第9話 人でなし
しっかりとゴブリンの姿を捉えたところで、スピードを落として戦いに備えた。
3体のゴブリンは行き止まりに追い詰められた女エクスプローラーに夢中だ。こっちのことは全く気付いてない。
さて、どうしたものか。エクスプローラーってのは基本的に自己責任だ。もちろん俺に助ける義理はない。
だがしかし、ここを性悪ムーブで切り抜けた時にどんなドロップがあるのかは非常に興味がある。
「お、お楽しみか。羨ましいな。俺も混ぜてくれよ」
少し低めの声を出すとゴブリン達が弾けるように振り返り、警戒した表情を見せる。
「おいおい、勘違いするなよ。その女とやるんだろ?ちゃんと順番は守るから続けてくれ。俺は最後でいい」
俺はショートソードを放り投げ、両手を上げて敵意のないことを示す。
「ちょっと!何言ってるんですか!!人でなし!助けてくださいよ!」
壁に追い詰められた女が喚いた。
「俺はモンスターに女が襲われてるのを見るのが好きなんだ。じっくり見させてもらう」
「いや、いやいやいやいや」
ゴブリン達が嬉々として女に飛び掛かり、地面に組み伏せる。
「いやぁぁぁぁ!助けて!助けてよ!!」
さて、そろそろいいか。
俺は剣帯につけたポーチから紫に輝く珠を取り出し、今にも始まりそうな奴等に向かって投げつける。
バフン
珠は地面で弾けると紫の煙となって広がり、ゴブリンと女を覆い尽くす。ゴブリン達が何事かと声を上げるが、直ぐにそれも弱々しくなる。女の声もしない。
「おー、さすが高いだけのことはあるな。麻痺珠。ここまで即効性があるとは思わなかった」
ショートソードを拾い上げ、重なり合って痙攣している奴等の方にゆっくりと歩いて行く。
「汚いミドリムシが人間様に手を出してタダで済むわけないだろ」
ゴブリン達をブーツで蹴り上げ、女から剥がす。
女は恐怖で引き攣ったままの表情で固まり、瞼だけが動いていた。
「大丈夫だ。一時的に手足が動かないだけだ。呼吸までは止まらない。しばらく寝てろ」
女にそう言い置き、俺はゴブリンへと向かう。
ゴブリンは憤怒の表情を此方に向けてきた。
「それ!その表情だよ!騙されたゴブリンの表情は最高だな!さて、どいつから殺そうかな?」
こいつら、よく見ると元気になったまま麻痺してやがる。ゴブリンてのはとんでもないモンスターだ。
見るに耐えない光景。さっさと終わらせよう。
俺はゴブリン達の首に次々とショートソードを振り下ろした。
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