Phase6
岸井さんが目を覚ましたのは日が昇ってからのことだった。
「あれ? 外が明るい」
「もう8時台ですからね。そりゃ太陽も昇ってますよ」
俺はコーヒーを淹れ、岸井さんに手渡す。
彼女はそれをゆっくりと飲み、口を開いた。
「助けてくださったんですか?」
「いや、べ、別に助けたってわけじゃないけど、急に出たフレンズと戦ってたら近くに岸井さん倒れてたから、まあ?」
彼女はおかしそうに少し笑った。
「……ひょっとして竜持さん、私に気があります?」
「はあ? どうしてそういうことに⁈」
岸井さんは俺の言葉には答えず、上目遣いで俺の方をしばらく見た後、ぽつりと言った。
「ありがとうございました」
「まあ、守るって約束しましたからね」
「そう……でしたね」
彼女はうつむいてしまった。
右手で右目を覆うようにして隠す。
何か俺、変なことした?
とりあえず話題を変えた。
「引っ越しますか」
「はい」
健斗はフレンズの基地から自宅へと歩いていた。
慧他が死んで1年が経つ。
あの夜からは何をするにしても手につかない。
指導者として指示を出すことはおろか、フレンズの駆除すらままならない。
と言っても、健斗一人が戦力になっていないところでプロテクターズ全体が機能停止している訳ではない。
現にフレンズは最近は滅多に姿を現さなくなった。
それだけ数が減っているということであろう。
基地と健斗宅のちょうど真ん中くらいのところに三方を塀に囲まれた空き地がある。
そこには草が生い茂っていて、他には何もない。
いつも通り空き地の前に差し掛かった時。
「ずいぶん早い帰りなんだね」
声がした。
とても懐かしい声。
驚いて空き地の方を振り返る。
そこには塀にもたれかかっている見覚えのある人がいた。
「四季……なのか? 生きてたのか! 良かった」
健斗は四季の方へ歩み寄る。
「久しぶりだねえ」
四季も応じる。
「生きてたなら何ですぐに戻ってこなかったの?」
「まあ、いろいろあってね。それにしても健ちゃん、機嫌悪そうだけど、なんかあったの?」
「特に何もないよ。ただ、1年前、慧他が死んだ」
「うん、知ってる」
四季は取り立てて悲しい様子も見せずに続ける。
「慧他くんが亡くなってからなんもやる気が起きないってことかな? だから帰宅もこんなに早いのか」
「俺がいてもいなくてもあんま組織は変わらない」
「えー、それじゃあ困るなあ。健ちゃんがいなくなったら組織崩壊! って感じじゃあないんだね」
「今はそう。でもこれからは安心だわ。なんせ四季が戻ってきてくれてまた一緒に」
「あーごめんごめん」
四季は健斗の話を遮った。
健斗は不思議そうな顔で首を傾げる。
「私がここに来たのはプロテクターズに戻るためじゃないよ」
四季はベルトから短刀を抜き、健斗の首許に突き付けた。
「あなたを殺すためだよ。兄さん」
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