第9話 騎士
守護竜と遭遇した地点からまた1kmほど歩いた時、いきなりそれは現れた。
分厚い防壁に囲まれた街があったのだ。
「うわぁ〜……!」
さっきまでの疲れはどこに行ったのか、アテネは瞳を大きく見開き、少し早歩きになっている。
守護竜に守られているか大きく開かれた門の先には、魔法都市マリークに負けず劣らず発展した街並みが広がっていた。
そして人━━騎士服をきた人以外はドラゴンが人の形態になっているのだろう━━が大勢道を行き交っている。
「とりあえず宿に向かい━━」
「おいおい! 魔法国の連中がここに何しに来たぁ?」
酒を飲んでいるのか、少々呂律の回っていない剣聖国の騎士が話しかけてきた。
「おやおや……規律に厳しい剣聖国にもあなたのようなお方がいらっしゃるのですね。」
「なんだぁ? バカにしてんのかぁ?」
「いえいえ、バカにしているわけではありませんよ。あなたの言うこともごもっとも。なにせ我が魔法大国テリアスは、いまだにこの国と友好関係にないのですからね。」
クロムウェル先生が対応する中、周囲には多くの人が集まってきた。
━━少なくとも、この騎士さんはクビだろうな……。
「ちゃんと立場分かってんのか? 俺達は友好で、お前らは中立。つまりいまここでお前らに宣戦布告して殺すことなんぞ」
「あなた、剣聖国の騎士ではありませんね?」
クロムウェル先生が指摘した瞬間、騎士は少したじろいた。
剣聖国でもなく、魔法国にはない騎士。つまりこの騎士は━━
「……そうですね。私が駆除したらただのいじめになってしまうでしょう。」
「な、なんだとぉ? 舐めてもらっちゃぁ困るぜぇ! なんせおれは剣聖国の騎━━」
「こちらこそ舐めてもらっては困りますよ?」
その言葉と共に、周囲に強烈な覇気が出される。あまりの威圧さに、周囲のドラゴン? や騎士たちもたじろく。
「━━とまぁ、私が相手ならイジメになってしまうでしょうね。テリヤ君、できるかい?」
「え……!? ぼ、僕ですか!?」
直接的に「倒せ」とは言われなかったが、そういうことなのだろう。
「一撃入れるだけでいいですよ。」
「わ、分かりました……」
鞘からクロムウェル先生から貰った剣を抜き、酔った騎士に向かう。
「おいおいおい! ただの子供じゃねぇかぁ?」
そうは言いつつ、騎士は剣を抜く。
武器は両手剣で煌びやかな光沢を帯びており、業物であることが見て取れる。対してこちらはクロムウェル先生から貰った片手剣━━重くて扱いずらいから両手持ちだが━━。加えて僕は実戦が初めてなのはおろか、人と剣を交えたことがない。
「…………」
無意識にも手が震えてしまう。
はたして勝てるのだろうか……いや、そもそも生きる事はできるのだろうか……。
━━大丈夫、君は強いよ。僕なんか比較にならないくらいに。
ふと、誰かに声をかけられた気がした。だが少し、気持ちが落ち着く。
僕は強い。これまで剣聖霊のフレイクに指導してもらったじゃないか。
気持ちを新たにし、僕は腰の剣を抜く。
「━━━━よろしくお願いします……!」
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