第20話 水、発見!
ウサギは地を揺らして飛び上がり、海斗らを踏みつぶそうとして──
「おっと」
海斗は竿を天に向け、ウサギを串刺しにした。たちまちウサギは光の粒子となって消えゆく。
ウサギを倒した!
「急に来てビックリした……」
「で、ですね。あ、今のでポイント溜まったんじゃないですか?」
「そうだね。えっと……324ポイント溜まってる」
お世辞にも大量のポイントとは言えないが、水を買うくらいのことはできそうだ。
「……あ、先に靴を買ってもいい? 俺、一階層で靴を脱ぎ捨ててきちゃって」
「あれ、そうだったんですか……!? す、すみません。気が付かなくて……」
睦美さんが謝る必要はないと思うけど、とにもかくにも彼女の了承は得られたということで。
俺は弥生に視線を合わせる。
「……いいんじゃない? 靴を履かずに石とか踏んだら危ないし」
弥生にも許可をもらった海斗は、「スパイクブーツ」と口にした。
「うわっ、やっぱり高いな……」
スパイクブーツは1000ポイント以上する。324ポイントでは購入できない。
うーん、それじゃあ……。
「マリンシューズ」
《ウィン》
『【マリンシューズ】 120p
購入後のポイント 324 → 204』
迷わず購入。ポチっ。
宙からパステルブルーのマリンシューズが落ちてくる。そっか、色は選べないんだな……。
まぁ少し派手な気はするけど、別にそこまで気にはならない。早速履いてみる。
……うん。サイズはぴったりだ。
「『浜辺での釣りなどに最適』って書いてあったけど、浜辺がないな……」
まぁ、それはいつかのお楽しみということで。今は普通の靴として履かせてもらおう。
「お、お似合いですね、海斗さん」
「そう? ありがと」
普通に嬉しかった。
「……で、まだポイントは残ってるけど。水、どうしようかな」
どうしようかな、というのはもちろん「川の水を飲む」か「水を購入する」かのことだ。
「川の水はポイントを使わずに飲めますけど……」
でも水質には不安が残る。ここでリスクをとるのは避けるべきか……と。
《ピチャ》
水面をなにかが跳ねた音。海斗は脊髄反射でそちらを向く。釣り人は跳ねた魚を見逃さないように訓練されているようなものなのだ。
「うん。ここの水は飲めるね」
「え、どうしてですか? コケだけだとそこまでの確信は持てないんじゃ……」
「その通りだけど、もう一つ証拠が見つかったから」
「証拠?」
「そう。さっき跳ねてた魚はアマゴっていうんだけど、アマゴは清流にしか住めない魚だから。ここの水は飲んでも大丈夫なくらい綺麗だよ」
ここでも海斗の超人的な能力が活かされた。遠くから見て、しかも一瞬で、魚を選別することができるのは、海斗の特技でもある。
「そ、そうなんですね! それなら安心して飲めます!」
睦美はトテトテと川辺に歩いて行き、両手で水をすくい上げて飲んだ。
「ふわぁ、冷たくて美味しいですぅ~」
本当に美味しそうに飲んでいる。海斗もそれに倣って飲んだ。美味い。
弥生も川辺でしゃがみ、川面を覗き込んで、水を飲むかと思いきや──
「……こんな顔してちゃ駄目ね」
そう言って顔をバシャバシャと洗った。すると弥生の顔はどこかスッキリしたものとなっていた。顔を洗うことでリフレッシュできたらしい。
なぜあんな顔をしていたのか気になるが、立ち直れたのなら、原因を蒸し返すこともない。そう思って海斗は、弥生に声をかけるのをやめておいた。
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