Phase8
坂本四季はオーザと共に廃墟へと帰った。
この廃墟はもともと小さな病院として使われていた。
四季、オーザ、そしてソージロー。
彼らはそれぞれここに部屋を設けられて、そこで過ごしていた。
もっとも、四季はたいていの場合、ソージローの部屋で過ごしているが。
6年前に初めて四季がこの場所を訪れた時には30人以上はいた居住者も今では3人だけになっていた。
寂しさはあった。
しかし立ち止まってはいられない。
四季は、仲間が次々に減っていくこの状況を打開するために戦っているのだ。
待合室だったスペースでオーザと別れ、四季はいつも通りソージローの部屋へ赴く。
「ただいまー」
「ああ、おかえり」
ソージローはチョコチップスティックパンをほおばっている。
そして四季の顔を一瞥し、話し出す。
「なんか浮かない顔してんじゃん」
「そりゃそうですよ。病院からここまでオーザさんと帰ってきたんだけどさ、あの人、ずーっと私に文句言ってきたんすよ。『こういうところの詰めが甘いからオマエはダメなんだ』とか、『フレンズ狩り助けてどうするつもりだ』とか……。別に下山竜持なんかスキル持ってないんだし、後回しでもよくね? って思うんですけどね」
「下山竜持に何かあったの?」
「彼ってよりも……岸井七羽が死にました。オーザさんがやったみたい。多分間違いないと思います」
ソージローは予想していた、とでもいう風に首を縦に振る。
「そうか。時間の問題だったけど、思ってたより早かったね」
「そうですね……。まああのななはえもんには復讐なんて無理無理。人が良すぎますもん」
そんな軽口を叩きながらも四季は少し悲しそうな顔をする。
ソージローはそんな四季を見て、何か言おうと口を開きかけたが、結局何も言わずに口を閉じる。
「いよいよ、ですね」
短いの沈黙の後、四季が唐突にそう言った。
「岸井七羽が死んだ。それもフレンズに殺されて。ということは下山竜持は何らかの形でまたプロテクターズに接触する可能性が高い。……いよいよこの戦いも終盤だ」
ソージローが返す。
「うん。『理想の世界』には、人殺しみたいなやつらはいらないもんね」
ソージローは頷く。
「いつでも動ける準備はしておこう」
ソージローはそう言い、またチョコチップスティックパン――ジローパンと四季は呼んでいる――を食べ始めた。
ある朝、健斗の下に着信があった。
確認してみると、彼にとって意外な人物からだった。
「もしもし」
「よう、久し振りだな。健斗」
「竜持……。久し振り、どうして急に?」
「手前らに協力してやるよ」
唐突な申し出に健斗は驚く。
と同時に疑問を感じる。
「どうして? お前には仕事があるんじゃないの?」
「ああ、当然仕事は続けるさ。それに、別にまたプロテクターズの一員になる気はねえ。だが、俺にはぶちのめさなきゃなんないヤツができた。……これ以上のことは直接話してえ。今日の夜、基地に行っていいか?」
「……ああ、分かった。待ってる」
電話を切る。
健斗はもやもやした心のまま、自宅を後にする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます