第8話 初イベント

「おい、ミドリムシ!こっちだ!」


斧を持ったゴブリンがドタバタと駆けてくる。


「なんだその走り方は!気持ち悪くて滑稽で不快だ」


「グギギギギ!」


どういうわけか言葉が通じているようで、ゴブリンは激おこだ。


サッと斧をかわして首筋にショートソードを滑らす。


紫の血が吹き出し、ゴブリンは煙に変わる。


残るのは魔石と初級ポーション。加護の力は健在だ。


ここは新宿ダンジョン第2階層。今日は1人でダンジョンに潜っている。和久津はいない。


見た目も変わっている。ユニ〇ロのスーツから戦闘用のボディースーツ。金属バットからショートソード。革靴からミリタリーブーツ。どれもエクスプローラーショップで買い揃えたものだ。


ボディースーツが30万もして驚いた。一番安いやつだったのに。サラリーマンの安月給ではおいそれと買えない値段だ。


気を取り直してダンジョンを進む。今日まで知らなかったのだが、スマホのエクスプローラー用アプリ「冒険しよう!」では日本の全てのダンジョンのマップが公開されていた。もちろん人類が到達した階層だけだが。


「しかし、ゴブリンにも飽きてきたな」


1人なのに思わず声を出してしまった。正直なところ、この階層でずっとゴブリンを狩っているだけでも生活は出来る。初級ポーションを売っているだけで贅沢も貯金も出来るだろう。


しかし、全く面白くないのだ!せっかく仕事を辞めたのに、ルーティンゴブリンとか全くナンセンス。死亡率ナンバーワンの職に就いたからには刺激が重要だ。


加護で身体能力が上がったせいか、全能感に満ちている。


さっさと第3階層、第4階層、そして第5階層へ。


先へ急ぐ。



######



「グギャギャギャ!」


もうすぐ第三階層というところで、ゴブリンの笑い声がダンジョンに響いた。


まだ姿は見えないが声の感じからしてすぐ近くだ。


「いやぁぁぁぁ!」


女の声がゴブリンの笑い声の後に続いた。


俺は声のした方に進路を変えて駆け出した。一歩毎にテンションが上がっていく。


これは面白イベントに違いない。


角を曲がるとぼんやりとゴブリンの姿が見える。それも3体。そして別の姿も。あれはエクスプローラーだ。

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