第2話 お外には行かせない

ということで翌日、一応寮の先生には報告し、大商店街に来た。

大商店街は百メートル程のの中央ロードから幾つか枝分かれした道があり、さらに中央ロードには2階や渡り橋もある、天井ガラス張りの世界有数の商店街らしい。並ぶ店には、衣服や生活用品や魔法具などはもちろん、雑貨や食べ物屋、さらに遥か遠くの地域から取り寄せたものや図書館などもあり、本当に大規模な商店街だ。こんな場所は、同盟国であり、諸国から最強と謳われる剣聖の集う国、剣聖国家 シュテルグレーケの王都にも匹敵するかもしれない。

というわけで大商店に来たのだが、やっぱり人が多いい。

「やっぱり見渡す限り人、人、人だなぁ~」

僕がそう呟くと、

「そりゃぁ王都の中央商店街だもの。これだけいたらテリヤ君みたいな精霊術士ぐらい居そうだね~」

とアテネの声が聞こえる━━━━ん? ……聞こえるってことはつまり……。

バッと後ろを振り返ると、アテネが不気味な笑みを浮かべていた。

「「あ、アテネさん……!?」」

アテネは笑みを浮かべたまま、無言で近ずいてくる。そして目の前に立つと、

「さぁ~。帰ろうね~」

と言う。

あからさまに発せられる殺気に押され、僕とフレイクは「はい……」と答え、アテネさんに連れられ寮に戻った。


「はいっ。とりあえずお買い物しようって言い出したのは、どっち~?」

アテネの部屋に連れてこられた僕とフレイクの2人に向けて、腕を組んで質問される。

アテネは低身長━━いうて僕もだけど……。そして可愛らしい丸顔。鮮やかな白髪で、いつもおっとりしている。

「フレイクという精霊であります。」

そう言うとフレイクは潔く手を挙げる。

「ボクが誘いましたー」

「なんでお買い物行ったの~?」

「なんか珍しいものみたいなぁーと」

「えへへ」となぜか照れるように頭を搔くフレイクに「うむっ」と言うと、

「フレイク様はいいとしてテルヤ、お外は危険だっていってるでしょ? それなのになんで出ようとするの?」

「……大丈夫だって。この王都だし、こんなところで攻撃なんか━━」

「あの時、同じこと言って死にそうになった」

「…………」

「あの時テルヤは村から近いから大丈夫って言った……! でもフレイク様がいなかったら皆死んでた……! ……だからお外はだめ」

「…………」

アテネは昔からこうだったわけじゃない。

王都に来る前、まだ故郷の村にいた時は毎日森で一緒に遊んだ。それこそ運動神経なら僕よりも上だった。魔法学院に入学してからも休日にはよく王都を見学したり、今日行こうとしてた大商店街にも行ったりした。だが、やはりあの時襲われた事がきっかけで絶対に外に出ることがなくなった。

重苦しい空気の中、アテネが口を開いた。

「ふぅ……。なら条件を達成したらいいってことにしよ」

そう言うと右手の人差し指を挙げる。

「一つ、テリヤがそれぞれ8属性の最上位魔法が使えるようになること」

「えっ……!?」

最上位魔法。これは名の通り魔法の中でもっとも難しい魔法かつもっとも威力がある魔法を指す。

アテネは続けて人差し指に加え、中指を挙げる。

「二つ、雷属性魔法が使えること」

「かっ……!?」

雷属性。これは名の通り雷の魔法なのだが、そもそも使える人と使えない人があり、僕が8歳の時でも使えなかった。たが文句を言おうと口を開こうとしたが、アテネに睨まれたため口を塞ぐ。

「三つ、雷属性を含めた9属性魔法を使いながらフレイク様とうまく連携をとることができること」

「……」

絶句する僕に向けて、アテネは「最後に」と言って小指を加えて挙げる。

「魔力が尽きても使える魔法を使えるようになること。この四つの条件を達成したらお外に行くこと許してあげる。わかったら自分の部屋に戻って勉強してきなさい」

「…………ハイ……」

その後、部屋を出てふわふわと横に浮いているフレイクに向けて、四つめの条件、魔力がなくても使える魔法は存在するのかと聞くと、フレイクは「うーん」としばらく考えたあと、「残念だけど知らないぜ」と、魔法に精通しているはずの精霊に苦笑されながら言われた僕は、ただ笑って返すしかなかった。

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