まず、コメディで頭を殴ります。
猿山 登校拒否
第1話 パンダ到来
下々の人々がうだるような暑さに苦しむ中、高校生の長谷川は一人エアコンによって快適な部屋を満喫している、わけではない。
「エアコンが壊れただとぅ。どうしてくれんじゃあああ。」
「違う。プロレスごっこしてたら、いきなり爆発したんだ。しょうがない。」
もう一人の同居人、田中はアフロを左右に揺らしながら話す。その最中に右手でアフロからポテチを取り出して田中は頬張っている。
「相手は!誰!何!だよ!」
「ボブ。」
「本当に誰だよ⁈」
長谷川のツッコミが晴れ渡った空に消えていく。夏に入り活動し始めたセミが窓の外で絶叫し、長谷川は窓に近づくとピシャリと音を立てて閉めた。すると、部屋の温度は急上昇。窓の近くの水槽の水が恐ろしい速さで蒸発していく。中に入った金魚も苦しそうに痙攣している。だから、ボブが窓を開けた。
「本当にいた⁈」
長谷川は思わずノリツッコミ。何故本当にボブだと分かったのかは簡単である。ボブは体操服を着て、胸には「ぼぶ」と書かれたワッペン。証明完了。QED。
真夏の一室で白い肌に体操服を着る変態を前に、長谷川の思考は暑さも相まってショートした。
「じゃ、僕帰りますんで。」
完全に外人の見た目のボブは流暢な日本語で部屋から抜け出した。
部屋に残されたのは一般人長谷川と、新しくアフロからポッキーを取り出す田中。互いに向かいあい一進一退の状況。
「田中。業者呼んだ?」
「いや、必要ないよ。」
長谷川は田中に詰め寄り胸ぐらを掴んで窓の外にぶん投げた。ちなみにここは二階である。しまった、と反省する長谷川。偉い。
窓に近寄ると田中のTシャツが木の枝に引っかかって事なきを得たようだ。
「ひどいなー。エアコンはパンダが直してくれるじゃないか。」
「パンダって何だ?」
「パンダ (panda) は、ネコ目(食肉目)に属するジャイアントパンダ(クマ科)とレッサーパンダ(レッサーパンダ科)の2種の総称。熊猫の…。」
「そうじゃねえ!」
田中がウィキペディアの記事を垂れ流しにする中、長谷川の顔は怒髪天を衝いた。その時、ドンドンとドアを叩く音が入ってきた。何で叩けばそんな鈍い音が出るんだ、と思うほど力強い叩き方だった。
「パンダは新しい同居人の事だよ。じゃ、われー。」
田中は窓の外からラテン語でさようならを告げると、枝にアフロを残して消えた。
長谷川はおそるおそる、ドアに手を掛け開けてみる。すると180センチはあるだろう巨大なパンダが目の前に居た。そして、長谷川と目が合うと、記念すべき第一声を口にした。
「サルウェ!(こんにちは!)」
「お前もラテン語かよおおおお。」
長谷川の悲しい咆哮が街中に響き渡る。こうして、長谷川の奇妙で頭のおかしい夏休みが始まった。
まず、コメディで頭を殴ります。 猿山 登校拒否 @morimorigohan
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