第25話エピソード・・24



 昔の様に俺は綿密な計画を考えた。



 今回のジョークは一人でやらなければいけない。そして誰にもわからず、四人が何も考えず幸せに暮らしていけるようにしてやらなければいけなかった。




 俺はまず昼間の現金輸送車を狙うことを考えた。


 かの有名な三億円事件の犯人が、未だに捕まっていないことを考えれば、俺に出来ないこともないと思ったんだ。



 まあ今さら出てきても時効になるだろうけど・・もしこれが成功すれば、その当時の犯人とダブらせる事が出来るかもしれない、その犯人の犯行と思わせ、捜査の手を逃れる事が出来るかも知れないなんて・・・



 多額の現金が手に入れば理恵も他の仲間も楽に人生を楽しんで生きていける。


 だけど、この案は直ぐに諦めた。一度事例がある以上、お札の番号を控えるのを完璧にしているはず、大量の札束を持っていても、使うたびに数字を気にしながらでは、只の紙っペらになってしまうからだ。札だけでは駄目だ。



 次に俺は、代議士を誘拐し、身代金を奪うことを考えた。でもこれも直ぐに駄目になった。一人でやるにはリスクが高すぎるし、時間が掛かりすぎる、これも結局は札束。もっと巧妙で短時間に人を騙すことが出来なければ・・。




 最初に俺はネットカフェに行った。


 最近流行のインターネットで俺は仲間を探すことから始めた。



 俺は自殺願望のある奴らの集まる掲示板に俺の存在を示し、一緒に自殺してくれる仲間探しをしたんだ。



 もちろん俺には自殺なんて考えはもうとうない。こんなに愛する人がいるのに自殺を考えるなんてとてもじゃないが出来ないし、なにぶん数ヶ月の余命しか持ち合わしていない。ただ、仲間が必要だった。もうじき死んでいく自分の為に、この世に存在意義を持たない仲間が。



 俺は個人的には自殺を考えている奴なんて認めていない。というよりも、自殺自体を認めていない。

 死にたければ、誰にも分からない様に死ねばいい、例えば猫のように。それを態々報告して死んでいく人間の虚しさが俺には理解できない。



 世の中には自分の思いもしない事が起こりえる事がある。それは神が決めたことでも、自分で決めたことでも無いのかも知れない。それでも、俺達は生きていかなきゃいけない。何度も何度も生まれ変わり成長し続けて行く自分の為に。



 それでも今の俺にはそんな奴らでさえも必要としなければいけない矛盾がある。


 今の世の中は本当になんでもインターネットで出来る、だって自殺をする仲間を見つけるのはそう難しいことでは無かったから。



 何度か掲示板で会話を交わして行く内に、チャットに移動し、合う機会に恵まれた。

 その女性と掲示板で出会って、本人と面と向かって会話をするまでには十二時間も掛からなかった。



 俺はその女性に、自分が癌であることを告白し、これから命が消えるまでひたすら苦しんで行くのが怖い、苦しむ前に死にたいと話した。



 その女性は、三十二歳の×一で両親も他界しており、結婚した相手からの暴力に耐えかね離婚。

 生涯、初めて付き合った男性の毎日の執拗な暴力、それが原因で精神的ダメージが蓄積し子供を授かる事もできない身体に。

 幸せな家庭を思い描いて生きてきた物が全て崩壊し、自分の生きていく道を見失った、結果自殺を考えたらしい。



 妙子はとても綺麗と言えるほどの顔はしていなかったが、繊細そうで知的に見えた。

 何故この女性が、と思わせるであろう容姿の持ち主だった。



 ただ俺にとってはそんなことどうでも良かったのだが、信用してもらう為に懸命にその女性の話を聞いた。



 五時間ほどファミレスで価値の無い会話をし、明日俺のお願いを聞いてもらえる約束を取り付け、そのあと千葉の山に入り車の中でこの世にお別れをすることを決めた。

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