Phase9

「下山竜持が動いた。プロテクターズと接触する」


 ソージローが告げる。


「どうするんすか?」

「善は急げだ。今日の夜、終わらせる」


 四季は少し複雑な顔をした後、了解、と短く言った。

 




 日が沈んで、辺りが暗くなっていく。

 健斗と竜持は基地の応接室に向かい合って座っていた。


「……つー訳だ。そういうことで、手前らに協力してやるよ」


 竜持は自らに起こった出来事を話して、協力を申し出た。

 健斗には今、彼が語ったことがにわかには信じられなかった。


「フレンズは、あの人が作り出していて、何で……? それに、四季が……」

「ああ、間違いねえ。あいつは、あっち側だ。何考えてんのかは知らんが、殺すべきだ」


 健斗は黙り込んでしまう。



 坂本四季。

 かつてプロテクターズにいた人間。

 自分の相棒にして、最高の弟分。

 健斗もこの間、彼に刃を向けられたばかりだ。

 でも何か、彼には彼なりの作戦があって、フレンズの駆除に陰で協力してくれている。

 そういう風な希望を捨てられなかった。

 でもやっぱり、違うのかもしれない。

 彼は、もう……



 そんな思考に耽っていると、竜持が声をかけてきた。


「なあ、フレンズがあと何体いるか、知ってるか?」

「ああ、あと3体。だよな」


 竜持は頷く。


「オーザ、ソージロー……あともう1体って誰か分かるか?」

「知らない。見たことも聞いたこともない」


 健斗は首をかしげる。




「知りたい?」


 ドアの方から別の声がした。

 2人は慌ててその方向を見る。

 そこにはコートを着た男が立っていた。

 しかし、顔には文様があった。


「何でここに入れたのか疑問に思った。そうだね、安田健斗?」

「な……!」


 フレンズに思考を読まれた。

 もしや、奴のスキルは……


「違う違う。俺のスキルは他人の考えていることがわかるとか、全然そんなんじゃないから。お前ら全員、顔みりゃ分かるよ? 何考えてんのかくらい」


 爆発的な殺気。


「手前……基地にのこのこ一人で、よっぽど殺されてえみてえだなあ‼ ソージロー‼」


 竜持は早くも薙刀を構えている。


「まさか。こんなに隊員が出やすい場所に一人でなんて来ない。……それが、俺が簡単にここに入れた理由でもある」


 そう言ってソージローは鍵を手にもってぶらぶらと揺らしている。

 あの鍵は、もしや……!

 次の瞬間、健斗たちは窓の方から入ってきたに足を取られ、割れた窓ガラスの破片ごと外へ引っ張り込まれた。




 外へと放り出された健斗たちはすぐに受け身を取り、すぐに立ち上がった。

 目の前には小柄な人影。

 誰だか確認する前に、声が聞こえた。


「こんばんは、今夜は星がよく見えるね。健ちゃん、竜持くん」

「四季……」

「近いうちに会おうって二人には言ってたから、あんまりびっくりはしてなさそうですね」


 竜持が一歩前に出て言う。


「四季……手前何やってんだ?」

「見ての通りですけど?」

「どういうことだよ」


 四季は冷酷な声で告げた。


「今日は、全てを終わらせに来た。あなたたちを殺して、『理想の世界』を実現させる」

「そういうことなんでよろしく」


 気づけば四季の隣にはソージローがいて、会話に割り込んできた。

 そして拳銃を健斗たちに向けて、引き金を引いた。

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