第8話 リリンテイル

「我々は魔法大国、テリアスからの者です。聖地には近づきませんので、どうか街に入らしてもらえないでしょうか。」

 クロムウェル先生は、自身の数倍の高さのドラゴンに臆することなく話しかける。

「━━ドラゴンは」

「魔女、リリンテイル様に従い」

「その墓を」

「復活の時まで」

「護り続け」

謎の会話を続けていると、ドラゴンがどんどん小さく人型になり、歩み寄る。

「リリンテイル様には」

「絶対の忠誠を誓う」

「「マガ・サピエント」」

今やクロムウェル先生の方が頭1つ分高くなり、少し見下ろす形になっている。

ドラゴンは考え込むように瞳を閉じる。

「……テリヤ、あれは何?」

横からアテネが不安そうに言う。

「え? あ、あぁ。あれはこの辺りを守ってるドラゴンだよ」

「どうして人になれてるの?」

「えっと……なんだっけ……」

つい最近読んだこの土地に関する本の内容を思い出す。

たしか元々ドラゴンの形態しかなかったけれど、人が来るようになってから人の形態を持つようになったとかなんとか……。

「…………うむ、魔法大国テリアスの者だな。通っていぞ。だが、この地を荒らそうとするのなら、魂さえも消えてなくなる事を覚悟せよ……!」

「ええ、勿論ですとも。そもそも、あなた方に危害を加える輩はいませんでしょう。」

「…………一部を除き……な。」

鋭い目でドラゴンはクロムウェル先生を見る。

古くからドラゴン種は最強の神獣とされており、今こそ人間との交流があるものの、600年前に剣聖国との交流から始まり、伝説上1000年前にはテリアスとの交流が始まったとされているが、公式にはテリアスとの交流が始まったのはつい100年前だ。

剣聖国とは同盟を結び連合軍も作ってるが、テリアスとは未だ友好関係。まだ互いに心の底から信頼できないのだろう。

ちなみに剣聖国と大竜連邦の連合軍は、剣聖国の騎士が大竜連邦のドラゴンに契約し、そのドラゴンに騎士が跨り戦う竜騎士の集団である。無茶苦茶強いらしい。

つまり、この国を敵に回すなら剣聖国とも敵対することになる。無敗の剣聖国と神獣であるドラゴンの集団、絶対に勝てるはずが無い。一応テリアスも列強の一角ではあるものの、この二国に敵対するわけが無いし理由がない。そもそも剣聖国とは同盟を結んでいる。

だが、魔神国は違う。かの国は剣聖国にも引けを取らない強大な軍事力を持っている。なにせ数が多い。僕が戦った時、どれだけ殺しても殺しても湧いて出てくる。だから一騎当千とも言われるドラゴンでもずっと戦い続ければ消耗し、いずれ力尽きてしまう。

「とりあえず街に入りましょう。よろしいですね?」

「よいとも。入るならさっさと入れ。」

知らない魔法陣が出現し、人型になっていたドラゴンは巨大化し、名実ともにドラゴンの姿になり、飛び去っていった。

「さぁ、行きましょうか」

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