第13話 一人だと寂しいのはウサギの性
「……ふぅ、これでポイントはかなり稼げたわね」
弥生は画面を開いて確認する……が。
「あれ、思ったより……」
顔をしかめる弥生。
「どうしたんですか?」
「いや、あんだけ倒したのにポイントが17234pしかないのよ」
画面を見ながらそう呟く。睦美はそれを覗き込み、
「え、それだけあれば充分じゃないですか!」
と歓声を上げたが。
「……待てよ? さっき竿に80000p使ったから、本当ならもっと溜まっててもおかしくないんじゃないか?」
「ど、どういうことですか?」
「だから、さっき80000p支払えたってことは、裏を返すと80000p所有していたってことになるでしょ? たかだかモンスター2匹倒しただけでそんなに溜まったのに、今回は21匹倒して20000pもいかなかったの」
「ほ、本当ですね……確かにおかしいです……」
その説明で納得したのか、ハッとする睦美。そこで海斗が弥生に問う。
「お前なら原因が分かるんじゃないか? なんかこの手のことに関しては勘が鋭いみたいだし」
顎に手を当てて考えた後、
「可能性としては二つあるわね。一つ目は獲得ポイントが乱数だった場合。同じモンスターを倒してもその度に獲得ポイントが異なれば、今回のようなことが起きる可能性もある」
「でも、それにしては差があり過ぎないか? まあ、そういうものだって言われたら頷くしかないけど」
「そうね。だから私は二つ目の可能性の方が高いと思っているわ」
「そ、その可能性とは……?」
「あの巻貝よ。巻貝を倒して得られるポイントが多いという可能性。今回倒したモンスターの内訳はエリマキトカゲ4匹、タツノオトシゴ17匹よ。だから、巻貝がレアキャラで、倒すとたくさんポイントの入るモンスターって考えると、合点がいくわ」
「そうか。仮にウロコフネタマガイを倒して80000p手に入るなら、それだけで理屈が通るな」
なるほど。それが一番ありそうだ。
「防御力が高い代わりに、ポイントをたくさん獲得できる。簡単に言えばメ○ルスライムね。あ、はぐれてるやつでもいいわ」
「「?」」
「なんでもないわ。つまり、もし巻貝を見つけられたらラッキーってことよ」
多少強引に話を括り、会議終了。その後はなんとなく各々で過ごす空気となり。
「……ふあ~ぁ」
睦美があくびをした。疲れが溜まっているのか、目もトロンとしており、非常に眠そうだ。
「……まだ9時よ? ちょっと早すぎない?」
スマホゲームに勤しみながら、弥生がそう言う。スマホで時刻を確認したらしい。
「す、すみませぇ~。えへへ、いつも寝るのが早いもので……」
なんか酔っ払いのようなテンションだ。無理して起きると頭が回らないのだろうか?
「でも、今日は早めに休んでおく必要があるんじゃないか? 幸い、この部屋に巨大なモンスターは入ってこれないみたいだし」
海斗は床の穴を見る。ちょうど人が入れるサイズなのは、少し都合が良すぎる気もするが……それは気にしなくていいだろう。
「えぇ……そうね……」
だが、浮かない顔の弥生。やはりモンスターが襲ってこないか、心配なのだろうか?
そう思った海斗は、穴を塞ぐように糸を張り巡らし、その中央に鈴を取り付けた。
これで何者かが侵入してきた際、音で気付くことができるだろう。
「あんた、なにそれ?」
「糸と鈴で、即席の鳴子を作ってみた。これで安心じゃない?」
「? 鈴って釣りに関係あるわけ?」
「竿につけておけば、放置してても魚がかかったの分かるでしょ? 竿が揺れるから」
「なるほどね」
そう言ったものの、やはり弥生の表情は優れない。
「……どうしたの?」
すると、弥生が言い辛そうに、口を開いた。
「私、完全に昼夜逆転してるから、寝付けそうにないのよ」
「知らん。お休み」
睦美に倣って、ごろんと横になった。少し床がごつごつしているが、しょうがない。
「ちょ! あんたまで寝たら、起きてるの私だけになるでしょ! 抜け駆けはズルいわ!」
「……だったらゲーム止めればいいのに。寝る前にそんな光浴びてたら寝れないに決まってるだろ」
「あ、あんたなんてこと言ってくれるのよ!? 私の心の栄養はゲームからしかとれないの! ゲームを禁止することは即ち、私に死ねって言ってるようなものなのよ!?」
「俺には散々『死ね』って言ってきたのにな」
「グサッ……!」
弥生は思わぬカウンター攻撃を食らった。
「それにお前、バッテリー大丈夫か? 充電もできないんだし、電気の余計な消費はやめておいた方がいいと思うけど」
海斗のライトがあるとはいえ、それもいつ電池切れになるか分からない。購入できるかもしれないが、ポイントはできるだけ節約したい。
「大丈夫よ。これを見て」
《ウィン》
『【充電100%】 0p
購入後のポイント 17234 → 17234』
「なんか知らないけど、これだけは良心的だったわ。これで私も好きなだけゲームできるってわけ」
ポチっ。弥生は【充電100%】を購入し、スマホ画面を見せてくる。
すると82%だった充電メーターが、どういうわけか急速に増え、100%になった。
「ね? これで問題ないでしょ?」
本当に問題がなかったので、海斗は頷いた。まぁ、そもそも慎重な弥生がなんの考えもなしに行動するとは思えないのだが。
「これで照明に関して心配はないな。お休み」
「あっ! だから抜け駆けするのはズルいわよ!」
結局、そんなやり取りが12時まで続いたのだった。
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