Phase10
銃声を合図に戦闘は始まった。
2対2での戦いが自然に健斗と四季、竜持とソージローという2つのグループへと分かれていく。
「手前の腕は真っ二つにしたはずなんだけどなあ? どうして生えてやがんだ、このモンスター」
竜持は薙刀を振り回しながらソージローに問う。
「生えてきた。それだけのこと」
ソージローは軽やかに攻撃をかわしながら答える。
「なら今度は頭と胴切り離してやるよ」
「やってみろよ、できるならね!」
ソージローは落ちている木の棒を剣へと変える。
一方、健斗は四季のスキルに翻弄されていた。
水のスキルは相手との距離が遠かろうが近かろうが関係なく威力が高い。
故に、磁力のスキルで四季との距離を遠ざけても近づけても無駄だということだ。
「ぐぁっ……!」
水とは思えないほど硬くて、冷たい攻撃が健斗の腹部に命中した。
その場に倒れこむ。
四季がゆっくりと健斗に向かって歩いてきた。
「諦めなよ。あなたは私には勝てないよ、兄さん」
静かに四季が言う。
健斗は訊かずにはいられない。
「何で……こんなことするんだよ。それに、『兄さん』って……なんだよっ⁈」
「相変わらず質問が多いなあ」
四季は一つため息をついて語りだす。
「まず一つ目の質問からね。これはさっきも言ったけど、『理想の世界』を創るため」
「『理想の世界』……?」
四季は頷く。
「そこではね、誰かが誰かのことを理不尽に殺したりなんてしない。もしそんなことをしたらその人の命がない世界。今みたいな、こんな争いも起きない。みんなが静かに、安らかに暮らしていけるんだ。素敵でしょ?」
四季は健斗に同意を求めるが、健斗には実現できるとは思わなかった。
「そんなの……ただの絵空事だ」
「そう思うだろうね。だから、手始めに罪なき人間を殺したフレンズと、これまた罪なきフレンズを殺した人間、つまりプロテクターズを排除しようってわけ。まあそんなとこだね。そんで次の質問、私がなんであなたを『兄さん』って呼ぶかだけど……」
四季は言葉を切って下を向いた。
そのあとに夜空に目を向ける。
健斗の目には、なぜかそれが悲しげに映った。
四季がおもむろに語り出す。
「兄さんはさ、覚えてるんだよね。この組織に入るよりも、前のことも……」
健斗は頷く。
「私はさ、覚えてないんだ。家族のこととか、なんにも。……でも話には聞いた。どうやら私の家族は10年前に、フレンズの襲撃に遭って亡くなったんだって。まあ全員がってわけじゃあなくて、2人いた子供のうちのお兄さんのほうだけ生き残ったらしいんだけど」
健斗は自分の体が強張っていくのが分かった。
それは……
それは……!
「その生き残った子の名前が――安田健斗、あなただった。……私は真実を言っているだけだよ。あなたは私の実兄だ」
そんなはず……
あり得るわけがなかった。
健斗はあの日、目の前で弟が殺されるのを見た。
生きているはずがないんだ。
それに似ているのは体型や背格好くらいで、顔も……それから名前も、違う。
「もちろん、あなたに気付かれないように名前とか顔、変えられたみたいだよ。組織に入る前」
「でも……俺の弟は……」
「うん、死んだみたい」
…………?
言っていることが矛盾している。
健斗が疑問の目で四季を見つめる。
四季は夜空を見たままで、少し笑って、呟いた。
「私はね、フレンズなんだ」
何……だって……?
健斗は四季の顔を見る。
そこには刺青のような文様は一切ない。
それなのに。
彼は自分をフレンズと言う。
信じられなかった。
「長くなってしまったね。これで話は終わりだ。次に終わるのは、あなたの命だ。兄さん」
四季は視線を夜空から健斗へと移した。
そしてゆっくりと短刀を振りかざす。
そこでなぜか動きを止めた。
「どうした四季……斬らないのか?」
尚も四季は固まったまま。
振り上げられた手は小刻みに震えていた。
「お前……」
竜持は短刀を振り上げたまま動かない四季に気付いた。
これはチャンスだ。
竜持はソージローをそっちのけにして四季の方へと走り出す。
ソージローは一瞬戸惑ったが、竜持が向かっている方向を見て呟く。
「あいつ、何やってんだよ」
今から竜持を追っても四季のところへたどり着くのは竜持が早い。
このままでは確実に四季は刺されるだろう。
ソージローはやむなく撤退を決意した。
持っていた剣を
すぐに地鳴りのような爆発音と眩しい閃光が発生した。
健斗と竜持の視覚、聴覚が正常に戻った時、ソージローと四季の姿はすでになかった。
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