第5話 初めてのダンジョン探索と、ルクスの実力?②
時刻は昼まであと数刻程。メイザニア名物でもあるダンジョン入り口には、未だに多数の冒険者の姿がある。その中に一際小柄な少年ルクスが混ざっていた。
昨日聞きそびれていた話を聞くため冒険者ギルドに顔を出したルクスは、また一騒動起こしつつも目的を達成し、とうとうダンジョンまでやってきたのである。
要不要に関わらず、ダンジョン探索に於いて重要なことはいくつもある。もちろんルクスは旅に出る前、コロネ村での修行中に師匠からおおよその話は聞いていたわけだが、改めて確認したというわけだ。
まず一つ目はパーティーについて。
基本的にダンジョン探索にソロで挑む冒険者は少ない。存在しないわけではないが、その殆どが上層と呼ばれる階層の内の更に上部、ほんの数層を縄張りとして活動していて、それ以下の階層に潜ることはない。単純に力不足であったり、好みの問題であったり理由は様々あるが、一番の理由は手数不足である。
上層でも10階層を過ぎると、出現する魔物の数が増える。それまでは1対1~3で済んでいた戦闘が、11階層に踏み入れた直後から1対6を超えて魔物が殺到するようになるのだ。
そうなるとそれなりに戦闘のできる者程度では、一瞬で命を散らすことになる。なので冒険者達はパーティーを組み、対応できる魔物の数を増やしたり、一人だけではできないことを仲間に担ってもらったりするわけだ。
そして二つ目はギルドカードについて。
このカードには色々と便利な機能が備わっている。今朝方ルクスが確認したステータス表示もその一つである。
その他、ダンジョン探索に便利な機能として“討伐した魔物の数や種類の記録”や“到達階層の記録”など。
討伐モンスターの記録と納品された魔石の数を相互に確認することで不正をし難くしたり、到達階層などはランクアップに直接関わるので、こちらも重要な記録となる。
説明を聞けば聞くほど便利な代物だな程度にルクスは感じたのだが、これは大昔にダンジョンから発見された遺物であり、原理が不明なまま便利であるからとそのまま利用されているという、なんとも言えない謎便利グッズなのであった。
最後に冒険者のランクシステムについて。
これは基本的にダンジョンの到達階層によって決められている。
1~5 Fランク
6~10 Eランク
11~15 Dランク
16~30 Cランク
31~50 Bランク
51~70 Aランク
71~100 Sランク
と、このようになっている。これは、パーティー単位でのランクとなっており、個人でのランクもあるにはあるが、勘案される要素が複雑で、個人でランクを付けられるような者はほんの一握りしかいない。
ダンジョン内には階層を隔てる扉が存在していて、そこを通過した時にギルドカードへ自動的に記録される為、到達階数を更新した探索後にはギルドで申請し、ランクアップ手続きを経なければならないのだが、実際には魔石の買い取りにもギルドカードを提出する為、ほとんどの冒険者が態々ランクアップ申請をしていなかったりするのが現状である。
と、重要なことと言えば大体この辺りであろうか。
他にもステータスのおおまかな数値であったり、細々と新しい情報もあったのだが、今回は割愛する。
ダンジョンへと進む冒険者の列に並んでいたルクスも、ようやく入り口が見えてきた辺りで、改めて自分の装備を確認し、初めての探索に備える。
今日は本格的な探索ではなく、ダンジョン内での戦闘や探索に体を慣らすためと割り切っているので緊張は少ないが、全くしていないというわけでもないようだ。指先は若干震えているようだし、心なしか呼吸も早い。
ルクスの前に並んでいた冒険者パーティーが入場受付を済ませ、ルクスの番になる。自分のギルドカードを守衛に渡し、簡単なチェックを済ませればいよいよ初探索となる。
(よし。今日は肩慣らしだ。気負わず楽にいこう……)
ダンジョンの入り口には大きな門が口を開いて鎮座している。先は暗くて良く見えないが、ひんやりとした空気が漂ってきて思わずぶるりと背筋を震わせる。
とうとう夢の一歩を踏み出す時が来た――
どれだけ落ち着こうとしてもそれはどうやら無駄な努力となってしまっているようだ。
ただその瞳の中に輝く炎だけは、一切の陰りを見せなかった。
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