第68話 お見送り
「20日後に迎えにくるからな!!」
「シーッ!っす」
大声を上げた望月を和久津が嗜める。
「なんだ?何かあったか!?」
「……声がデカイっす。なんのために夜中に飛んできたと思ってるんすか」
「はははっ!和久津は心配性だな!!モチ太郎はブラックドラゴンだから大丈夫だぞ?見えない見えない」
「はぁ」
「よし、モチ太郎、行くぞ!!」
最後までうるさかった望月はモチ太郎の背に飛び乗り、闇夜に飛び立った。【暗視】を使っていても、少しするとモチ太郎の姿は完全に見えなくなった。
「ミツカッタ、カモシレナイワン」
コニーが日本語で心配を始めた。黛の教育で随分と上達している。語尾については目を瞑ろう。
「大丈夫。目撃者はナイナイする」
黛は相変わらず物騒だ。和久津が頭を抱えている。
モチ太郎便でやってきたのはアルスター王国の王都、アルスニアの東にある草原だ。多くの屍が眠る古戦場ということもあり、王国民は近寄らない場所だ。
ここから1日歩けばアルスニアに着く。走り続ければすぐだ。
「夜の内にアルスニアに入るぞ」
和久津に黛、コニーが頷いた。今回の作戦は俺とこの3人で行う。潜入に必要なスキルオーブも配布済みだ。王国では多種多様な種族が暮らしているのでこの編成でも目立たない筈。まぁ、もし怪しまれてもなんとでも対応できる。
「1番遅いやつには罰を与える。よし、行くぞ」
薄っすらと空の明るい方に向かって走り始める。
「わっ、ちょっと待ってくださいよ!3人とも加護持ちなのにずるいっす!」
「和久津、シーッ」
「シーッ」
王都に急ぐ。
#
「……はぁはぁはぁ」
15分ほど待っただろうか。王都の城壁が見える辺りで待っているとようやく和久津がやって来た。その息は荒い。
「和久津、気持ち悪い」
「キモチワルイワン」
黛とコニーが和久津の様子を嫌がる。
「……はぁはぁはぁ」
言い返す余裕もないようだ。
「よし、揃ったな。これから城壁を越えるぞ。黛は【浮遊】で上まで行って梯子をかけてくれ」
「待って。和久津への罰が先」
「いや、死神ちゃんさん!罰って言ったのはパイセンの冗談ですよ?」
「サブローは冗談言わない」
仕方ないな。へばって動きの鈍い和久津の腕を掴み、【性転換】を部分的に発動する。
「……何かしました?」
「さぁ、どうだろうな」
和久津の頭頂部だけを【性転換】で男性に戻した。和久津の頭は河童状態だ。
「えっ、ちょっと待ってくださいよ!何したんすか!?」
「和久津、煩い」
「ワクツ、ウルサイワン」
「さぁ、ふざけるのはお仕舞いだ。黛、頼む」
「分かった」
さて、作戦開始だ。
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