特典4.ボッサム帝国
ボッサム帝国
【クレイド】
三十五歳
来歴
ボッサム帝国騎馬隊員
ボッサム帝国騎馬小隊長
ボッサム帝国騎馬中隊長
ボッサム帝国大将
身体的特徴
剃髪で彫りの深い空色の瞳
210cm、110kg
精神的特徴
一騎馬隊員から立身出世を果たして帝国大将にまで上り詰めた逸材。
六年前二十九歳でレブニス帝とタルカス軍務長官の「テルミナ平原の戦い」において槍技に強いアダマス将軍と互角以上の戦いを見せ、論功行賞として騎馬小隊長から騎馬中隊長へと昇格する。
しかし叩き上げは中隊長までしかなれない通例があったため、大隊長の職は
クレイドは王国軍将軍を見つけると一騎討ちに持ち込み、出陣すれば王国の将軍を自慢の鉾槍で斬り伏せてきた。軍功自体はじゅうぶんに大将が率いる重装歩兵大隊長の器だったのである。しかし直属の上司であるエビーナ大将はクレイドの戦い方は騎馬中隊レベルで発揮されることが望ましいと考えていた。重装歩兵大隊は敵の攻撃を受け止めつつ長槍を繰り出して王国軍部隊を確実に減らす役割がある。
しかし騎馬中隊であれば、戦場で自由に行動することができるため、王国軍将軍に一騎討ちを仕掛けやすいのだ。
用兵の特徴
クレイドが得意とするのは、王国将軍と一騎討ちを行なってこれを倒すことにある。しかし大軍を指揮するに 足る実力も有しており、その才幹は直属の上司であるエビーナ大将や、彼の巨躯に魅了されたレブニス帝が知るところとなっている。
現に病弱のレブニス帝を一年で心身ともにたくましい青年皇帝に変貌させたのも、クレイドとの鍛錬と教育の賜物である。
帝国軍の暗黙の了解として、大将に昇進するには大将直属の重装歩兵大隊長となって大将の戦術を叩き込まれることになっている。つまり所属する大将の戦術が古来より受け継がれてきたのが、帝国軍の大将がつねに一定以上の質を有している理由となっている。しかしクレイドは騎馬中隊長の身分であり、三大将の戦術を受け継いでいない。クレイドを重用するエビーナ大将もとくに用兵を教えることはなかった。
クレイドの大軍指揮は、規律と命令を重んじ、違反者は容赦なく斬り捨てた。これにより綱紀粛正を図りクレイド部隊は帝国でも一、二を争う精強な部隊として名が知れるようになった。
とくに騎馬中隊は毎年の戦いに出兵することになるので、帝国軍におけるクレイドの存在感は年々増すばかりである。(大将直属の重装歩兵大隊は、大将とともに三年に一度の出兵となっている)。
騎馬中隊ではいったん戦場の死角へ飛び出て、王国軍の備えが薄いところを突いて陣形を崩して王国将軍との一騎討ちに持ち込むことが多かった。
そういう意味では王国軍ミゲルの部下“無敵のナラージャ”のような働きをしている。しかしクレイドはナラージャと手合わせしたことがない。それは双方とも敵軍にくさびを打ち込む役目があるからである。つまり同じ戦場にいながら、戦うべき相手が異なっている。だから顔を合わすことがなかったのである。
エビーナ大将とアマム軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、クレイド騎馬中隊が王国軍の側背から突進してくるのを確認すると、前線を支えてエビーナ大将が王国将軍を討ち倒す手助けをする。クレイドはアマム軍務長官に迫るもガリウス中隊に行く手を阻まれる。ガリウスに手こずっている間にエビーナ大将がミゲル中隊の“無敵のナラージャ”によって討ち取られたため、撤兵せざるをえなくなる。
この戦いでのクレイド騎馬中隊長の働きが目覚ましく、重装歩兵大隊長を務めることなく一足飛びに大将の地位に就くこととなった。
大将に昇格してからは、重厚な布陣で王国軍の変化を冷静にさばいていく手堅さを見せた。しかしそれは、王国軍の軍師カイの素早い戦場移動によって対応が後手にまわってしまう危険をはらんでいた。
しかしどんなに損耗しても帝国軍の士気は高く、それを王国軍が挫くことはなかなかできなかった。
【エビーナ】
享年五十八歳
来歴
ボッサム帝国大将
肉体的な特徴
白髪混じりの黒髪に彫りの深い紺碧の瞳。
172cm、72kg。
精神的な特徴
ボッサム帝国は現在、軍務大臣を置かずトップを三名の大将が順番に担っている。
現在では宿将エビーナのほか、猛将ヒューイット、勇将マシャードが三大将を占めている。
エビーナ大将は智勇兼備で隙がなく、ひじょうに手堅い用兵手腕を示す。
日常では孫のよいおじいさんとして振る舞っているが、ひとたび戦場で指揮をとれば整然とした陣容を構え、容易には攻略できないほどの堅牢さを誇る。
ヒューイットとマシャードは騎馬中隊のクレイドを好ましく思っていない。しかしエビーナ大将はその実力を高く評価し、彼との指揮命令系統が寸断されたら、単独で事態打開に動いてよいとの特権を与えていた。
乱戦にあっても敵味方の配置が頭に叩き込まれており、クレイドがアマム軍務長官を脅かそうとした際には、彼の行動を助けるため、決死の覚悟で前線を維持して、王国七将軍がクレイド中隊の露と消えた。しかし肝心のアマム軍務長官の前に鉄壁とも称されるガリウス中隊が立ちはだかり、クレイドの突進が食い止められたまま、エビーナ大将はミゲル中隊の“無敵のナラージャ”によって討ち取られた。
用兵の特徴
攻守のバランスがとれた宿将であり、配下の育成能力にも長けていた。
レブニス帝の妹であるレミア姫を直属の重装歩兵中隊長から育成し、大隊長のひとりに加えて、エビーナの横に布陣させて攻勢の切り札として用いた。
守勢にも定評があり、六年前のレブニス帝とタルカス軍務長官との「テルミナ平原の戦い」においてレブニス帝の指揮により兵を動かして大勝を収めた。これもエビーナ大将の攻守の切り替えが素早く、レブニス帝の意図どおりに兵を動かせたことに起因する。
王国軍で小隊長となったミゲルと、タリエリ将軍直属中隊の中隊長補佐となったガリウスには手こずるものの、全体的には完勝を収めた。これによりタルカスが戦死したことにより王国の軍務長官職にカートリンクが復帰した。
【レブニス】
二十五歳
来歴
ボッサム帝国皇太子
ボッサム帝国皇帝 七年前
肉体的特徴
少し長めの銀髪に、白銀の瞳
172cm、64kg
皇太子時代から虚弱体質だったが、即位一年目の冬からクレイドに体の鍛え方を学んで、翌年秋までには健康な肉体を手に入れる
精神的特徴
生来の虚弱体質であり、先帝がみまかると孫であるレブニスが十八歳で皇帝に即位する。このときすでにレブニスの父は病死しており、帝位継承権第一位はレブニスだった。
その秋に行なわれた王国軍との戦闘で陣頭指揮を執り、体調を悪化させて帝国軍が撤兵を余儀なくされた。これにより王国軍から「惰弱帝」と称されることとなる。
レブニスは冬の練兵式に臨席すると、背が高く頑丈な体躯を誇る中隊長を見つけた。クレイド騎馬中隊長である。
そこでレブニスはクレイドを密かにそばへ呼んでは、肉体の鍛錬に努めた。また戦略についても手ほどきを受ける。結果としてレブニスは一年で健康な肉体を手に入れ、戦場での兵法理論を習得するに至る。
翌年十九歳となったレブニスは陣頭指揮に当たり、彼を「惰弱帝」とこけおろした王国軍を完膚なきまでに叩きのめし、戦場における非凡さを世間が知ることとなった。これもすべてクレイド騎馬中隊長のおかげである。
しかし本年は皇帝親征であったため、クレイドを重装歩兵大隊長へ配置転換するわけにもいかなかった。
用兵の特徴
その後二十歳以降は三名いる帝国大将に戦場を託し、レブニスは内政に専念することとなる。これにより帝国は飛躍的に治安が良くなり、食料や飲み水にも事欠かなくなった。大将はエビーナ、ヒューイット、マシャードが務めており、それぞれが直属の重装歩兵大隊を麾下に置く。もし大将が敵に討たれたら、重装歩兵大隊長が大将へと昇格する。そのため三大将は重装歩兵大隊長に用兵を叩き込み、次代の大将として育てるシステムが構築されていた。
レブニス帝の狙いは、恩義のあるクレイドを大将の位に就けることである。
しかしそのためには現在帝国軍で最も攻守のバランスがとれ、数々の戦いで非凡な用兵を見せるエビーナ大将をみすみす討ち取られ、次いで重装歩兵大隊長が大将に昇格して戦死し、クレイドが重装歩兵大隊長として軍功を重ねるなければならない。クレイドをヒューイット大将かマシャード大将の重装歩兵大隊長に任命すれば解決することではあるのだが、ヒューイット大将もマシャード大将も、巨躯を誇る男のことを内心軽蔑していた。
レブニス帝がクレイドの配置転換を試みるも、ふたりの大将に断られることとなった。
そして本年のクレイドが参戦するエビーナ大将とアマム軍務長官の「テルミナ平原の戦い」が始まったのである。
【レミア】
二十四歳
経歴
ボッサム帝国重装歩兵小隊長
ボッサム帝国重装歩兵中隊長
ボッサム帝国重装歩兵大隊長
身体的特徴
長い銀髪を兜に押し込める、白銀の瞳
157cm、48kg
精神的特徴
皇帝レブニスの実妹の姫騎士。ボッサム帝国の士官学校出身であるため、小隊長から経歴がスタートする。
皇帝の実妹という立場から、補佐職に就くことなく隊長職を昇進している。
上官はエビーナ大将であり、彼の第二重装歩兵大隊長を務めている。
クレイドが兄レブニスを秘密で鍛えていたことを知っており、エビーナ大将が王国軍ミゲル中隊所属の“無敵のナラージャ”によって討ち取られてのち、自らが大将になれるポジションにあったが、あえてクレイドを大将に推薦した。レブニス帝の実妹の推薦であり、他の重装歩兵大隊長も彼女に同意した。
兄帝はレミアが第一線で戦うことを快く思っていないが、レブニス帝は終戦が告げられるまで王国と戦い続ける覚悟を固めていることもあり、助力ができればと前線に身を投じている。
用兵の特徴
基本的にはエビーナ大将のそばで護衛を務めているが、第一重装歩兵大隊が疲弊した場合は前線に投入されて第二重装歩兵大隊を指揮している。
エビーナ大将から指示された役割を十二分に果たすため、よき切り札として王国軍大将にも名が知れわたっているが、中隊長であるミゲルとガリウスはその名を知らない。
正々堂々とした戦いを好み、士気の高い隊員を鼓舞して実力以上の戦闘力を発揮する。王国軍を打ち負かして敗走させるなど、指揮官としても申し分のない能力を有している。
【タンパ】
七十五歳
経歴
皇帝レブニスの傍系の大叔父
帝位継承権第三位
肉体的特徴
背筋の通った快活な老人
精神的特徴
戦より融和を求める気質で、傍系ではあるが帝位が回ってきても辞退してレブニスへ帝位を引き渡した。
権力に執着せず辺鄙な国境の町を任されている。彼を慕うハシを従えているが、彼や町の住人に己の身分を明かしてはいない。
用兵の特徴
国際情勢に通じており、ボッサム帝国に隣接する諸国や異民族の事情に詳しい。
レイティスの民が分かれて戦っている状況を憂慮しており、早期の和平成立を目指しているものの、自ら政治力を失うよう動いていたため、その権限を有していない。
ミゲルが帝国領へ乗り込んだ際、彼を伴って帝都へと上り、無事対面を果たした功績は大である。それでも、タンパは住み慣れた国境の町で、今日も見聞を広げている。
【ヒューイット】
享年六十三歳
経歴
ボッサム帝国大将
肉体的特徴
茶色の髪、自慢の髭を蓄えた自信家の風貌
168cm、75kg
精神的特徴
帝国軍三大将のひとり。
斜線陣を得意とし、己の戦術を絶対と思って臆病と奇策を嫌っており、クレイド騎馬中隊が状況を一変させうる戦術を提案してもすべて却下していた。二年前のヒューイット大将とカートリンク長官の「テルミナ平原の戦い」においてクレイドがヒューイット大将の指示を仰がず、独断で膠着状態の打開を図った。それにより勝利に導いたことで、クレイドの評価が高まると、以後演習や戦場にクレイド騎馬中隊を伴わなくなった。
この一件から体躯が大きい人物を信用しておらず、むしろ軽蔑すらしている。
戦意は高いが融通の利かない性格で、のちに墓穴を掘ることとなった。
用兵の特徴
当時としては先進的な斜線陣を得意技とし、つねに方陣を布く王国軍を幾度となく窮地へ陥らせた。
二年前のヒューイット大将とカートリンク軍務長官の「テルミナ平原の戦い」において、王国軍ユレイカ中隊長を始めとする多くの中隊長を討ち取る。ユレイカ中隊の副官だったミゲルが暫定的に中隊長としての権限を有し、ミゲルが率いる中隊はガリウス中隊とともに撤退戦の殿を買って出て、見事に役割を果たした。その功によりミゲルは正式に中隊長へと昇格する。
斜線陣は陣容に厚みはなく、ミゲルとガリウスが見せた半包囲防御陣の前では紙くずのようなものであり、防御陣に挑むほど余計な出血を強いられることとなった。
このためこの戦は引き分けに終わった。
【マシャード】
享年六十二歳
経歴
ボッサム帝国大将
身体的特徴
白髪に白ひげを蓄え、翡翠色の瞳を持つ
168cm、60kg
精神的特徴
鶴翼の陣を得意とし、王国軍を外側から削り取っていく戦術に秀でている。王国軍が方陣を主体とするため、マシャードが半包囲するのが先か、王国軍が手薄な中央を突破するかで勝敗が分かれる。
一年前のカートリンク軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、クレイド騎馬中隊が素早く王国軍の背面を封鎖し、王国軍を完全包囲下に置くべく包囲網を狭めようとした。
この事態に逸早く気づいたミゲル中隊長とガリウス中隊長はカートリンク軍務長官に伝令を飛ばし、援軍が到着するまで協力してクレイド騎馬中隊の阻止を図った。ふたつの中隊が帝国最強のクレイド騎馬中隊を完全に封じている間にカートリンク軍務長官は参加する諸将とともに激戦の中で手薄な鶴翼を突破し、戦場を撤退することとなった。
この戦いの勝者はマシャード大将に帰したが、クレイドが鶴翼の一端を堅持していれば王国軍を半包囲下に置いてカートリンク軍務長官をも討ち取れたはずだと憤慨し、これを機にクレイド中隊を蔑ろにすることとなった。
結果としてカートリンクは軍務長官から解任され、アマム将軍が新たな軍務長官となって今年の「テルミナ平原の戦い」はエビーナ大将とアマム軍務長官で争うこととなった。
用兵の特徴
ひじょうに好戦的で利己的な大将であり、己の手柄を誇るあまり部下の信任は必ずしも得られていない。直属の重装歩兵大隊長は自身の息子たちに任せ、大将の座を世襲しようと躍起になっている。
王国軍が方陣を主体とすることを利用し、リスクはあるものの包囲殲滅が容易な鶴翼の陣を採用するなど、先見の明があるのか利にさといのか判断がつきかねる。
【バライカ】
五十歳
来歴
帝国軍ヒューイット大将副官
身体的特徴
青みがかった銀髪に、青い瞳
158cm、65kg
精神的特徴
巨漢嫌いのヒューイット大将が目をかける副官。
参謀として付き従うだけでなく、ヒューイット大隊の分隊を指揮することもある。勇敢さに欠け、慎重すぎることで、参謀としては優秀と言える部類だが、分隊指揮官としては用兵に柔軟性がない。
用兵の特徴
ヒューイット大将に進言はするものの、ヒューイットが決めた方針を外れることがない。
これがヒューイット大将&マシャード大将とミゲル軍務長官との「カンベル山稜の戦い」において、ヒューイット分隊を指揮した際に致命的な失態を演じ、ミゲル軍務長官に倒されることとなった。
【シュラール】
四十九歳
来歴
ボッサム帝国軍マシャード大将副官
肉体的特徴
金の長髪、翠の瞳
175cm、70kg
精神的特徴
騎士道精神を有する信義の人。
クセの強いマシャード大将の副官であり参謀として付き従っている。
マシャード大将は己よりも人望のあるシュラールを内心嫌っていたが、彼が自分の指示に従うさまを見て、自尊心をくすぐられてもいる。
用兵の特徴
マシャード軍の分隊を指揮することもあるが、騎士道を重んじる正々堂々とした戦いを挑んでいる。
ヒューイット大将&マシャード大将とミゲル軍務長官との「カンベル山稜の戦い」においてマシャード分隊を指揮したが、多勢で攻め寄せる王国軍に「正々堂々」とした戦いを求め、聞き入れられずにガリウス将軍に討ち取られた。
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