第28話 エピソード・・27


 桃子ちゃんを確認してから、俺は足早に映画館に行き、名探偵コナンのチケットを大人用二枚買った。




 そして、幼稚園のお迎えの時間を見計らって、前を二回ほど横切り、桃子ちゃんとお母さんを発見、直ぐに声を掛けた。



 偶然を装い、理恵先生とデートの筈だったのだけど、急患が入って理恵先生が来られなくなってしまったことを伝え、大人用ですが子供も入れると思うので、お時間が合えば使って下さいと言いチケットを渡した。



 今日の三時からのチケットなので今から向かえば間に合うことを教え、携帯の番号を交換し、俺はその場を去った。



 俺は直ぐに桃子ちゃんのおじいちゃんが経営している、製薬会社の人事部に電話をし、大至急、桃子ちゃんのおじいちゃんに繋いでくれと頼んだ。



 電話口に出た、事務のお姉さんが、執拗にアポイントの有る無しや、御社のお名前などと外向きの言語を発していたから、その社長さんの御家族が危険な目に遭うかも知れないのに、そんな些細な事で時間を使ってあなたその時間取り戻せますか?何かあってから責任とれますか?

わかっているのは目黒の幼稚園に通っていて、娘が良子さん、孫が桃子ちゃん、苗字はわからないし、役職もなんの仕事をしているのかもしらないけど、お孫さんがこの会社におじいちゃんが勤めていると、ご自宅に行ったけど誰もおらず、電話番号が解るのはここだけだったから電話しているのだから、とりあえず早く桃子ちゃんのおじいちゃんに繋いでくれと、怒鳴り口調で言い放った。



 大体それだけのヒントで社長にたどり着くまでに三分も掛からなかった。

 電話口に出た社長にはこう言った。



 今さっき、幼稚園の裏道のところで桃子ちゃんとお母さんが白のハイエースに無理矢理乗せられて連れて行かれてしまった。中には男が二、三人乗っているように見えました。


 俺はピザの配達の途中で偶然その様子をみて、電話させてもらったと。

 桃子ちゃんのお宅には何度か配達させてもらっているし、桃子ちゃんのおじいちゃんが製薬会社に勤めていることも知っていたから。


 というのも、ただのピザの配達員なので名前は言えないが、去年その製薬会社の就職試験を受けて落ちたので、社長の名前ぐらい覚えていたと伝えた。


 ここまでをあっという間に、捲し立てた。



 社長さんから警察に連絡をしても、警察も話が見えないと思うので、この電話を切った後、自分が警察に連絡し、事実を見たまま伝えるので、後ほど警察から連絡が行くと思うのですが、いいかの確認をとり、警察に伝える為に携帯の番号を聞いた。



 自分の携帯の番号とピザ屋の電話番号を聞かれたが、携帯は金が無いため持っていない事を話、ピザ屋の電話番号は、桃子ちゃんの家の近所のピザ屋の電話番号の下一桁だけ違う数字を言い電話を切った。



 公衆電話の受話器を握っていないほうの手に持つ携帯で、良子さんの携帯をずっと非通知でリダイヤルしながら。

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