第6話 罵倒狩り
「グギャー」
第二階層へ降りてしばらくすると、剣を構えたゴブリンが現れて俺たちを威嚇した。
よーくゴブリンを観察するとかすかに目に知性を感じる。武器を扱えるってことは、知性があるということなんだろ。これならいけるかも知れない。
「ゴブリンてのは随分と醜い生き物なんだな!神様も冗談が過ぎるな」
「ギギギ!」
「はははは!怒ってるのか?生意気なやつだ!」
「ギィィィィ!!!」
「ちょっと!パイセン!なんで無駄に煽ってるんですか?」
「いーから見てろ。オラ!来いよ!」
「ギァァァァア!」
ゴブリンは怒りに任せて剣を振り回してくる。
「なんて単純なやつ」
ゴブリンの剣をするりと躱し、即座に反転してバットを振るう。
ゴブリンは煙となる。そして小さな魔石といっしょに小瓶が残った。
「おおお!初級ポーション!運がいいですねーパイセン」
赤い液体の入った小瓶を拾い上げ、ポケットに押し込む。大分いっぱいになってきた。
「ゴブリンからポーションが落ちるのは珍しいのか?」
「珍しいですねー!ドロップ率1パーセントもないんじゃないですかねー」
「なるほど。もうちょっと試してみるか」
########
「ポーションのドロップ率は50%ってところか」
俺はポケットの小瓶を和久津に渡しながら言った。
「異常っすね。これがパイセンが授かった特殊能力ですか」
「まだまだ検証が必要だけどな」
俺達、いや、俺はずっと第二階層でゴブリンを狩っていた。
しかし、ただ狩っていたのでない。
ゴブリンを倒す前にさんざん罵倒して煽ってから倒していた。
性悪の神様が喜ぶようなムーブをしたってことだ。
するとどうだ。通常は1%もないポーションのドロップ率が50%に迫っている。
単純にドロップ率だけがアップしているのか、それとも俺の運が上がっているのか。その辺の検証は難しくて行えてないが、非常に有効な特殊能力であることは間違いない。
「しかし、ずっと性悪ムーブは辛いものがあるな」
「いや、全然辛そうに見えなかったですけど!むしろ嬉々としてやっていた!」
「シンガイダナ」
「棒読み!」
「和久津、初級ポーションっていくらぐらいで売れるんだ?」
「協会認定ショップでの買取なら一本1万5千円ぐらいですね。店頭に並ぶと4万円ぐらいしますけど、買取価格はそんなもんです。個人売買なら3万前後だと思いますけど、ツテがないと無理っす」
「和久津、一本2万8千円でどうだ?」
「いきなり商談!しかも微妙に安くて断り難い値段設定!」
「和久津が自分で使ってもよし。エクスプローラー仲間に売ってもよし。誰も損しない。パーフェクトな提案だ」
既に初級ポーションは10本ある。さあ、和久津、買え。
「パイセン!悪い顔になってますよ!口角が歪に上がってます!」
「どうするんだ?」
「わかりましたよ!買いますよ!」
「気持ちのよい取り引きだったな。さぁ、今日はもう帰ろう」
「ううう。了解です」
ダンジョン初日で28万の稼ぎか。エクスプローラーは悪くない。
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