森を散歩してたら落ちていたのは王子様でした

茜カナコ

第1話

 パール・ランド嬢が散歩していると、青年が木の根元に寝転がっていた。

「もしもし、こんなところで寝ていたら、風邪を引きますよ」

 パールが声を掛けると、青年は目を覚ました。

「私としたことが」


 青年が立ち上がった。背は思ったよりも高く、パールは青年を見上げる形になった。

「あまりに風が心地よくて、一休みしていたら眠りに落ちていたようです」

「そうですわね。今日は風が心地よいですわね」


「あなたもお散歩ですか?」

 青年の整った顔が、くしゃっと笑顔になった。

 パールは自分の胸が高鳴るのを感じた。


「ええ、町の様子を視察した後の散歩です」

 青年の声は、澄んでいて耳に心地よかった。

「私の名前はパール・ランドと申します」


「申し遅れました。私はアンディ・メイラーです」

「あら、王子様と同じお名前?」

 パールが微笑むと、青年も微笑んだ。


「そうですね」

「奇遇ですこと」

「この国は戦争もなく平和ですから、王も民に慕われておりますわね」

「そうですか」

 青年は遠い目をした。


「アンディ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、パール様」

「治安が良いとはいえ、そのような豪華な身なりで居眠りをしていると人さらいにあいますわよ」

「あはは、そうですね、気をつけます」


 青年はおかしそうに笑った。

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