第2話 エピソード‥1
最初のプラクティカルジョークは、俺達がクラス替えをしてまだクラスメートの名前をはっきりと覚えていない中学二年の春だった。
俺達はいつものように放課後に健の家に集まることにした。
さとしがバスケ部の先輩から借りた、お下がりのAVの観賞会をするために。
俺達は小学校からの連れ合いで、中学に上がってから俺とがんはサッカー部、健とさとしはバスケ部に入った。
特に俺達はボールの扱いが得意だった訳では無いけど、一人一つは必ず入らなきゃいけない学校のルールで仕方なく選んだ。
野球部や陸上部は一年の時は坊主が決まりって知っていたから、最初から選択肢には入らず、女子受けしなそうな、吹奏楽や剣道部よりちょっとだけモテそうな、球技を選んだ。健とさとしなんて最初、テニス部を選ぼうとしていたから、さすがにそれはがんと止めた。
ただ、4人ともスポーツ万能と言うにはだいぶ無理があったから、一年の時はそこそこ出席していた部活も、後輩が出来てからの放課後は、もっぱらゲーセン通いか四人で遊んでいることがほとんどだった。
一生懸命、部活動にいそしんでいる仲間達も、来なくなったことに違和感を感じていなかったし、声出し要員が多少減った程度にしか思っていなかっただろう。
健の家は片親で、母ちゃんと一つ違いの妹と3人暮らし。
母ちゃんは、昼間はヤクルトレディー、夕方からは近くのスーパーで品出しやレジのパートをしている。
無駄に高目に積まれた、薄汚いブロック塀に囲まれた、平屋の木造アパート。
隣には、もとヤクザだと自分で言い張る親父が、毎日昼間からワンカップを飲んだくれている。
隣との壁の厚さは、精々5cm程度。壁と言うより、せいぜい簡易間仕切り。
便所の中でこいた、親父の屁の音すら聴こえてくるほどのオンボロアパート。
トイレは和式の一段上がっているタイプ、数年前の工事で風呂場にもお湯が出るようになった。
和式が二部屋と、いかにも後付けの水場の作りのアパートは、以前高速道路を作るときに作られた、詰め所だったのではとの噂もあった。
その隣の親父は、ずっと右足を引きずり、不器用にびっこで歩いていたから、聞いてもいない勝手な想像で、あながち嘘では無いのかと思った俺達は、なるべく親父を怒らせないように、大騒ぎはしないようにしていた。
健と俺は昔一回だけ、アパートの向かいの家の引っ越しの時に、引っ越し屋のお兄さん達が、親父の家のアパートの塀に用を足しているのを見て怒鳴ってる姿を見た。
その時の剣幕は、まるで仁義なきを想像させるような雰囲気とはまるで別で、学園ドラマの先生が不良の生徒をなだめている時の雰囲気さながらだった。
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