第28話 和久津の発見

2時間ぐらいダンジョンを歩きまわった頃、グループチャットに変化があった。オークキングぽいやつを見つけた!でも逃げられた!みたいな書き込みがいくつも上がり始めたのだ。


添付のマップ情報を見るとここからそれほど離れていない地点で複数の目撃情報がある。ヨコチンもこの付近が怪しいってことで向かって来ているらしい。これはマジでヨコチンと仲良くなれるかもしれない!


「……うん?」


背後から嫌な気配がした。別にスキルではないけれど、エクスプローラーのカンってやつだ。岩陰に身を隠しながら振り返りると遠くに動く影が見える。


マジックポーチから双眼鏡を取り出して覗くとそこにはオークの姿。だが!しかし!普通のオークじゃない!マントと王冠!オークキングだ!きたー!!


叫びそうになるのを我慢し、素早くスマホを取り出してグループチャットに書き込む。


"オークキング発見!!場所はここ!"


"でたー!オークキングだ!"


"まだいる?"


"まだいる!ゆっくり歩いてる。みんな早くきて!!"


"もうすぐ着く!!"


チャットをしている内にエクスプローラー達が集まってきた。みんなオークキングに気付かれないように静かにしている。そして真打登場。ヨコチンだ!走って来たのか額に汗が浮かんでいる。スタッフの男性と田村さんも一緒だ。


"それでは以降はヨコチンにお任せください!危なくなったら助けて下さいね!笑"


田村さんの書き込みのあと、みんなの前にヨコチンが立った。田村さんがマジックポーチからコンパウンドボウを取り出し、オークキングに狙いをつける。まだ200メートルぐらいありそうだけど、釣るだけなら問題ない。


「やっ」


控えめな声が響き、次の瞬間、オークキングがこちらに身体を向けた。当たったかどうかは分からないが、こちらに気付いたのは間違いない。


「全員、戦闘準備!!」


ヨコチンが声を張り上げた!俺も短槍を構えて戦闘体制だ!ヨコチンが1番前で、15人ほどのエクスプローラーが後ろで控えている。ダンジョンの通路はエクスプローラーでいっぱいだ。


「来る!」


ヨコチンがそう叫んだ頃にはオークキングはすぐそこまで来ていた。オークのくせにめちゃくちゃ足が速い!どうなってんだよ。


「来い!」


ヨコチンがグローブを鳴らして威嚇する!やばい!動画で見たことあるやつだ!めっちゃあがる!


オークキングが剣を振りかぶった。


「なっ!」


ヨコチンはオークキングが投げた剣を躱し、体勢が崩れたところをオークキングがタックル!ヨコチンが軽く吹っ飛ばされた!オークキングやばい!


周りのエクスプローラーもまさかの展開に呆気に取られると、オークキングはお構いなしにこっちに突っ込んできた。


「くらえ!」


パワー系のエクスプローラーがメイスを振うが、オークキングは身体を捻りながら躱し、バックブローを叩き込む。


「「ぐえっ」」


吹っ飛ぶメイス野郎に2人のエクスプローラーが巻き込まれて被害は拡大する。


オークキングは倒れていたヨコチンの両足を両脇に軽々抱え、その場で回転を始めた。ジャイアントスイングだ。そしてエクスプローラーの方に投げつける。


5人くらいのエクスプローラーがヨコチンの巨体で更に吹っ飛ぶ。もうめちゃくちゃだ!包囲網は完全に破られた。


オークキングはスタッフの男性のもつハンディカムをチラ見したあと、悠々と走り去っていく。


「みんな、追って!!ヨコチンは大丈夫!たっかいポーション飲ませたら追いかけさせるから!お願い!オークキングを追って!!」


よし!今度は追いかけっこだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る