第2話
天気の良い日だった。
「パール、今日はどこかへ行くの?」
「ええ、お母様。森までお散歩に。お昼は森で頂きます」
「そうですか? 気をつけて下さいね」
パールは、アンディと会った森に出かけていった。
「今日はアンディ様、いらっしゃるかしら」
パールは木陰で小説を読みながら、アンディが現れるのを待っていた。
しばらくして、うたた寝していると声をかけられた。
「パール様、こんなところで寝ていては危ないですよ」
「あら、アンディ様。いらっしゃったんですね」
パールはにっこりと笑って、持ってきたバスケットを開いた。
「お腹が空いていませんか? よろしかったら一緒に頂きませんこと?」
「これは美味しそうなサンドイッチですね」
アンディはパールの横に座った。
「それでは、お召し上がり下さい」
パールは開いたバスケットを二人の間において、サンドイッチを一つ取り出した。
「質素ですが、味は保証致しますわ」
「チーズとハムのサンドイッチと、キューカンパーサンドですか。どちらも好物です」
アンディはキューカンパーサンドに手を伸ばした。
「いただきます」
「お召し上がり下さい」
「美味しいです」
「それは良かったです」
アンディはパールに尋ねた。
「何故、二人分のサンドイッチをお持ちになられたのですか?」
「アンディ様はお腹を空かせているのではないかと思いまして」
パールは言った。
「王子様の名前を名乗るなんて、なにか事情がおありなのでしょう? アンディ様」
「……あはは」
アンディは声を出して笑った。
「どうしてそう思ったのですか?」
「私、物語を作るのが趣味ですの。あまり裕福な貴族ではありませんが、本だけは沢山家にございますわ」
「そうですか。それで私はどのような者だとお考えなのですか?」
アンディは楽しそうに聞いてきた。
「身なりの良さから名の知れた貴族の方だと思いました。ですが、こんな時間に館を抜け出すのですから、忙しいお仕事の休憩ではないかと思っております」
アンディはにっこりと笑って言った。
「ほぼ正解です」
「うふふ」
パールも嬉しそうに微笑んだ。
「パール様はどのような物語をお書きになるのですか?」
「色々と。お姫様や王子様の恋物語も書きますし、意地悪な魔女のお話も書きます」
「そうなんですか」
「ええ、物語の中では自由ですもの」
「自由……いいですね」
アンディは少し切なそうな表情になった。
「また、お会いできますか? パール様とのお話は楽しいです」
「ええ、喜んで。今度は私の屋敷にお招き致しましょうか?」
「ランド家ですね。うまく執事の隙を突いて抜け出せれば良いのですが」
それを聞いてパールは首を振った。
「お仕事は大事です。それでしたら、お時間がある時に、また森でお会いしましょう」
「仕事は大切ですか?」
アンディが尋ねるとパールは頷いた。
「この国は税金が高めですから、稼ぐことも大切です」
「税金は高いですか?」
アンディが難しい顔で聞いてきた。
「福祉と教育に力を入れている国ですから、文句はありませんけれども」
パールはにっこりと笑顔で答えた。
「さあ、そろそろサンドイッチもなくなりましたし、休憩の時間は終わりに致しましょう」
「そうですか、もう少しお話を伺いたかったです」
「またお会い致しましょう」
パールは名残惜しそうなアンディを森に残し、一人家に帰っていった。
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