第37話 魔剣???

モンスターハウスに入ると背後の壁がズズズと動いて入り口が閉じられた。これでモンスターがいなくなるか俺が死ぬまで入り口が開くことはない。


前面の壁には一つ、亀裂が入り脈動を始めた。もうすぐリザードマンが壁から出て来る筈だ。


俺はリュックの中から今回の作戦の要を取り出し、左腕で抱えて胸の前で抱いた。ショートソードだと取り回しが悪いので右手にはナイフだ。


そしていよいよ、壁から一体目のリザードマンが出てくる。


「ゲコゲコゲ!」


卑怯者!俺にはそう聞こえた。人間を見たら襲い掛かってくる筈のリザードマンが動けないでいる。


次から次へと壁の中からリザードマンが出てくるが、どいつもこいつも怒りに満ちた表情を浮かべるだけで襲ってこない。


「ほら、どうした!かかってこい!」


「ゲコゲコゲーコ!」


その子を離せ!俺にはそう聞こえた。その子とは俺の左腕に抱かれるグリーンイグアナだ。


一体のリザードマンが俺に飛びかかって来そうになるが、グリーンイグアナにナイフを当てるピタリと動きを止めた。


「ハハハハ!貴様ら、このトカゲの命が惜しいのか?」


「ゲコゲコゲゲゲコッゲ!」


その子が何をしたんだ!俺にはそう聞こえた。別にこのグリーンイグアナが何か俺にしたわけではない。俺に買われただけだ。


「このトカゲの命を助けたかったら、お前ら全員、壁の中へ戻れ!」


「……」


リザードマン達が顔を見合わせている。怒りの表情が困惑に変わったのが分かる。


「早くしろ!!」


俺は壁の亀裂をナイフで差しながら怒鳴った。リザードマン達が話し合いをしている。例えばここで俺がリザードマン達に向かって自害しろ!と言った場合には奴等はヤケクソになって襲い掛かってきたかもしれない。


しかし、俺が求めたのは壁に戻れ!だ。これはリザードマン達にとってハードルの低い要求の筈だ。亀裂の向こう側に上司がいたとしても、なんかヤベー奴がいて仕方なかったんすよーみたいな説明でなんとかなる筈だ。


「お前達、俺のことをナメてるだろ」


ナイフの先をグリーンイグアナの首へ付ける。


「ゲコッゲ!」


分かった!俺にはそう聞こえた。そして一体ずつ壁の中へと戻っていく。


最後の一体がチラッとグリーンイグアナに視線を送った。


「ゲコココゲ」


元気でな。俺にはそう聞こえた。そして壁の中に戻り、亀裂は綺麗に塞がった。後は宝箱が出るのを待つばかりだ。

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