第28話 出迎え

「これはこれは、ようこそおいで下さいました」

「ヨウコソオデクダサイマシタ」


門番との一悶着の後、私達を迎えてくれたのはでっぷり太った日本人とリリパットの女性でした。リリパットの方は見覚えがあります。リリパットチャンネルに出ていた子です。


「受け入れて頂き、感謝します」


「同郷のよしみですよ。私は富沢といいます。ボスのところまで案内しますから、ついてきてください」


首の刻印は明らかにカオス系。富沢さんは根岸さんの手下なのでしょう。


「おおお!小さな家がいっぱいだ!」


「ほほほ。我々のほとんどはリリパットですからね」


「お前は絶対に入れないな!」


「ちょっと、望月さん!失礼ですよ!」


望月さんの失言にも男は笑顔を崩しません。大人で良かった。


「まるでジオラマの世界に迷い込んだみたいだな」


「ええ」


エジンさんの言いたいことは分かります。歩きながら住居を見下ろすのは変な感じです。


変と言えばもっと変なモノが目に入りました。上半身に無理矢理ズボンを穿き、下半身にシャツを着ている年老いたリリパットがいたのです。ボケてしまったのでしょうか?


「コンギニワ」


「こんにちは」


年老いたリリパットは愛想よく挨拶をしてくれました。日本語です。


「あのご老人は大丈夫なんですか?」


「ああ、グランピーのことですか?平気ですよ。ボケているわけではありませんから」


では何故?


私の疑問は威勢のよい声でかき消されました。練兵場でしょうか?大勢のリリパット達が2つに別れて模擬戦をしています。


「おお!面白そうだ!見に行こう!」


望月さんが勝手に走り出しました。止めるフリをしてエジンさんも続きます。


「見ても大丈夫ですか?」


「問題ありません。あなた達はリリパット軍と対立するつもりはないのでしょう?」


富沢さんは少し意地の悪い顔です。


「勿論です。日本エクスプローラー協会はリリパットとの友好を望んでいます」


「ならば大丈夫です。2人は練兵場に置いていきましょう」


2人がいると話がややこしくなるのは事実です。


「この集会所の中にボスはいます」


村?の中心部には人間用の建物が幾つかあり、富沢さんはその内の一つを指差しました。


ちょうど中から女性が1人、出てきました。この人も見たことがあります。リリパットチャンネルの動画の最後でフィクションを訴えている人です。


何故かレンガを大事そうに抱えています。筋トレか何かでしょうか?


「さあ、どうぞ」


富沢さんに促されて中に入ると、やはり。


「よく来たな。歓迎するぞ」


根岸さんです。

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