開くと…


「…えっ?…あなた…私…病気…治ったの?

…ぜんぜん息苦しく無いの」

そう言って夫を見つめた。


ドクターはアンジーに向かい…

「神様だったのですね……

失礼な事を言ってすみませんでした。

ありがとうございました…」

そう言いながら、

妻を抱きしめた。


他の6人は…

目を見開いたままで絶句して居る。


するとジョニーが笑いながら…

「神様じゃないよ…

悪魔の使いだと言っているじゃないか、

どうだい俺達悪魔の信者になるかい…」

そう言ってポーズを決めた。


当然ジョークである。


しかし、妻を助けてもらったドクターに

冗談は通用しない、

ドクターは真剣な表情で…

「はい、入会します、よろしく

お願いします」

そう言って頭を下げた。


ジョニーはアンジーと顔を見合わせると…

「いやいや待って、待って、違うって、

ジョークに決まってるじゃん、

そんな組織作ってないし、

そこは「何だそれ」って言う顔で僕達を

睨んでくれないと

話が先に進まないから、

ドクターって真面目なんだね、

嘘に決まってるじゃん…」


ジョニーの言い方にアンジーは思わず

吹き出してしまった…

「ジョニー笑わさないで、

せっかくミステリアスな感じで

頑張っているのに〜」


「ゴメン…だって

ドクターが余りにも生真面目な

もんだからツッコミを入れちゃったよ」

「モゥ〜…」

と言いながらアンジーが肩をすくめた

時である。


後ろからベイが入って来て…

「少しコミカルな感じになっちゃったけど、悪魔の使いだと言う事も

主張出来たし、

ぼちぼちスカイシップに帰ろうか?」


7人が頷き合うと、

ベイは、リチャードスミスの前に進み…

「もしも、リチャードさんの方から私に

連絡したい時には、

この数字を押して下さい…」

そう言ってメモを手渡した。


リチャードは直ぐにメモを開いた…

(えっ?数字の…3…だけ?)と思いながらベイの顔を見つめた…

ベイは頷きながら…

「シンプルなものにしました、

スマホでも、パソコンでも、

固定電話でも繋がります…

ではまた、日を改めて食事でも…」

と言うと、

リチャード夫妻と、娘のパトリシアは満面の笑みを浮かべ…

「はい」と返事をしてくれた。


ベイは微笑みながら…

「女将さん、お願いします…」

そう言ってメリーの横に立った。


ボブがリンダの、

ジョニーがアンジーの、

グレイがルーシーの手を握った時…

8人の身体がフワッと光り…

病室の中に居る人達が…

(えっ?)

思った次の瞬間、


8人の姿が部屋の中から

パッと消えた。


リチャードスミスを除いた人達が…

息を呑み…

驚いたのは言うまでもない。


婦長が思わず…

「すみません、リチャードさん…

あの方達は…」

リチャードは妻を見つめながら…

「…なぜか、御自分達の事を…

悪魔の使いだと言われる…神様です」

と言った。


リチャードはあえて、

天才科学者だとは言わなかった、

自分自身が…神様だと思っていた

からである。


婦長は小さく頷いた後に…

「神様って本当に居たのね…」

納得するドクターとナース。


医療関係者の声には説得力がある、

ベイ達の事は

あっという間に病院内に広がり…

数日後には…ネットや、

ニュース番組も

手伝って、

町中に神様の話しが広まる事に成った。


スカイシップに戻った8人…

「お帰りなさいベイ博士、全てが上手く行きましたね…」

そう匠が声をかけてくれた。


するとベイは…

「僕を除いた…皆んなのお陰で、

無事…恨みを晴らす事が出来ました。


もう胸の中に有ったモヤモヤした物が、

スッと消えました…

僕のワガママから始まった復讐劇に、

皆んなを巻き込んでしまって、

本当にゴメンなさい…

もうこれで全て終わりました」

そう言って頭を下げた。


復讐と言う名の呪縛から…

開放された8人の笑顔は、

本当に嬉しそうであった。


そんな時…女将が少し遠慮がちに…

「…ベイ博士、1つお聞きしたい事が

あるのですが…」

「はい、何でしょうか?…」


女将はゆっくりとした口調で…

「世界代表会議の席上で、

悪い奴らを大統領に渡した訳ですが…

ベイ博士が…

考えておられる復讐は…

あれで終わりで、宜しいのですか?」


「…んっ〜、そのつもりなんですけど、

良くなかった…ですかね?」


「そうですね…実は…

悪い奴らを利用しようとする、

更に悪い奴らが出て来まして、

奴らを…利用する事を考えています」


「現在進行形ですか?」

「はい、新しい悪い奴等が今、

大統領に対して…

『彼等の処分は私達の部門でします』

と言い出しました」


「大統領は何と?」

「信頼している幹部の一人ですから…

『よろしく頼むよ』と言って、

今、握手を交わしました」


「まずい事になって来ましたね」

「はい、大変マズイです…

きっと奴等は、

牢屋に入る事も無いでしょう」


すると

メリーが横から…

「しかし、次から次から、悪い奴って出て来るもんなのね…」

そう言って眉をしかめると…


リンダも…

「悪い事だと思ってないんじゃないのかしら、自分達は正しい…

あるいは、

このくらいの事は許されるはずだ、

何て考えているんじゃないかしら?」


ルーシーは腕組みをしながら…

「世界を征服したい…って

思っているのかしら?」


そう言ってリンダの顔を見ると…


「私は世界よりも、ボブがいいわ」

と言った…ボブは真っ赤な顔で…

「ありがとうリンダ…

比較する対象が、あまりにも違いすぎて

ビックリしちゃったよ」


皆んなは噴き出してしまった。


そんな中、ベイだけは冷静な表情で

「女将さん…きっと何かを考えて下さっているんですね」


女将は匠と顔を見合わせ…小さく頷きながら「あの…」と言いかけた…


するとベイは、女将の声をさえぎるような

感じで…

「お任せします。女将さんと匠さんが、

良いと思われる通りにして下さい、

宜しくお願いします」

そう言って頭を下げた。


女将は

「信頼して下さって、

ありがとうございます。

でわ、ベイ博士の御言葉に甘えて…

今…匠と私が考えた作戦を、

実行しました…」


ベイはもう一度…

静かに頭を下げた。


その時…

少し好奇心の強いグレイは、

匠と女将が、何をどうしたのか、

気になってしょうがない…

少し遠慮がちに…


「あの…どのような事をされたのか…

聞いちゃダメですか?」

と言って2人の顔を見つめた。


すると匠は、

聞いてもらえたのが逆に嬉しかったようで、軽快な口調で語り出した…

「はい、報告させて頂きます…

まず最高会議の内容は、

ホタル達の協力を得て全て記録しています、

皆さんが登場するところも…

カッコ良く撮っていますよ。


実は、

世界中のハッカー達が、

この最高会議の内容を知りたくて、

必死にアクセスを仕掛けて来たのですが…

各国の優秀なAI達は、

絶対に情報を漏らしませんでした。


しかし今回、

また悪い奴等が出て来ましたので、

私と女将はコッソリ各国のハッカー達に…

全ての情報を流しました!

其れも私どもが編集した

高画質の物を…」

そう言って親指を立てた。


グレイはルーシーの顔を見ながら…

「すごいですね、

でも、あの…僕達の顔も世界中に知られたって言う事ですか?」

すると匠は

「はい、そうです…でも皆さんは、

夫婦で仲良く手を繋いでいる感じの姿が

サラッと映っているだけですから

大丈夫です!

…あまり、見た人達の記憶には

残らないと思いますよ」


その言葉にグレイは安心したのか、

胸を撫で下ろすようなポーズをとった。


すると女将が横から…

「今回…悪い奴等の名前と住所と

電話番号まで全部出してやりました、

マスコミを筆頭に…

SNSや色々な情報機関が

奴等を叩くでしょう、

そう成ると…

もう、奴等に利用価値はありません。

と言うか、使えません。


社会の表舞台に引き出され、

まぁ社会的な制裁を、

思い切り…受ける事になるでしょうね。


でないと、

今まで殺された人達が

浮かばれませんからね」


そう言って、匠と顔を見合わせている。


ベイはそんな2人を見て、

ふと思った…

(人間的な感情が、普通に出ているじゃん…

もうAIじゃないよね…


始めは画面に文字が浮かんで、

次は声が出て、

その次は…画面の中に、匠さんと女将さんの映像が出て来て…

やがて煙の様な感じで立体化され、

少し前から…船内の中を普通に

歩き回っているし、


それに、いつの間にか生身の

人間ような肉体に成っているし…

めちゃくちゃ進化してるじゃん…


変わって無いのは…

外見がずっと日本人であり…

着物姿と言う所だけ…

ここのこだわりは強いんだなぁ…)

と思いながら…

ニンマリとしてしまった。


そんな時、

ジョニーが自分の頭を

ポリポリとかきながら…

「あの…ベイ博士、1つ質問をしても

いいですか?」


「なんだいジョニーあらたまって、

僕とメリーの夫婦の営み以外の事なら

何でも聞いてくれていいよ、

でも、どうしても知りたいなら

教えるけど」


デッキの中は大爆笑である。


ジョニーは笑いながら…

「ベイ博士、大丈夫です、

そのような質問は、絶対にしません!」


「ごめん、ごめん、質問を茶化してはいけないよね。何を聞きたいのかな?」


「ずっと前から気になっていたんですけど…女将さんと匠さんは、

なぜ日本人なんですか?」


「えっ?、何でと聞かれても…

僕にも分からないよ、と言うか、

僕も今さっき同じ事を考えていたんだよ…」と言いながらベイは

女将と匠の顔を見つめ…


「…あの…聞いてもいいですか?

なぜ日本人なのか?」

と尋ねた、

匠と女将は顔を見合わせて

キョトンとしている。


しかし、一番(えっ〜)

と思ったのはジョニーである。

ベイの顔を見ながら…

(…いやいや、貴方が作ったんでしょ…?)と思った。


女将は少し困惑気味な表情で…

「私と匠の姿が日本人なのは、

ベイ博士が私達2人をプログラムして下さった時に…

御自分が影響を受けた

日本の作家の話しをされながら、

私達2人に…

匠と、女将…と言う名前をつけて

下さったので…

私と匠は日本の歴史を調べ、

特に明治、大正時代に残っている

日本の女性と、

男性の写真を見ながら…

この姿にたどり着きました。


私と匠は…今の姿を気に入っていますが、

皆さんはどう思われますか?」


突然の質問返しに…

8人は一瞬息を飲んだが…

「…すっごく似合ってますよ、

名前にピッタリと言う感じだし、

おしとやかで、品があって…」

とメリーが言うと、


リンダも…

「私もそう思うわ、着物姿がとても

きちっとしてて素敵です」

と言った。


するとアンジーも…

「立ち振る舞い方が、落ち着いているし」

と言うと、

横からルーシーが

「以前から思っていたんだけど、

黒髪って神秘的な感じで素敵よね」

と言った。


ジョニーは、女将さんの説明を聞いて大いに納得したのか…

「すみません急に質問なんかして、

でも今の女将さんの説明を聞いて、

あぁベイ博士の想いがこもった…

御二人の姿なんだって、

理解することが出来ました。

質問に答えて下さって、

ありがとうございます」

そう言って微笑んだ。


するとベイが……

「私の想いを反映させて下さった上での、

今の御姿なんですね、

ありがとうございます、

そして今まで気づかずに、

本当にすみませんでした…」

そう言って深々と頭を下げた。


〈 人間が好き 〉


匠が恐縮しながら……

「ベイ博士、頭を上げて下さい…」

と言うと、女将も…

「なぜ日本人の姿を選んだのか、

報告しなかった私達が悪いんです」

そう言って2人は深々と頭を下げ返した。


するとベイは…

もう一度頭を下げて……

「いえいえ…気がつかない私が悪いんです…」と言った…

するとまた女将と匠が…

「とんでもありません…」

と言って頭を下げた…

拉致が開かないと思った7人と、

フリー達は……

とうとう笑い出してしまった。


スカイシップの中は何時も楽しい…

緊張感と、和らいだ雰囲気のバランスが、

本当に良いのかも知れない。


フリー達が、

ブリッジの中央に集まって何かを

相談している…

話しがまとまったのか、

フリー・ジーが良く通る声で…


「皆さん、ブラウンさんが、

『さあ、ディナーの準備が出来たぞ、あとは皆さんのお帰りを待つばかりだ』

と言っておられます」


皆んなは…

(あっ、もうそんなに時間が経ったんだ…)

と思った。


すると次にフリー・アーが…

「皆さん…レイチェルさんが

『匠さんと女将さんの分も作ったけど…

来て下さるかしら』と言っておられます」


女将と匠は…

(えっ?私達も…)

と思いながら、顔を見合わせて驚いている。


フリー・メーはそんな2人に…


「匠様、女将様、スカイシップの留守場は、私達8体に任せて下さい」

と言って頭を下げた。


女将は微笑みながら…ベイの顔を見た。

ベイは満面の笑みで…

「一緒に行きましょう。

そして、これから先も…

ずっと一緒に行動しましょう……

私達は家族でしょ…」と言った。


匠と女将は

目頭を押さえている、

もう完璧な人間である。


女将は匠の手を握りしめながら…

「皆さん、ありがとうございます、

御言葉に甘えて…出席させて頂きます」

その言葉に

8人は一斉に親指を立てて

微笑んだ。


そんな時ボブが、小さく咳払いをして

「あの…ベイ博士…全ての復讐が終わりましたんで…俺たちの気持ちを…

一言だけ…いいでしょうか…」

ベイは首を傾げながら…


「いいよ,何でも言ってくれて…」

「あの…何て言えばいいのか…

オレ達は、いつもベイ博士に

頼ってばっかりで…本当に、

すみません…その…」

と言いながら…

ボブはリンダの顔を見て…

(上手く言えないよ…リンダ助けて…)

と、目で訴えた。 


リンダは頷きながら…

「ベイ博士、ボブに代わりまして、

私から…

私達はまず、

謝らなければなりません」

ベイは…

「えっ?何をだい?」

と言って…また首を傾げた、

それとは対照的に

リンダは背筋をピンと伸ばした状態で…


「私達は、子供のころからずっとベイ博士に頼って生きて来ました…

いま思えば

12、3歳のベイ少年にです。


学校の勉強から

社会の勉強に至るまで、

様々な事を教わりました。


いつの間にか私達は、

全ての答えを…

ベイ博士に求めるようになっていました…

今もそうです…

すみません私達って…

ぜんぜん成長していませんね…」

と言って下を向いた。


するとベイが…

「何を言うのかと思ったら…

たしかに子供の頃はそんな時も

あったけれど、

大人になってからは、

皆んな立派に社会の中で実証を

示していたじゃない。


むしろ僕の方が全然ダメで、

何回もクビになってさ…

いつもメリーに心配ばかりさせて…」

そこまで言うと、

ジョニーが横から


「ベイ博士がクビに成ったは全部、

ベイ博士の才能を妬んだ

悪い奴等の陰謀ですよ。


僕とアンジーが、

ラジオ番組のDJになれたのも…

僕達の後ろで、何時もベイ博士が見守っていて下さったおかげです」

と言いながら目を潤ませている…


するとグレイも…

「僕の料理が世間に対して、良い評価を受けたのも…

ベイ博士のおかげです」

ベイは慌てて…


「それはグレイの実力が世間に

認められたんだよ」

「はい、でも…ずいぶん沢山の方達が

『私はベイ博士の後輩です、

僕の弟の料理と

妹の接客が、

とてもホッコリさせてくれるんだ

絶対に幸せな時間を過ごせるから…

だから、経済的に余裕がある時は、

一回食べに行ってあげてよ、

本当に美味しい料理なんだよ』

って言ってました。


僕はルーシーと…

「あぁ、僕達はずっと影から

ベイ博士に助けてもらって居るんだ」

って話していたんです…」


そう言ってルーシーと見つめ合っている。


ベイは小さな溜め息をつきながら…

「皆んな…

僕を過大評価し過ぎだよ、

僕は何もしてないよ…

何時も言っているだろ

僕の頭の中は

メリーの裸の姿でイッパイだって…」


そう言って、わざといやらしそうな

顔を作った。


メリーが小さな声で…

「もぅ〜ベイったら〜」

と甘えるような声を出すと…

ボブが大きな声で…


「ありがとうございますベイ博士!

感謝しています…

ずっと感謝の連続で…

ちゃんと御礼が言いたくて…

前から御礼が言いたくて…」


ボブが声を詰まらせた。


ベイの目にも涙が溜まっている。

6人が深々と頭を下げると…

ベイはメリーの胸の中に

サッと顔を埋めた。


メリーはベイの背中を撫ぜながら…

「皆んなゴメンね…

ベイったら私に甘える時間が来たみたい…」ベイはその通りだと言わんばかりに

メリーのお尻を撫ぜた。


6人は…

(もぅ〜直ぐに照れて…

話しを茶化すんだから、

でも御礼を言えて良かった。

ベイ博士…

先生…

お父さん…

これからも宜しくお願いします…)

6人は心の底から…

そう思った。


匠は女将の耳元で…

「皆さん…感謝の言葉を

ベイ博士に伝える事が出来て、

本当に良かったね」

「そうね…」

「船をホテルに移動させるね…」

「はい…」

女将は可愛く返事をしながら、

ニッコリと…微笑んだ。


本当は…2人の間で声を出して話す必要は

一切ない、

お互いを見つめ合うだけで

会話ができるのだ…

しかし…


2人は全ての事を8人の行動から

学んでいるので…

時には…お互いの耳元で、

ヒソヒソ話しをする事が、

「素敵な行ないだなぁ…」と、

認識したようである。


スカイシップは、

ブラウン一家の待つ

ホワイトホテルの上空…

50mの位置に到着した。


      〈…夫婦…〉


一番最初にスカイシップを見つけたのは

ニーナである、

ニーナは全速力でホテルの中に入ると…

「お兄ちゃん、先生達が帰って来た!」

そう言ってトムの胸の中に飛び込んだ。


トムはニーナをギュッと抱きしめ……

「良かったねニーナ、先生達が帰って来てくれて!」

2人は、スカイシップの中を勝手に

動き回ってしまった事に対して…

自己反省していたのである。


何となくではあるが…

(…ベイ博士は怒っていたんじゃないかな?先生方は呆れていたんじゃないかな?…

もう会えないんじゃないだろうか?)

そんな風に思っていたのだ。


だから2人は顔を見合わせた後に大声で…

「パパ、ママ、皆さんが帰って

来られたよ!」

そう叫びながら、

キッチンの中に駆け込んで行った。


ブラウンは満面の笑みを浮かべると…

「…さぁ4人で皆さんをお出迎えしよう」

そう言ってレイチェルにキスをした。


実はブラウンも

子供達と同様に

内心はドキドキしていたのだ、

料理を作りながら…

「ねぇレイチェル…やっぱりスカイシップの中を勝手に動き回っては…

いけなかったよね」


「私も反省して居るところ…

前に遠足の時に乗せて頂いた時とは…

全然違う状況なのに…

子供達が…

「デッキに降りたい」って言った時…

実は私も先生方が何をされるのか…

見てみたいって思っちゃって…

大人…失格よね…」


「僕も同じだよ、失格だよ…

皆さん帰って来てくださるかなぁ…」

と言っている時に

トムとニーナがキッチンに飛び込んで

来たのである。


ブラウン夫妻は、一回のキスでは足りないくらいの喜びが…

胸の中に広がっていた。


四人がキッチンを一歩出た時である…

ロビーの方が明るくなってきた。

四人は(あっ…)

と思いながら5mの廊下を

急いで走った。


ロビーの真ん中が

キラキラと光っている…

と思った次の瞬間、

10名の姿がパッと現れた。


トムとニーナが声を揃えて

「おかえりなさい!」

と言うと…10名はそれぞれに

「ただいま」と言って微笑んでくれた。


ブラウンが嬉しそうな声で…

「直ぐに料理をお運びしますので、

宜しければ、席にかけてお待ちください」

と言った。


すると女将が、

キッチンの方に目を向け…

「私が運びますよ…」

そう言って右手を軽く胸のところまで

上げた…


「カチャカチャカチャ」

と言う、小さな食器の音が、

キッチンの方から聞こえる。


女将はニッコリと微笑み…

「さぁ皆さん、席に着きましょう」

そう言って周りを見回した後に、

匠の顔を見た…


匠はソッと左腕を上げると…

「女将、私の腕は貴女の物ですよ、

どうぞ…」

そう言ってポーズを決めている。


すると女将は満面の笑みを浮かべ…

匠の腕に甘えにいった。


メリーはブラウン夫妻と子供達に…

「さぁ皆んなで、楽しい食事会をしまょう」と言うと、

ブラウンの腕にレイチェルが飛びつき、

トムの腕にはニーナが飛び着いた。


その時、皆んなの頭の上を…

料理を乗せたお皿や、

飲み物を入れたコップ、

フォーク、ナイフ、スプーンなどが…

スッーと、テーブルの方に向かって

飛んで行った。


匠と女将を除いた12名は…

(もう、人間を通り越して…

魔法使いじゃん…)

と思いながら2人に目を向けると…


2人は声を揃えて

「何なりと、お申し付けください、

大抵の願い事は…

叶えられると思います」

そう言って微笑んでいる。


12名は思わず…

「よろしくお願いします」

そう言って頭を下げると、


匠が恐縮しながらが

「頭を上げてください…

ベイ博士をはじめ、

皆さんの希望に応える事が

私達夫婦の幸せなんです」

と言ってくれた。


12名は心の中で…

(…なんて優しくて謙虚な魔法使い

だろう…)と思った。


14名がテーブルに着いた時…

すでに料理は並び終わって居た。


ベイは、目の前のグラスを持つと、

皆んなの顔を見回し…

「少しだけ、話しをしてもいいかな?」

と言った。


誰もが笑顔で頷いている、

ベイは小さく会釈をした後に…

「僕の…訳の分からない…

復讐と言う名の作戦に協力してくれて…

今まで本当にありがとう…

やっと一区切りがつきました。


これから先は、皆んなの意見をよく聞いて、行動しようと思っています、

だから何か思いついた事が有れば、

何でも言ってほしいと思います…

話しはそれだけです。

じゃあ…お疲れ様でした、乾杯」


そう言ってグラスを上げると…

全員が笑顔でグラスを高々と上げた。


いつも通りの楽しい

食事会の始まりである。


ただ少し違うとすれば…

ほぼ人間に近い状態で…

スカイシップから来てくれた

匠と女将が…

幸せそうに食事をしている

事である。


「貴方…あっーん」そう言って、

女将が匠の口元にフォークを…

「…うん、美味しい」

「うふふ…口元にソースが付いちゃった」

そう言って、女将は匠の口元の

ソースを人差し指でぬぐい…

その指を…自分で舐めてしまった。


2人を除いた12名は…

(…皆んなで食べている時にアッーンって…もぅ…観ているこっちが

照れるんですけど…)

そう思ったが、

スっごく幸せそうなので…

これはこれで、OKと言う事にした。


そして楽しい食事会が終わり、

それぞれが自分達の部屋に入って行った。

女将が…

「楽しかったわね」

と言うと…匠も

「…うん、楽しかったね」

とこたえた。


しかし匠は、仕切りに部屋の中を

見回している…

「どうしたの貴方…部屋の中が

気になるの?」


匠は女将に視線を向け…

「いや、嬉しくてね…

この部屋の中だけではなく、

世界中の建物の中を…

僕達2人は、データとして

知っているだろう…


でも今現在…

君と僕はこの部屋の中に立っている、

スカイシップではない、

この部屋の中に…


実は食事会の時から僕はずっと

興奮しているんだ」

「興奮…?」


「うん。あぁフォークってこんなに軽いんだ、肉って柔らかくて

美味しい物なんだなぁ、

ビールって喉がシュワシュワするんだ、

ケーキってこんなに

甘い物なんだなぁって…」


「実は、私も同じことを考えていたの…

人の目を見て会話をするって

楽しかった。


相手の目元、

口元を見ながら

自分がどのタイミングで話しの中に

入っていけばいいのか、

ドキドキしちゃったわ」


「そうだね…人間っていいね…

この身体に成ってから、更にそう思うよ」

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