第29話 見返り

「お久しぶりです」


「まあ、座れ」


ゆったりと椅子に座る根岸さんは以前より貫禄が増した気がします。


「それで何が望みだ?」


単刀直入ですね。まぁ、駆け引きなんて無駄なので楽でよいです。


「日本エクスプローラー協会からの駐在員をここに」


「メリットは?」


「協会からの継続的な物資の支援」


リリパットはその在り方を軍隊とした為、労働力が著しく低下している筈。軍隊は金食い虫。どこかからの支援が必要と協会は判断しました。


「それはありがたい」


「では──」


「三木、お前の覚悟を知りたい」


えっ。


「俺からすると、お前がエクスプローラー協会の代表だ。口だけでないことを見せて欲しい」


仕方ないですね。協会の為に一肌脱ぎましょう。


「私に出来ることならばなんでも」


「よく言った」


根岸さんはマジックポーチから剣を取り出しました。以前より禍々しさが増した気がします。


「では、覚悟を見せますね」


私は剣を握りました。



######



すっと意識が遠くなる感覚のあと、すぐに現実は戻ってきました。


「使え」


根岸さんがポーションをぶっきらぼうに投げて寄越しました。なんだかんだで気遣いが出来る人なんですよね。これも計算なのかもしれませんけど。


ポーションを使うと手の傷はあっという間に塞がりました。全て元通りです。


「何か変わったところはないか?」


「大丈夫です」


「本当に大丈夫か」


「ええ。何か変ですか?」


「いや、俺には分からないが……」


そう言って根岸はマジックポーチから手鏡を出してこちらに寄越しました。


「自分で確認してみろ」


なんのことでしょう?手鏡で自分の顔を確認します。


「えっ」


「どうした?何故顔を隠す?」


「は、恥ずかしいからです……」


私の周りにかつてない勢いで盾が形成されます。それはとても分厚い。


「何が恥ずかしいんだ?」


「……言えません」


「ならば駐在員の話は無しだ」


「待ってください!!」


根岸さんの口元は歪み、期待に満ちた目でこちらを見ています。


「鏡をみたら、どうなっていた?」


「……顔の中央におちん○んがあります」


「プッ」


「笑わないでください!!」


「すまない。悪かった。ところで、股間はどうなっている?」


まさか!恐る恐る覗いてみます。


「どうなっていた?」


「……股間に鼻が、あります」


「グハッ」


根岸さんが倒れました。

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