第16話 復活の大鳳凰鳥リィンフェニックス
「くっ……シロウが降りる時間を稼ぐ……!」
とんがった岩のてっぺんで不思議な感触を楽しんでいたら、巨大な蛇みたいなやつが現れた。
大型トラックすら一口でいけそうな大きな口から多量に蒸気を漏らし、真っ直ぐにこちらに向かってくる。
「私が雷剣エレンディアと呼ばれるその力を見せてやろう……! 出でよ雷剣! 踊れ踊れ数多の剣よ……アルスサンダーシルト!!」
エレンディアさんの周囲に魔力で作られた無数の剣が発生、ふわっと浮き上がり雷を纏う。
力ある言葉に呼応した数百本はあろうかという剣が巨大蛇に突き刺さる。
す、すげぇ……これがエレンディアさんの雷剣召喚!
「ゴアアアアアアア!!」
次々と雷を纏った剣が巨大蛇に刺さるが、蛇はビクともせず進路を維持。
げぇっ……効いていないのか……? 剣がかなり深く刺さって、追加で内部からの雷放電だぞ……それが数百本連続、普通のモンスターなら即死クラスだろ。
巨大蛇は傷口から蒸気をもうもうと吹き出しつつ、真っ直ぐにこちら、俺のほうへ向かってくる。
「うげっ、俺が狙われてんのか……逃げろネイシア! 巻き添え食うぞ!」
「で、でもシロウが……!」
眼下にいるネイシアに逃げるよう言うが、俺の身を案じてなのか動こうとしない。
くそ、人が良すぎんだろお姫様……!
「ピピー!」
頭に乗っていたピヨすけが、俺が手を突っ込んでいる空間の歪みに反応。
ロクトソウル……当たりか?
歪みの中の『何か』をこねればこねるほど、ピヨすけが反応してくる。
「シロウ! 早く降りて下さい! モンスターが……!」
ネイシアが悲痛の叫び声。
くそ、もうすぐ、もうすぐなんだ……今これを放してしまうと、全て霧散してしまうような気がするんだ……。
「ゴアアアアアアアア!!」
そして俺の作っている『何か』に巨大蛇も大きく反応している。
なんだ、あいつもこれを求めているのか?
誰がお前なんかに渡すかよ……これは俺の大事なピヨすけの為の物で、俺がピヨすけに食べさせてやるんだ……!
「シロウ!!!」
巨大蛇がその大きな口をガバっと開き、岩の頂上にいる俺と歪みを喰らおうとしてきた。
「俺はピヨすけにずっと助けられてきた……どんなに怪我をしようが、ひどい扱いを受け心に傷を負おうがピヨすけさえいてくれれば俺は平気だった」
俺は『歪み』の中で『何か』を形と成す。
「でも俺は助けてくれたピヨすけに何も返せなかった……お金も無く、ずっと葉っぱばかりの生活……ピヨすけに良い物を食べさせたい……ずっと、俺はずっとそう思っていたんだ……!」
歪みから形を成した『物』を取り出しピヨすけの前に差し出す。
「これが俺の恩返し、ピヨすけへの俺の想いだ! 名付けて『丁寧に揉んで食べやすい固さにして綺麗に盛り付けたロクトソウル百パーセントケーキ!!』さぁどうぞ!」
俺が丁寧に揉んで、シンプルだけどとても美味しいイチゴのショートケーキ風に作り上げた……んだけど、そういやヒヨコってケーキ食うの?
なんかお礼に渡す高価な物って、俺の中でケーキなんだけど……それって日本にいた俺だけの思考?
「ゴアアアアア!!!」
巨大蛇が俺を飲み込もうとしてくる。なんとか体をひねるが右手がその大口に飲み込まれる。
「うあああああああ……!」
岩から剥がされ振り回され、俺の体は宙を舞う。
落ちてくる俺を一飲みにしようと、巨大蛇が口を大きく開く。
ま、まずい……空中じゃ逃げようが無い……ピ、ピヨすけ……
「シロウ!!」
「くそ、アルスサンダーシルトッ!!!」
ネイシアが叫び、エレンディアさんが次々と雷剣を巨大蛇に突き刺していく。
だが蛇は体制を崩すことなく俺を……
「────私のシロウを……私のシロウをいじめるなぁ!!」
とんがった岩の頂点から炎が噴き上がり、それが一気に翼のように広がる。
炎を吹き出した人物、年の頃なら小学生ぐらいの女の子が炎の翼を使いふわっと飛び上がり俺を空中でキャッチ。
「蒸気モンスター風情が……許さない! そんなに食いたきゃこれでも食らってろ……!!」
女の子が真下にいる巨大蛇の口に向かって手をかざし、巨大な火炎弾を打ち込む。
「──ゴアアア…………!」
まともにくらった巨大蛇が炎に焼かれ断末魔を上げる。
その巨体からものすごい蒸気を噴き出し、まるで霧散するように蛇が消え去っていった。
すごい……エレンディアさんの雷剣ですら動じなかった蛇を一撃……
つか何……俺知らない女の子に空中でお姫様抱っこされてっけど……この子誰?
助けてくれたのは嬉しいけども。
「あ、ピヨすけ、俺のピヨすけはどこに……!」
そういやピヨすけの姿が見当たらない。
まさか巻き添え食って……
「呼んだかシロウ! やっと、やっとシロウとお話が出来るようになった!」
焦って岩のあたりを見ていると、女の子が元気に返事をする。
いや、あなたじゃなくて、俺の可愛いヒヨコ、ピヨすけが……
「どうしたシロウ、私だ、ずっと一緒だっただろう。さっきのケーキ、とっても美味しかったぞ!」
ケーキ? 確かにさっき俺はピヨすけにケーキ風の魔力の塊を与えたが……
「……もしかして……ピヨすけ……?」
「そうだ! シロウの大きな愛を受け取り私はこの体を取り戻した。この姿の名は神獣と呼ばれる者の頂点に立つ存在、『輪廻と再生の大鳳凰鳥』リィンフェニックスなのだ!」
女の子が元気に笑い、そう名乗る。
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