第75話 目々野の平日②
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くそ!また来た。こうなったら見て見ぬふりだ。布団かぶって数分待てば葛籠の点滅もおさまるだろう。ボスはなんて厄介なものを置いてったんだ。完全に嫌がらせじゃないかようう!あああー、面倒くさい面倒くさい面倒くさい!もう大丈夫かな?チカチカ点滅はおさまったかな?ちょっと見てみようか。布団の中からそっと。
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むしろ点滅が激しくなってる!どういうことだようう!部屋の中でこんなでっかい葛籠が点滅してたら落ち着かないだろうう!
ガリガリガリガリガリガリ
うわわわわ!なんか動いてる!ああー、もう無理もう無理。金髪女を呼んでなんとかしてもらおう。メッセージするのは面倒くさいが、仕方ない。
"たすけて"
"え、どうしたんですか?目々野さん"
"きんきゅうじたい"
"何があったか教えて下さいよ!"
"しんにゅうしゃ"
"え?そんなまさか!"
"ほんとう"
"とりあえず行きます"
よし。これで大丈夫だ。あとは全て金髪女に任せよう。僕は寝る。3日寝る。いや、4日だ。うん、おやすみ。すーぴーすーぴー。あー、意識の遠くの方で部屋の鍵が開く音がする。来たか。金髪。
「えっ!目々野さん、なんですかこの光ってるのは?」
「うーん、ボスからのプレゼント」
「中から音がしてますよ!」
「中のモノ、捨ててきて」
「えっ、中に何が入ってるんですか?」
「わからない」
「ちょっと!なんですかそれ!自分でやってくださいよ!」
「面倒くさい」
「ふざけないで下さい!さっさと布団から出て!あっ、服着てますよね?」
「着てない。だから出られない。永遠に布団の中」
「えええー!本当に私がやるんですか?」
「ボスにスキルオーブ貰ったら、お前にやる」
「……本当ですか?」
「ほんとう」
「……分かりました。やります。蓋、開けます」
布団の隙間から覗くと、金髪女が葛籠の蓋を抱えるように持ってゆっくりゆっくり開けている。
「ちょっと、本当におっきいですね。この箱。人間も入れちゃいますよ」
もう少しで蓋が開く。さあ、さっさと蓋をあけて中のものを捨ててきて。僕は寝るから。
「えっ」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ
何かを引っ掻くような音が部屋に広がった。全くなんだようう。落ち着かない。
「何が中に入ってるの?」
「か、カブトムシのオスとメスです!」
「へえ。捨ててきて」
完了完了。さーて、寝るぞー。
「ちょ!オスがメスに乗っかってます!どうしましょう!目々野さん」
「し、知らないようう。そんなの」
えええ!そんなこと僕に聞くなようう!
「メスが逃げようともがいてます!これって助けた方がいいですかね?」
「ぼ、僕にメスの気持ちが分かるわけないだろうう!」
「わ、私だって分からないですよ!」
「女なら分かるだろうう!本当に嫌かどうか」
「わ、私だって経験ないんですから!わかりません!」
結局、オスとメスが離れ離れになるまでこの気まずい時間は続いた。もううう!一体なんなんだよううう!
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