第47話 小さな皇帝
私は混乱していた。何ヶ月もの苦悩がたった一晩で解消されてしまったからだ。一体何が起こったのかフィロメオに白状させないと気が済まない。
「フィロメオ!!」
私はノックも忘れてフィロメオの部屋の扉を開け放った。
"おやおや、ノックもせずになんですか?お姉様"
"貴様にお姉様と呼ばれる筋合いはない!!フィロメオは何処よ?"
"私が大きなフィロメオですけど?"
下着一枚の太った男は自分のことをまだフィロメオだと言う。全くふざけている。
「ヘリリーナお姉様?」
部屋の奥からフィロメオの声がした。男を押し退けて入ると、少し逞しくなったフィロメオがいた。
「この男は何!?いつ戻って来たのよ!?お父様をどうやって治したの!?」
「富沢さんは異世界人で、私の恩人の1人です。戻って来たのは10日ほど前です。お父様は……」
「何よ?」
「……ごめんなさい。お父様は治せませんでした」
「……どういうこと?昨日確かにお父様は元気に歩いてらしたわ」
「……ごめん、なさい。お父様は、3日前に旅立たれました」
「どういうことよ!!」
フィロメオの肩を揺すっても何も返ってこない。揺すっても揺すっても。
"もうおやめなさい"
"うるさい!!一体何なの!?お父様に何をしたのよ!?"
"あなた達のお父様は私達が皇城に着いたときには既に手遅れでした。もう死期を悟っていたのでしょう。初めて会った異世界人の私達にあることを頼みました"
"……何を?"
"フィロメオを皇帝にして欲しいと"
"それが昨晩の?"
"そうですよ。2人の皇子も異世界人も思った通りに動いてくれました。皆んなで練習した甲斐がありましたよ。ウチのボスなんて必死にアルナ語の台詞を覚えてましたからねぇ"
"……どういうこと?ボスって誰のことよ?"
"まぁ、あなたには言ってもいいでしょう。ウチのボスは人の姿に化けるスキルを持っているんですよ"
目の前が真っ白になる。
「お姉様」
フィロメオの声で景色が戻った。
「私は皇帝になります」
「……フィロメオ」
「まだ頼りないかもしれませんが、私には"学びの神様の加護"があります」
「だからって、1人で何ができるっていうの?」
「1人ではありませんよ。ねえ、"ネギシ"さん?」
フィロメオの声に釣られて振り返る。そこには首に禍々しい刻印を持つ男が立っていた。
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