第27話 三木達
「じれったいな。さっさと捕まえてしまおう」
「賛成だ!」
「……声が大きいです。それにあくまで友好的に接するのが目的。捕まえるなんて論外です」
私達の視線の先にはリリパットがいます。リリパットチャンネルで見た通りの姿です。
私達は日本エクスプローラー協会の意向を受け、じっくり丁寧に異世界の情報収集に努めていました。
これまでは異世界人との接触はご法度。一度ダンジョンの近くでこっちのエクスプローラーに見つかりましたけど、急いで四つん這いで逃げました。望月さんを乗せたまま。
「その内、村へ戻る筈です。驚かさないようにそっとついていきましょう」
そう。私達はやっと異世界人との接触を許可されたのです。リリパット達とならば友好関係を築けると協会は判断しました。
協会曰く、リリパット達は単純で短絡的。こちらが真摯に接すれば問題ない。とのことでした。
リリパットチャンネルを見る限り、血生臭い武装集団に思えましたけど、協会の認識は違うようです。
もっとも、こちらにはエジンさんと望月さんがいますし、なんとでもなるとも思っています。
追跡は続きます。
######
「消えた!!」
「……望月さん。静かに」
望月さんは思ったことをそのまま口に出してしまうので困ります。ただ、消えたのは事実。森にしか見えないけれど、何かあるようです。
「どうしましょう?」
「行ってみるしかない。最悪でも戦闘になるだけだ」
エジンさんは脳筋なんですよね。
「賛成だ!」
望月さんは最早何も考えてません。
「分かりました。警戒態勢で進みましょう」
私が四つん這いになると、望月さんが跨りました。周囲に透明な盾が形成されます。一時期程の厚みは有りませんが、リリパット相手なら問題ないでしょう。
四つん這いでの移動も慣れたものです。今では二足歩行と変わらないスピードが出ます。これも、望月さんの"騎乗の神様の加護"のおかげなのかも知れませんが。
「たしか、この辺りで消えた筈だが……」
エジンさんがそう言ったと同時でした。目の前に唐突に門が現れたのです。その左右には高い木の塀が伸びています。そして。
「מי אתה!」
「בחור חשוד!」
門番でしょう。リリパットが2人、槍をこちらに向けて叫んでいます。
【念話】
"突然の訪問をお許しください。我々は怪しいものではありません"
"黙れ変態!近寄るな!"
異世界人とのファーストコンタクトに、少しだけ盾が厚くなりました。
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