Phase2

「フレンズの目的は分かりませんでしたが、新しい発見はありました」


 フレンズから得た情報を戒くんへ報告した。


「奴はもともと人間だったみたいです」

「へえ、人間がどうしてあんな怪物に?」

「それについては分かりませんでした。先ほどの奴は、朝起きたら自分が怪物になっていた、とのことです」

「うーん、それじゃあ何ともなあ……。他は? なんかない?」


 俺はもう一つ、と前置きしてさらに報告を続ける。


「フレンズは”サトリ”と呼ばれる奴の命令を受けて人間を襲っているみたいです」

「……サトリ?」


 戒くんが鋭くこちらを振り向いた。

 その勢いに少しぎょっとする。


「何か……心当たりでも?」

「…………いやあ、学生時代にそんな名前の友だちがいたからびっくりしちゃった」


 戒くんが笑いながらそう言った。

 びっくりしたのはこっちだわ。急に振り向きやがって。

 どう反応していいかも分からないし。


「その人とはまだ連絡とったりするんですか?」

「亡くなったよ。事故で」


 ………。

 ……もっと反応に困る答えが返ってきた。

 ……とりあえず謝っとくか。


「……すいません」

「……まあそれは置いといて、また健斗に頼みたいことがあるんだけど」


 戒くんは話題を変える。


「最近、上野の辺で目撃情報が多いんだ。四季にも言ってあるから、二人で行ってきてくれない?」

「分かりました。見つけ次第駆除で大丈夫ですか?」

「うん、よろしく。それと新しい情報あったらまた教えて」


 じゃ、行ってらっしゃい!、という戒くんの声を背に、俺は準備に向かう。






 準備を終えていつもの森で四季と待ち合わせた。

 俺が着いたときには既に四季はいて、俺の姿を確認すると手を振ってきた。


「おー、お疲れー!」

「お待たせ」


 俺も少し手を挙げる。



 上野へは電車で向かう。

 その道すがら、四季はこの前のフレンズのことについて質問してきた。


「あの子、どんな感じだった?」

「なんかフレンズじゃないみたいだった。普通の女の子って感じ、刺青以外は」


 俺は思ったことを素直に話した。


「まあ人のこと襲ったこと無いらしいしね」

 

 四季は頷く。


「……で、今はどうしてるの?」


 俺はなんでこんなこと訊くのか疑問に思いながら答えた。


「駆除したよ」

「……え? ちょっと待って、あの子、人殺しじゃあないよね? なんで?」

「フレンズはどんな奴でも駆除しないと」


 当然のことだ。

 人間を襲うかもしれないフレンズは一匹残らず駆除しないと。

 

「……そっか」


 四季は小さい声で言って、それっきり黙ってしまった。






 上野に着くと、四季が頻りに西郷隆盛の銅像を見に行こうとした。

 どういう神経してるんだろう、仕事中だよ?

 仕事が終わったらいくらでも見に行っていいからとりあえずフレンズを捜すように言ったら、じゃあさっさと終わらせよう、と今度はとても真面目に周りを捜索し始めた。



 後方で叫び声。

 二百メートルくらい離れているだろうか。

 俺らは走り出す。

 途中、西郷隆盛の銅像の手前で四季は一旦足を止め、スマホを取り出した。


「写真撮ってすぐ行くから、先行っといて!」


 全くお前は……。



 呆れながらも俺は叫び声の方へ急ぐ。


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