第14話 図書館の地下倉庫


「どうでしょうシロウ、何か分かりましたか?」


「い、いえ……さっぱり……」



 リブレリア中央図書館にて『ロクトソウル』なる物の情報探し。



 今俺たちがいるのは図書館の館内地図には載っていない、地下。


 ここはいわゆる倉庫らしく、未分類の書物や公開出来ないような本が収められているそう。


 ネイシアの特権を使い国の規制がかけられている本を漁っているが、どれもこれも挿絵の一個も無いような物ばかり。


 シングルベッドぐらいの大きさのテーブルに山と積まれた本……これ全部読まないとならんのか?


 い、いや俺のピヨすけの命を救うためだ、頑張らないと……つか検索システムとかないの? 


 普通あんだろ、ああ、ここ異世界だった……。



「これはすごい……一般には公開されていない本の山ではないか! ああああ全部読みたい……な、なぁシロウ、一ヶ月ほどここに滞在するってのはどうかな。これほどの未公開資料、ぜひとも全てに目を通して知識の糧に……」


 青い顔の俺とは対象的に、エレンディアさんが満面笑顔。


 そういやこの人、召喚の歴史とか研究しているんだっけ。


「あまり時間はかけたくないですが……この蔵書の数を見ると、本当にそれぐらいかかりそうですね……」


「頑張りましょうシロウ! 私、速読は得意ですから!」


 俺がうなだれながら応えると、俺の横にネイシアが座り、本を手に取り読み始める。


「は、はい! ぼ、僕の用事に付き合っていただきありがとうございます! 必ずやネイシア様のご期待にお応え出来るように頑張る所存でありま……」


「……なんですかそれ、シロウ。僕だのネイシア様だの」


 俺が精一杯の王族様への応対をすると、ネイシアがジト目で睨んでくる。


 え、いや、だってネイシアってこの国のお姫様なんでしょ。


「シロウはパーティーを結成するときに言いましたよね、それぞれの抱える身分や職業は考えず、と。それはパーティーの誰かを特別扱いしない、皆平等の仲間、ということではなかったのですか?」


「あ、う、うん……確かに言ったけど……」


 そういや場を収めるために言ったような。


「私はシロウのその考えに賛同しパーティーに入ったのです。皆平等、これがシロウのパーティーなのでしょう? リーダーであるシロウがそれを破るのですか?」



「……わ、分かった。ネイシア、エレンディアさん、手分けして情報を集めよう!」


 俺は息を吐き、改めて二人に協力をお願いする。パーティーの仲間として。


「ふふ、それでいいのですシロウ。これはシロウのパーティーなのですから!」


「私の『さん』付けもなくてもいいのだが……まぁ年上のお姉さんポジションは利用価値がありそうだしいいだろう」


 ネイシアとエレンディアさんが応えてくれ、三人で本を漁り始める。





「──キリがねぇ……」


 二時間後……真っ先に俺がギブアップ。



 しゃあねぇだろ、俺勉強苦手なんだし……漫画で分かるロクトソウル、の本とかねぇの?


「基本、物語と想像の詰め合わせですね……」


「読み物としては面白いのだが、資料としては価値が無い物がほとんどだな……」


 さすがに二人も意気消沈気味。



「……ん、この本の表紙、どこかで見たことあるような……」


 山と積まれた本の一冊、赤い装丁の表紙に描かれた絵に俺は目が止まる。


 描かれているのは森の絵。


 別になんてことのない、どこにでもありそうな森の簡易的な絵なのだが、木の高さより大きなとんがった岩が見える。


 いや、俺先月ここの異世界に来たばかりだし、最初に降り立った街から出るのすら今回が初めてな状況なんだぞ。


 それなのに見覚えのある場所なんてあるわけがない。


 でもなんかこの岩……妙に脳を刺激する。



「ほう、森の中にあるとんがった岩か。候補はいくつかあるが……行ってみるか?」


 エレンディアさんが俺の見ている本を取り、自身の記憶の中と照らし合わせるような仕草をする。


「……はい、何か惹きつけられるというか……」


「行きましょうシロウ。結果を求めるのなら、行動あるのみです!」


 ネイシアが笑顔で俺の肩を掴む。



 何か引っかかる、ぐらいの動機としてはかなり薄い情報だが、行動しない限り答えは出ない。ネイシアの言う通りだ。


「よし、行こうみんな!」










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