第36話 魔剣??

「うらぁ!」


ドロドロの炎に覆われた男が剣を横薙ぎにした。


振りに鋭さもないし予備動作も見え見えで全く怖さはないのだが、奴の纏う黒い炎が厄介だ。


身体だけでなく奴が持つ剣にまで炎が及んでいるので大きく躱す必要がある。これがスキルなら燃料切れを待てば良いのだが、多分これは加護だ。条件さえ満たしていればいつまでも続く筈だ。なんとかしなければ日が暮れる。


スマホで奴の加護を検索しているが、なかなか見つからない。結構レアな加護なのかもしれない。


「クソ!クソ!クソ!なんで上手くいかないんだよ!」


攻撃が全く当らず、奴はますますおかしくなっていく。


「ははは!才能がないからだろ!見るからに凡庸!見るからにストーカー!」


「クソ!ストーカーなんかじゃない!お、俺は黛さんのことを……」


「なんだ?妄想で犯しているのか?そーいうことは人前で言わない方がいいぞ」


「言ってない!」


「知っているか?奈々はあー見えてなかなか積極的なんだぞ」


「うわあああぁー!!!」


奴の纏う炎がますます大きくなる。これは逆効果だったか。一回落ち着けた方が良さそうだ。俺はマジックポーチから麻痺珠を取り出して投げつける。


ジュッ


あっという間に黒い炎に焼かれて蒸発してしまった。全く意味がない。


「うらぁ!」


奴が剣を振るとその延長線上が炎に焼かれた。半径10メートルは奴の領域だ。落とし穴に落としたとしても、近づけないので生き埋めには出来ない。一体、どうしたらよいのか。


うん?ちょっと待てよ。


俺は辺りにいくつも落とし穴を作る。


「いくらやっても無駄だ!お前は無能だ!」


「うるさい!死ね!」


奴は大上段に剣を構えて突進してくる。


スポッ


周りが全く見えてない男はあっさり落とし穴に落ちた。


「卑怯だぞ!」


穴からは黒い炎がボウボウと吹き出している。なんて危ないやつだ。


「早く穴から出せ!この卑怯もの!」


俺は男の声を無視してモンスターハウスへ急ぐ。そう。俺の目的はモンスターハウスの魔剣だ。こんな男の相手をすることじゃない。


「卑怯者ー!卑怯者ー!」


俺は心地よい罵りを受けながらモンスターハウスへと入った。

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