第8話

目が覚めた。ここはどこだ。俺は撃たれたんじゃ…。

「咲良、そのまま聞いて」知らない女性の声がした。なぜ俺の名前を知っているのだろうか。

「ここはどこだ?あんたは誰?」彼女に聞いてみる。

「ここは、現世とは隔離された別の空間。そして私はあなたの味方よ。それはいいのよ、時間がないから、手短に済ませるわね。」

「俺の味方って…」

「良い?咲良、あなたは今大事な人を守って男に撃たれた。けれど、まだあなたは助かるの。」

「助かるったって、どうやって…」

「少し目を閉じていて。」

言われた通りにすると、柔らかい感触が俺の体をつつんだ。どうやら抱き締められたようだ。

「な、何をっ!」しかし女性は離そうとしない。「いいから、目の前の感覚に集中して」

集中しろって…。まあいいや、集中か…。

程なくして、俺の体に暖かなものが流れ込んでくる。

しばらくして、女性が俺の体を離した。「もう目を開けていいわ」

そうして見えたものは、とても言葉では言い表すことのできないほど、素晴らしい眺めだった。

「あなたには今、世界の理が見えているはずよ」

「これが、世界…」

「そうよ、世界を構成するあらゆる物が、いま、あなたのもとに入ったわ」

「何だよそれ!どこの神だよ!」

「一旦落ち着いて。世界の全てを背負うなんて、あなたには荷が重いはずよ。だから、あなたには、物質の理だけ渡しておくわ」

「え、ちょっとさっきからあんたが何言ってるかわからないんだが」

「聞いて。この世界は、物質ものときいのちで構成されているの。そのうちの物質ものをあなたは自由に構成できるようになったの。」

「つまり?」

「そうね、こう言うと分かりやすいかしら」女性は続けた。「自分であらゆる物質を生成する能力をあなたは手に入れた」

「え、かっこいい」

「けれど、2つ条件があるの。1つ。この力について、あまり人に他言しないこと。必要な人だけに伝えるようにして。2つ。人に直接被害が及ぶような使い方だけはしないで。まあ、これはあなたなら問題はないはずよ」

「これで、玲を救えるのか…?」

「もちろんよ。これからは、その力であの子を守ってあげて。これは、私との約束。」

「わかった。誰だかわからないが、約束する。ありがとう。」

待っててくれ玲、今助ける!

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