第9話

「えっと、冒険者登録、ですか?」

「はい、お願い出来ますか?」


あの襲撃から数日後…。私はフォナドと共にアイナの街に来ていた。そして、目の前にいるクリクリお目目の受付嬢は、ギルド支部管理者のミーシャである。


「わあ…!すっごく助かります!なんせ人手不足が深刻で…。あ、所で、職種は何になさいますかあ?」


キラキラと目を輝かせたミーシャは、テキパキと書類を用意する。確かここに来るまでの道すがらフォナドに教わった話だと、ひとえに冒険者と言っても事務職と戦闘職の二種類に大別されるらしい。


(事務職なのに冒険者なんだって最初は思ったけど…。まあ、ツッコまない方が賢明、よね。)


事務職には、街で冒険者に薬を売る薬師や、装備に様々な効果を付与して強化する技師などがある。ギルド登録している彼らは、一般の同じ職業家と違い、無償で冒険者に技術を提供しなければならない代わりに、組織から手厚い給付や支援を受けられる。

しかし、今回私がなるのは事務職ではない為、一旦それらの知識を思考の外に追いやった。


「戦闘職の、魔術師でお願いします。」

「はい、魔術師ですね!……え?」

「え?」


元気よく返答したのもつかの間、ミーシャの顔に驚愕の色がくっきりと浮かび上がる。


「ま、魔術師!?そんな、うちにとって超貴重な人材じゃないですかあ!」

「そ、そうなんですか…?」

「ああ、言ってなかったね。実はこの支部には二十名程の冒険者がいるんだが…。うち戦闘職は十五名、その中魔術師は一人しかいないんだ。」


そんなに希少なの!?と、私は驚きを隠せない。いやまあ確かに、リコール村の皆もミーシャと似たような反応だったが。そう考えながら、私は数日前の村長とのやり取りを思い出す。


「シノン、お前の力は必ず人の役に立つ。あんたさえ良ければ、冒険者になるのはどうかねぇ?」

「ちょ、村長!シノンは記憶喪失なんですよ?流石に危険すぎます!」

「だが、それでも魔法を行使した。私らはこいつに助けられたんだ。それは分かるだろ、フォナド?」


ぐっと言葉に詰まった様子の彼と目が合う。そこには確かな思いやりの心が垣間見えた。どうやらフォナドは本気で私を心配しているらしい。


「…わかりました。冒険者になれば、情報も入ってきやすいですよね?魔物の同行も気になりますし、私で良ければ力になりたいです。」

「シノン…。はぁ…分かった。でも条件がある。」

「条件?」

「ああ、それは…。」


と、そこまで回想に耽った所で意識を現実に引き戻す。


「そ、それで冒険者にはランクがあると聞きました。どうやって決めるんですか?」

「ああ、それはですねぇ…戦闘職なら、純粋な戦闘力で判断されます。魔術師の場合、魔力量や魔法の威力ですね。地下にそれ用の施設を設けているので、ついてきてください!」

「わかりました。」


頷いて、受付カウンターから出た彼女の背中を追う。付き添いとしてフォナドも一緒だ。

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