Phase7

 基地の周りを取り囲んでいたフレンズ達は一斉に中へと攻め込んできた。



 俺は基地を駆ける。

 フレンズにこの場所が筒抜けだとは思ってもみなかった。

 きっとサトリを捜しているつもりが、どこかから逆に尾行されていたのだろう。

 大失態だ。

 せめて誰よりもフレンズを狩らないとみんなに顔向けが出来ない。

 五メートルくらい先に三体いる。恐らく雑魚だ。

 俺が右手に力を込めると奴らは吸い付くように俺に近付いてくる。

 剣で一体ずつ刺すと、すぐに動かなくなった。

 まだ全然足りない。もっと狩らないと。

 俺は焦る。






 健斗以外の隊員もまた基地内を走り回ってはフレンズを駆除し続けていた。



 しかし、いくら戦い続けたところでプロテクターズの隊員は人間である。

 体力、数の両方で勝るフレンズに徐々に押されていく。

 戦況は明らかにフレンズ有利になり、ついに十体のフレンズが会議室へと侵入した。

 中には戒、一人だけである。

 十体のフレンズは我先へと彼に攻撃を仕掛ける。

 彼は左手に持ったスイッチを押した。

 突然の大爆発。






 戒が起こした大爆発の様子は、健斗や四季がいつも通っている森でもはっきりと見て取れた。


「うわあ、戒くん、派手にやってるなあ」

 

 四季は呟く。



 この場所にはほとんどフレンズは来ていなかった。

 よって彼はこの日、未だに短刀を抜いていない。

 四季は、サボってるのバレたらめんどくさそうだな、と考えながら一際大きい木の下に座る。



 その直後、前方から声。


「お前の顔はサトリさんが見てた資料でよく見たなあ」


 既にその気配を感知していた四季は驚きもせず、尋ねる。


「あ、そうなんですか? ぼくってまさか有名人?」

 

 声の主はその質問に答えず、逆に質問した。


「なんでここにいるんだ? ここにはフレンズは来ないはずだが」


 四季は少し黙った。

 その後で彼は、自嘲気味に笑って、答える。


「……さあ、なんでだと思います?」

「……さあな、まあそんなことはどうでもいい。俺としてはお前とこうして二人きりで話せているんだから万々歳だ」

「ふーん? ……それじゃあ、ぼくからも質問。あなたは何でさっきからそこいるんですか? 別にぼく、あなたのこと殺すつもりないからスルーしてもらって全然問題ないんだけど」


 四季がそう言うと、フレンズは木の陰から姿を現し、ピストルを四季に向けた。


「坂本四季、お前を殺すためだよ」


 四季はどこまでも乾いた切れ長の目で銃口を見つめる。



 銃声。






 会議室から、炎と共に十体のフレンズが飛び出した。

 炎の中から悠々とした足取りで戒が出てくる。

 そして、そのままフレンズが蔓延る修羅場へと足を運んでいく。






 つい直前まで多くの人間・フレンズが戦っていた基地内は徐々にがらんとしてきたように感じる。

 駆除されたフレンズは粒子になって消え、殺された隊員は無残に横たわって死んでいる。

 そんな基地のほぼ中心で、俺はサトリを発見した。



 サトリも俺に気付いたらしい。


「お前には感謝しないと。おかげでこの場所が分かった」


 話しかけてきた。

 怒りがふつふつと湧き上がってくる。

 冷静になれ、と自分に言い聞かせる。

 すぐに戦闘態勢に入る。



 リーチは俺よりも奴の方が長い。

 なので俺が勝つには接近戦に持ち込むしかないということだ。

 手に力を籠める。

 俺のスキル――相手を磁石のように自分から近づけたり引き離したりできる――が発動し、サトリの身体は俺の方へと引き寄せられる。

 しかしサトリは引き寄せられるのを逆に利用して俺の腹に拳を打った。

 俺は予測していなかった攻撃に反応できず、まともに食らう。

 その後もサトリの追撃は止まらない。

 俺が地面に着地する前に拳、拳、蹴り、拳、蹴り。

 無数の攻撃が放たれ、俺は回避行動をとることすらできない。

 ようやくサトリが攻撃を止めた。

 俺は地面に叩きつけられた。

 手から剣が離れる。

 起き上がることができない。



 そんな俺にとどめを刺そうと、サトリは先ほど落とした俺の剣を拾い、背中めがけて刺してきた。



 サトリは刺すことができなかった。

 奴は攻撃を察知し、横に飛びのいた。

 それでもなお、戒くんの斬撃はサトリの身体に届いた。








 




 

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